Michel-Schlumberger Wine
Estate ミシェル=シュラムバージェ・ワイン・エステート 【ドライ・クリーク・ヴァレー】
ロシアン・リヴァー・ヴァレー地区の北は、大まかに言うと、ハイウエイ101号線をはさんで東側が「アレキサ
ンダー・ヴァレー」、西側が「ドライ・クリーク・ヴァレー」と呼ばれています。
大半のワイナリーが、ドライ・クリーク・ヴァレーの南半分、ロシアン・リヴァー地区寄りに固まっているため、
サンフランシスコやナパからの日帰りでは、なかなかドライ・クリーク・ヴァレーの北の方までは行かないのが
現実。
でも、1日フルに使って、このドライ・クリーク・ヴァレー北半分だけを探訪するのも、お薦めです。
今回は、その地区に点在するワイナリーのひとつ、「ミシェル=シュラムバージェ」をご紹介します。
【スイス人からフランス人へ】
当ワイナリーの始まりは、1979年、スイス人のJean-Jacques
Michel氏が、約2年に及ぶ土地探しの末、
ワイン・クリーク・キャニオンの一角に50エーカーのヴィンヤードを開墾したことからです。
当時は「ドメーヌ・ミシェル」という名前でした。
1993年まで、彼はドメーヌ・ミシェルのチェアマンとして当ワイナリーを仕切っておられたのですが、
91年から参画されていたJacques Shlumberger氏が、1993年に代表の座をミシェル氏から譲り受け、
ワイナリー名を「ミシェル=シュラムバージェ」に変えました。
フランスはアルザス、「Domaines
Viticoles Schlumberger of Guebwiller」一家出身のジャックは、1971年にソノマ・カウンティに
居を構え、ソノマ・マウンテンに6エーカーのヴィンヤードを管理、そのフルーツを大手ワイナリーに売りながら、72年には自らの
ワイナリー「ソノマ・マウンテン・ヴィンヤーズ」も興しています。
1989年には、ナパのGirad
WineryでワインメーカーをされていたFred
Payne氏をチーフ・ワインメーカーに迎え、
現在に至っています。
【そして日本人も】
ヨーロピア〜ンなバックグラウンドの当ワイナリーには、でも、日本の方もワイン造りの重要なポジションに
ついておられます。
カリフォルニア・ワインをお好きな方なら、恐らくよくご存じの「私市(キサイチ)友宏」さんです。
私市さんは、「ミシェル=シュラムバージェ」で約8年間、エノロジストとして働いてこられています。
10月のある日、ここのツアー&テイスティングを申し込んで、お客様をお連れした時、偶然にも私市さんと
お会いすることができました。
不勉強な私は、当ワイナリーで彼が働いているとはつゆ知らず、収穫された葡萄の重さを量っていた
セラー・スタッフの人から「日本から来たの?うちに日本人のエノロジストがいるよ」と教えられ、
それが私市さんだったことを、その時初めて知り、「そうだったのかあ」と思っていた直後、
そのご本人が私達の前に現れたのですから、そのタイミングの良さに腰が抜けるかと思うくらい、びっくりしました。
北カリフォルニアでの日本人社会は狭く、まして「ワイン」を巡る社会は更に狭いので、辿っていくと
共通の知人・友人はごろごろ出てきます。
私市さんのことは、当然あちこちからお聞きしていましたし、ご自身が造られている「まぼろし」ワインは
もちろん、「マボロシ・ヴィンヤード」の葡萄から造られた他ワイナリーのピノ・ノワールも味わっていました
ので、いつかご本人とお会いできたら良いなあ・・と、ぼんやり思っておりました。
そのご本人と予期せず対面することができたのですから、「とってもラッキー!」と小躍りしてしまったのでした。
【ツアー&テイスティング】
「折角だから、私がツアーしましょうか?」と申し出てくださった私市さんの言葉に図々しく乗り、午前11時の一般向けツアー
の人たちとは別行動。
ぶどう栽培者でもある私市さんらしく、ツアーは敷地裏のヴィンヤード行きから始まりました。
裏の山に向かって広がるヴィンヤードは、肉眼でも「キツそう」とわかる、かなりの急傾斜。
カベルネ・ソーヴィニョンを始めとするボルドー品種が大半を占めていますが、少量のシラー、ジンファンデル、
ピノ・ノワール、シャルドネも栽培されています。
その日は、カベルネ・ソーヴィニョンが収穫されてきていましたが、あの傾斜の中の手摘み&運びおろしは、
さぞや厳しいものだろうと思います。
ヴィンヤード探訪のあとは、ワイナリー施設に戻り、発酵タンク、セラー、ボトリング施設の一連を見学。
発酵が進んでいる最中のピノ・ノワール、メルローを飲ませていただきました。
計量用プラスティック容器から、直接ガブ飲みです。(笑)
ピノ・ノワールは、3〜4%発酵が進んでいるもの、メルローは10数%進んでいるもの、でした。
ピノ・ノワールは、私市さんの「マボロシ・ヴィンヤード」のもので、爽やかに甘く、とってもとっても美味しい
グレープ・ジュース。
メルローは、ミシェル・シュラムバージェのもので、ピノよりも発酵が進んだ段階だけあって、
より「ワイン」に近いものになっておりましたが、大変エレガントな味わいで素晴らしいものでした。
テイスティングは、キッチンで。
この日は、シャルドネ、ピノ・ノワール、シラー、カベルネ・ソーヴィニョンが出されていて、
一緒にツアーに参加するはずだった他の人たちと一緒になって、テイスティングです。
ドライ・クリーク・ヴァレーの北側なので、南側やロシアン・リヴァー・ヴァレーよりも暑くなるという環境の中、
唯一のピノ・ノワール畑を持っている当ワイナリー。
「ドライ・クリーク・ヴァレーのピノ・ノワール」という珍しさはあるのですが、そして、他の方たちは
「ヴェリー・ナイス!」と大層気に入られていたのですが、私個人的には、可もなく不可もなくというか、
あまり印象に残らないピノ・ノワールでした。
それよりも、シラーが良かったです。 25ドルという価格が気に入ったという理由もあるのですが、
フルフル新鮮で、独特のスパイシーな風味が口の中に広がる、これこそ「ヴェリー・ナイス」なワインでした。
【リザーヴ・テイスティング】
私達は、ツアー申し込み時に「リザーヴ・テイスティング」の予約もしてありましたので、キッチンでの
テイスティングが一通り終わったあと、私達だけ別室に案内され、そこでリザーヴ・カベルネのテイスティング。
98年、99年、2000年 リザーヴ・カベルネの垂直テイスティングが用意されていました。
説明してくれるスタッフも、別の方です。
ここのワインをとても愛しておられるのだなと思わせられる、説明熱心な女性スタッフで、
「これは、いついつ、何々と合わせて飲んだのだけど、とっても美味しかった。」
「これは、いついつ、こういう時に開けると最高!」と、淀みがありません。
リザーヴ・カベルネは、かなり良いお値段なので、実際の購入には簡単に結びつきにくいのですが、
ドライ・クリーク・ヴァレーのカベルネを知るには、絶好の場だと言えます。
カリフォルニアのカベルネの典型は、アルコール度も高めで、香りも味わいもボ〜ン、ド〜ンとわかりやすい
ものだとされていますが、ミシェル=シュラムバージェのカベルネは、それと比較すると「ヨーロッパ」タイプの
ものと言えるかもしれません。
98年のリザーヴ・カベルネで、アルコールが13%と、カリフォルニア産としては低め。
食事に合わせてこそのワインという観点からすると、こういうカベルネはカリフォルニアでは希少価値なのではなかろうかと思います。
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