Etude
エテュード【カーネロスの重鎮】
AVAとしての「カーネロス」は、ナパ郡とソノマ郡をまたぐというユニークな特徴を持っています。
サンパブロ湾がすぐ南に控えていますので、ナパ・カウンティの中では、最も海風の影響が強い地区、
イコール冷涼な地区とされており、従って、ナパ・ヴァレーの中では最も多くのピノ・ノワールが、
この地域で作られています。
カーネロスのピノ・ノワールと言った場合、いくつかのワインが思い浮かびますが、カリフォルニア・ワイン愛好家に
聞いて回ったとしても、「エテュード」がそのリストから漏れることはまずないのではないかと思われます。
いわゆる「カリスマ」的ワインメーカーとして有名な、Tony
Sorter氏が興されたワイナリーで、現在、ソーター氏はオレゴン州での
「Sorter」ワイン造りにより比重を置かれています。エテュードそのものは大手酒販会社「フォスター」社の傘下にあり、
その昔、ブランディー製造所、distilleryだった建物を買い取り、そこでワインを造っています。
ソーター氏の手から離れたかのような印象があるため、一時ほどエテュードもその存在が騒がれることはなくなっているようですが、
ソーター氏は今でもオーバーオールな監修はされており、modestで素敵なワインメーカーJon
Priest氏、ヴィティカルチュラリスト
Franci Ashton氏が、エテュードの品質を高いレベルに置き続けることに成功しています。
【充実度満点のテイスティング】
ワイナリーは、毎週土曜日のみ一般公開しており、祝祭日を除く平日は、午前10時と午後3時にテイスティング・
アポイントメントを取っています。
テイスティングする部屋が、ぎちぎち詰めて12名程度の収容なので、平日であっても予約が結構早くに
埋まってしまいます。
白ワイン用、メルロー及びカベルネ・ソーヴィニョン用、ピノ・ノワール用のグラスがセットされたテーブルで、
テイスティング開始。
テイストの合間を縫って、カーネロス地区のエステート・ヴィンヤードの土壌状態、クローン別ブロックの説明、
ナパ・ヴァレーにおける契約ヴィンヤードの位置、テイスティング用語一覧表などなど、勉強になる資料が
次から次へと出てきます。
エステート・ヴィンヤードにおいては、オーガニック&サステイナブル農法を取り入れており、効果的と思われる手法は積極的に
取り入れています。そのひとつが05年ハーベストから始まった「鷹によるヴィンヤード・プロテクション」です。
葡萄の房の色が変わる(ヴェライゾン)頃から収穫時までの間、鷹匠を雇い、訓練された鷹を毎日一定時間放ち、葡萄を摘もう
とするムクドリなどを畑に近づけさせないようにします。
ネットを張ったり、ばね仕掛けのワナを取り付けたり、威嚇用の音を鳴らしたりといった従来の方法と比べて、
鷹によるパトロールは、ご近所さんへの迷惑度がぐ〜んと減ります。
こういったワイン&フルーツ造りの様々な要素をお話してくださるので、大変興味深く、ワインの味わいもそれによって
より深くなるというものです。
7月のある日に訪れた日のラインアップは以下でした。
2006 Etude
ピノ・グリ、カーネロス
2006 Etude
ピノ・ノワール・ロゼ、カーネロス
2005 Etude
ピノ・ノワール、カーネロス
2003 Etude
メルロー、ナパ・ヴァレー
2003 Etude
カベルネ・ソーヴィニョン、ナパ・ヴァレー
2003 Etude
カベルネ・ソーヴィニョン、セント・ヘレナ
2003 Etude
カベルネ・ソーヴィニョン、ラザフォード
2004 Etude
エアルーム・ピノ・ノワール
2006 Fortitude Luvisi
セミヨン
今回のテイスティングの収穫は、カベルネ三種を頂けたことでした。
ナパ・ヴァレーAVAのカベルネは何度か飲んだことがありましたが、セント・ヘレナ、ラザフォードのものは初めてで、
それぞれの特徴が明白にわかる比較試飲ができたことは幸せです。
どれが一番好きかと聞かれても困るのですが、3つのカベルネ、それぞれに「個性」があり、特にセント・ヘレナ、
ラザフォードは生産量が極端に少ない(140〜240ケース)ので、出会えただけでも嬉しいと思わされます。
そしてエアルーム・ピノ・ノワール。
最初にこのピノ・ノワールを飲んだのは、遡ること12年ほど前。
現在、リッツ・カールトン・サンフランシスコ「ダイニング・ルーム」でシェフをしておられるロン・シーガル氏が、
「ザ・ノブ・ヒル」レストランでシェフをしておられた頃、この「ノブ・ヒル」でのディナーで、エアルームを注文した
記憶があります。
久しぶりに会ったエアルームは、「ご無沙汰してしまっていて、大変、大変、大変申し訳ございませんでした。」と
ひれ伏してお詫び申し上げなければと思ったほど、素晴らしいワインでした。
まず、ふわ〜っと立ち上がってくる香りが、芳しくも優雅なトーンが抑えられた甘いフルーツ。
香りを楽しむだけで、うっとり幸せな気分になるなんてことは、そうそう滅多にないことなのですが、これはそうでした。
口に含むと、いちごとかプラムとかのフルーツの甘さに加えて、ピノ・ノワール独特の森林っぽいearthyさが重なり、
スパイス風味も次から次へと様々なものが感じられ、まったく飽きのこない、ゴージャスかつミステリアスなワイン。
結構ドスンと来るカベルネ3種をテイストしたあとに、このエアルームだったのですが、
まったく負けていないというか、逆にカベルネを凌駕してしまう力強さを持っているピノ・ノワールでした。
結構な数の種類をテイストしますので、アポイント時の人数にもよりますが、軽く2時間が過ぎてしまうこともあります。
それくらい、じっくり腰据えて楽しんでいただきたい。
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