De Loach Vineyards
デローシュ・ヴィンヤーズ 【Russian
River Valley】
ナパ・カウンティの総面積が「2042㎢」であるのに対し、ソノマ・カウンティの総面積は、「4580㎢」。
(ちなみに、東京都総面積は、2187㎢」。)
ナパ郡の倍以上の面積を持つソノマ郡ですが、AVA(American
Viticultura Areas=政府公認葡萄
栽培地区=アメリカ版アペラシオン)の数になると、ナパ・カウンティ15、ソノマ・カウンティ13
(2006年1月現在)と、その面積の大きさに比して少ないのが特徴です。
少ない分、カバーする面積が大きい「超広範囲」AVAというものがあり、ソノマ・カウンティの中で一番面積の大きい「ソノマ・コースト」
などは、516,409エーカー(206,563平方メートル)もあります。これは、ナパ・カウンティ内最大のAVA「ナパ・ヴァレー」の約2.3倍。
これだけ広いと、「コースト」という名称から想像される太平洋岸沿いの地域だけに収まらない。
内陸のサンタ・ローザや、ペタルマあたりも「ソノマ・コースト」AVAに含まれるわけで、ソノマ・カウンティ内のAVAは実に複雑怪奇。
「Russian
River Valley」AVAは、その中でも比較的わかりやすい地域・・・です。(少々、躊躇)
ハイウエイ101号線の西、ラッシャン・リヴァー(英語読みで通します)沿い両岸、というのが、おおよその範囲です。
(ソノマ・カウンティ・グリーン・ヴァレーAVAのことを言い出すと、もうキリがないので、止めておきます)
このラッシャン・リヴァー・ヴァレーAVA内に住所があるワイナリーが117軒ほど、このAVA以外に住所があるけれど、当AVAのワインを
造っているワイナリーが106軒ほどあり、ソノマ・カウンティの中でも存在感のある、知名度の高い地域と言えます。
今回ご紹介する「デローシュ・ヴィンヤーズ」も、このラッシャン・リヴァー・ヴァレー内にあります。
【1975年に生まれ、2003年に生まれ変わる】
「あれこれ」コーナー「20ドル以下のカリフォルニア・ワイン」で、「Hook
& Ladder」をご紹介した時に、
この「デローシュ」のことを書きましたが、サンフランシスコの消防士であられたセシル・デローシュ氏が、
ワイナリーを興したのが1975年。
翌76年に、初ワイン75年ヴィンテージのジンファンデルを出しています。
90年代後半のバブル期に、資金投入、生産量を倍以上に増やしたのが災いして、バブルが弾け、
9/11後の景気後退時期を乗り越え切れず、2003年にはチャプター11を申請するに至りました。
そんな状態のデローシュを買い取ったのが、ブルゴーニュ、ニュイ=サン=ジョルジュを本拠地とするBoissetファミリーでした。
買収後、創設者セシル氏の息子さん、マイケル・デローシュ氏がエグゼクティヴ・VPとして残っておられますが、
「新生」デローシュは、素晴らしい2ステップを踏まれ、生まれ変わりました。
@ 新ワインメーカーと新ワイン栽培ディレクター
2004年、デローシュ・ヴィンヤードは、Greg La
Follette氏をワインメーカーに迎えました。
ソノマ・カウンティのピノ・ノワール造りに関わる人なら、誰もが一目置く存在のグレッグ氏は、かの
アンドレ・チェリチェフ氏絶好調時のボーリュー・ヴィンヤーズを皮切りに、ケンドール・ジャクソン、
Flowersでワインメーカーを勤め、現在はご自分のブランド「タンデム」をやりながら、複数のワイナリーで
コンサルタントをされています。(タンデムについては、以前他サイトで紹介記事を執筆しましたので、
よろしければ、そちらをご覧ください)
その「タンデム」紹介記事で引用したのが、グレッグさんの「理想のピノ・ノワール」についてで、彼は「gentleness,
richness
and generosity」という言葉を使われていました。「優しさ・穏やかさ」「豊かさ」そして「寛大さ」「高貴さ」。
グレッグさんが造られるワインは、ピノ・ノワールに限らず、すべての品種において、この3つの言葉が反映されているように
思えます。ホっとするワインとでも申しましょうか。何だか敬虔な気持ちにさせられるのです。
そして、グレッグさんと一緒にやれるなら!と、デローシュ・ヴィンヤーズに「ワイン栽培ディレクター」として参加されたのが、
Virginia "Ginny" Lambrixさんです。彼女の役割は、28エーカーの自家農園に、オーガニック&バイオダイナミック農法を
施すことです。
A 新ビジター・センター
テイスティング・ルームも、約1年ほどの改築期間を経て、生まれ変わりました。入り口を入ってすぐ目の前、
長く左右に伸びるカウンター。カウンターのうしろに整然と並ぶワインのボトル。
スペースの右奥には、プライベート・テイスティング用の個室もしつらえられました。
敷地のうしろの方には、100名収容可能なパーティー会場「ドメーヌ・デローシュ」も完成。ウエディング以外の
あらゆるファンクションをここで開くことができます。
出される食べ物は、ヴィンヤードお抱えシェフ Cyndicy
Coudrayさんが腕をふるいます。
オーガニック・フードに造詣深い彼女は、95年、敷地内にオーガニック・ガーデンを造り、当ワイナリー従業員の
食べ物、そしてパーティに出される食べ物すべてを、このオーガニック農園から収穫されるもので賄っています。
もちろん、このガーデンにもバイオダイナミック農法が取り入れられています。
【貴重な存在のテイスティング・ルーム】
デローシュでのテイスティングは、ここ一箇所で、メジャーな品種をあらかた全てトライすることができる
という点で、特徴的です。
当然、各ワイナリーによってワインの造り方・目指すスタイルは違いますので、ここで飲んだものが、
この地区のワインを表すすべてであるとは言いませんが、それでも、ラッシャン・リヴァー・ヴァレーAVAの
ワインを複数品種、同時に試飲できるワイナリーというのは、貴重な存在です。
例えば、「Russian
River Valley Appellation」テイスティング。(5ドル)
2006年春のラインアップは以下でした。この中から5種類、選びます。
2003 Russian River Valley Sauvignon
Blanc
2003 Russian River Valley Chardonnay
2004 Russian River Valley Pinot Noir
2002 Russian River Valley Merlot
2000 Russian River Valley Cabernet Sauvignon
2002 Russian River Valley Zinfandel
2000 Russian River Valley Late Harvest Gewurztraminer
どの品種のワインが自分の好みのタイプなのか、このテイスティングで視野を広げることができるのではないでしょうか。
前記グレッグさんが、2004年ヴィンテージから関わっておられるということを知っていたからかどうか、自分でも定かでは
ありませんが、上記ピノ・ノワールは、森林浴しているような香りに、懐かしい甘さが絡まる、心温まる味わいでした。
これで18ドルというのは驚きでした。
「O.F.S
(Our Finest Selection)シリーズ」「Single
Vineyard シリーズ」 テイスティング (10ドル)
下から5種類選びます。(2006年春のラインアップ)
「O.F.S」全て、エステート・フルーツ
2004 Sauvignon Blanc
2004 Chardonnay
2003 Pinot Noir
2003 Cabernet Sauvignon
2003 Zinfandel
「Single Vineyard」
2004 30th Anniversary Pinot Noir Cuvee
2004 Maboroshi Vineyard Pinot Noir
2003 Gambogi Ranch Zinfandel
2004 Sasitone Ranch Zinfandel
2004 Forgotten Vines Zinfandel
シングル・ヴィンヤードものは、一番上のピノ・ノワール・キュヴェのみエステート・フルーツです。
ラッシャン・リヴァレ・ヴァレー地区は、ピノ・ノワールとジンファンデルという両極端とも取れる品種で有名な地域ですが、
デローシュのワインは、いづれも、ふるふる新鮮なフルーツの「甘み」が顕著であるように思います。
その中にあって、「Maboroshi」ヴィンヤードのピノ・ノワールは、その甘みが大人っぽく、私個人的に好きな「酸味」が
ほんわりあって、大変素敵でした。日本人ワイン・メーカー&グローワーの私市(キサイチ)さんご夫妻が、丹精に心を込めて
育てられているフルーツが、新生デローシュの単一畑シリーズに登場したというのは、本当に素晴らしいことだと思います。
ジンファンデルも見逃せません。シングル・ヴィンヤード・シリーズのいづれも甲乙つけがたいのですが、個人的には、
「Gambogi」のものが、一筋縄ではいかない複雑さ、みたいなものがあって、興味深く感じました。
ピクニック・スペースもありますので、食べ物を持参して、これらのワインをじっくり腰すえて味わいたいものです。
デローシュを、「大量生産の、ほどほどワイン」という認識で捉えておられる方、今一度、ここを訪れてみてください。
新生デローシュ、です。
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