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2004年7月28日
今週は、「あれこれ4月14日」でご紹介した中村倫久さんのエッセイです。
先回6月号では、カリフォルニア州立大学デイビス校の卒業式について書いてくださいました。
7月は、これです。
今月のナカムラ・ノリヒサ 2004年7月
UC Davis卒業後、東京にて一週間程の休みを満喫したのち、7月初旬に再びナパに戻ってきました。
ナパのメイン通りである29号線からは、ぶどうの木々が青々と順調に育っている様子が
はっきりと覗えます。それもそのはず、こちらの夏は7月に入り早くも本格的になってきています。
3月に購入したトヨタ・ピックアップトラックは冷房を完備しておらず、おかげで仕事場につく頃には
毎日汗だくです。
この暑さのせいでしょうか、こちらに戻って、すぐぶどう畑で 画像をクリックして、ご覧下さい。
実際にぶどうの実を観察してみると、既に実は柔らか
くなり、黒ぶどうは色を赤く染め始めていました。
この生理学的な現象はVeraisonと呼ばれ、通常
ナパのぶどうにおいては、7月15日頃に始まると
されています。しかし今年のVeraisonは7月頭から
始まっており、このことから、今年の収穫は例年より
2週間ほど早く訪れるだろうと言われています。
そうなれば、白ぶどうやピノノワールの収穫は、その約1ヶ月後。
一年で一番忙しい季節がもうそこまで来ていると思うと、嬉しいやら悲しいやら・・・。
僕が仕事をしている、ここナパ・ワインカンパニーは
29号線沿い、道を隔てた隣にはオーパスワンの
ワイナリーが悠々とそびえたっています。
ナパ・ワインカンパニーは、ナパで一番大きなカス
タム・クラッシュ・ワイナリー。
カスタム・クラッシュ・ワイナリーとは、通常のワイナ
リーとは多少異なり、ワイナリー施設を所有して
いないワインメーカー達に、施設とスタッフを貸して
ワインを作らせているワイナリーのことを言います。
現在では約70のワイナリー及びワインメーカーが、ここを利用してワインを作っています。
この70のワイナリー及びワインメーカー達は様々で、パルマイヤー、アミューズブッシュ、
ショウケットといった、いわゆるカルトワインを作っている人たちもいれば、自分ではワインを作らず、
人が作ったワインを買いブレンドしたものを、自分のワインとして売り出している人もいます。
このワイナリーでの僕の日々の業務は、ワインの分析。
ワインメーカー達が作ったワインのアルコール度、酸度、PH、糖度などをチェックし、
それらのデータを基にした様々な実験の手助けをしています。
まあ業務内容の詳細はさておき、このワイナリーで
働く最大の利点は、なんといっても多種多様な
ワインサンプルのテイスティングができることだと
思います。
一通りの分析が終わると、その日のすべてのサンプ
ルはひとまとめにされ、終日保管されます。
その数は平均して、一日40から50程度。
これらを業務の合間に、同僚や時にはワインメーカーと共にテイスティングすることにより、
日々新しい発見が生まれます。
ぶどうの出来がワインの質を決定することは間違いありませんが、同じぶどうを使って
10人がワインを作れば、10種類の違ったワインが出来上がってくることも事実。
ここで働き始めて約5ヶ月、70人のワインメーカー達が作る、それぞれ違ったワインを毎日
テイスティングしているうちに、各ワインメーカーの嗜好やスタイルが実際にどのようにワインの味に
影響しているかが、自分の中で徐々に明確になってきています。
さて今週もあと二日。コーヒーで目を覚まし、冷房のない愛車にてナパへ向かいます。
中村倫久
冷房のついていないピックアップ・トラックは、ナパにおいては「あってはならない」・・・
あ、言いすぎですか、では、「信じられない」(あ、これもだめ?)ものです。
熱射病にかかってしまわぬように。
写真註:上から2枚目の写真は、別のカスタム・クラッシュ・ワイナリーの施設を
写したものです。
一番下の写真は、ナパ・ワインカンパニーに併設されている
テイスティング・ルーム「セラー・ドアー」のものです。