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2005511

つながりの良かった今年のゴールデン・ウイーク、いかがお過ごしでしたでしょうか。
たくさんの方がサンフランシスコ・ベイエリアにお越しになり、ワインカントリーでも、いつもの数倍、日本人訪問客の方々を
お見かけしました。

今週は、新聞連載「好きが高じてワイン造り」6回目の紹介です。
過去の記事コピーは、こちら。Vol.1Vol.2 , Vol.3, Vol.4. Vol.5

                 

   一次発酵がひと段落すると、次に考えなければならないのが、二次発酵をさせるかどうかです。     画像をクリックして、ご覧下さい。
この二次発酵は、「マロラクティック(乳酸)発酵」と呼ばれるもので、バクテリアによる作用で、
リンゴ酸を乳酸に変えるものです。カリフォルニア・ワインの赤は、大半がこのマロラクティック発酵を
させますが、白はさせたりさせなかったり、造り手によってまちまちです。            
乳酸発酵をさせると、酸度が抑えられ、バターっぽいクリーミーな風味が出て滑らかな口当たりと
なるとされています。                                               (写真@)
乳酸発酵を促すバクテリアは、ぶどうの皮に付いていたり、樽やセラーの壁にも付いており、
ワイナリー内の温度が高めだと、より一層活発になります。クラッシュ・パッドでは、早めに乳酸発酵を
させたいものは、華氏70〜72度(摂氏21〜23度)の部屋に樽を移動させ、その他のものは、           
華氏55〜60度(摂氏13〜16度)で自然な乳酸発酵を起こさせています。        
                                                           (写真A)
   3月8日、まだ乳酸発酵が起きていないという報告を受け、クラッシュ・パッドへ。        
私のワインと同じ畑、同じ品種、同じ収穫日でありながら、既に二次発酵が進んでいるもの、
二次発酵が発生していながら更なるバクテリアの活動を抑制すべく亜硫酸(サルファー)を
加えたもの、などを順に試飲。親ばかと言われるでしょうが、私は、まだ二次発酵が
起きていない自分のシャルドネが一番おいしいと感じました。
マイ・シャルドネを造るにあたり、もっとも大事にしたかった「みずみずしい酸味」が、          (写真B)
乳酸発酵によって抑えられてしまうのだとしたら、そして、私が苦手とするバターイッシュな風味が、
二次発酵によって加わってしまうとしたら、とてももったいないことだと思いました。
収穫され運び込まれた葡萄を味わった時からずっと、どうしようか迷っていた二次発酵。
この3月8日の樽試飲で、ようやく決心がつきました。
「マロラクティック発酵は起こさせない!」                                   (写真C)
そしてその日から、私の樽には、「NO ML」というシールが貼られたのでした。
ML=マロラクティック発酵)                                           (写真D)


新聞には白黒写真しか載せられないので、記事では写真@と、別のあたりさわりのない写真しか
使いませんでした。

写真@ マロラクティック発酵が進んでいるかどうかは、まず、この極小のスポイトで、
     樽の中のジュースを吸い取ることから始まります。吸い取ったワインを専用ペーパーに落とします。

写真A その紙を円筒型にし、クロマトグラフィー用液体に浸します。

写真B そうすると、用紙の上で発酵具合が色になって出てきます。
     一列目(一番下)に色が出ているのは、Tartaric Acid(酒石酸)を含んでいる証拠で、
     これは、もともと葡萄に含まれているものですので、全部に出ます。
     二列目に色が出ているのは、Malic Acid(リンゴ酸)を含んでいる証拠。
     三列目に色が出ていると、Lactic Acid(乳酸)が出ている証拠。

     つまり、マロラクティック発酵が起きていない段階では、二列目まで色が出て、マロラクティック発酵が起きて終了すると、
           ニ列目に色が出ずに、三列目に色が出てくるということになっています。
     (化学大っきらいで、高校時代に選択もしなかった私には、もうこのあたりで息も絶え絶え、やっとの思いで書いています)

写真C マロラクティック発酵をブロック(止める)するには、いつくかの方法があります。
     バクテリアを完全に殺してしまう、卵白から成るLYSOという粉末もありましたが、費用が高いので、
           バクテリアの働きを抑圧させるサルファーのタブレットを使うことにしました。 
     1個2グラムのものを2個投入。これを、大体4〜6回します。

写真D マロラクティック発酵させないものは、こうして、赤く目立つシールが貼られます。
     遠くからでも一目で、自分の樽がわかります。

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