French Laundry
フレンチ・ランドリー
【予約が取れにくい店、ナンバー1】
食べ歩きが好きな人なら、絶対一度は行ってみたい店、でも知名度も人気も高いので、なかなか予約が取れない。
そういうレストランは、どこの土地に行っても一軒、二軒はあります。
ナパ・ヴァレーはYountville
にある「フレンチ・ランドリー」も、そういうお店で、だから海外から来られるグルマンの多くは、
「コネクション」や「つて」を駆使しつつ予約を獲得して、ここを訪れます。
一軒家を改造してのレストランですので、一階に約22席ほど、2階は主に個室使用で10席ほどしかなく、ランチ、ディナー共に
二回転が精一杯となると、そりゃあ予約も難しくならないでか、です。
数年前、かのミシュラン・レストランガイドの「サンフランシスコ版」が出版された時、唯一の三つ星を獲得し、現在に至るまで
それを維持しているのですから、更に予約が難しくなったといえるかもしれません。
【冬のある日のランチ】
日本から遊びに来ていた母と、主人と3人で、ランチを頂きに行きました。
ランチと言えども、メニューは夜と同じ、値段も同じ、そして最低2時間半はかかる状況も同じ。
運転を控えてワインの量を抑えるなんてことは、絶対したくなかったので、Yountville
の街に宿を取り、万全の体制で臨みます。
メニューは、「シェフ's
テイスティング・メニュー」と、「テイスティング・オブ・ヴェジタブル」の2種類のみ。
それぞれ、9ディッシュに、コース前のamuses-bouche、コース後のMignardises がついて、240ドル。(サービス料込み)
コースの中には、選択肢があるものもあり、選択によっては更に30〜60ドル、上乗せされます。
メニューの内容は、日毎に変わります。以下のメニューは、2009年12月中旬のものです。
@
Andante Dairy Yogurt "Panna Cotta"
ヨーグルトのパンナ・コッタの表面は、グリーン・アップルのグレーズで薄〜く繊細に覆われていて、
その上に、シャンパーニュで造られたソルベ風のものと、白鮫キャヴィアが。
ペアリング・ワイン: Pierre
Gimonnet, Blanc de Blancs, "Cuvee Deux Cotes," 1er Cru 2005
A
(選択A)
Salade De Fenouil
私と主人は、こちらを選びました。
Fenouil というのは、フェンネルのことで、これが見事に茹でられて、ほんの少しローストされています。
なるほど、こういう調理の仕方があるのだなと目からウロコでしたが、素人にはここまで微妙な茹で方は無理。
周りを飾っているのは、サツマ蜜柑、ニソワ・オリーヴのソース、松の実、フェンエルの上には、マイクロ・ルッコラ。
フェンエルを頂くのに、オリーヴのソース(と言うのでしょうか)なんて初めてでした。素晴らしい。
ペアリング・ワイン: Bodegas
Shaya, Verdejo, "Old Vines," Rueda 2008
(選択B)
Moulard Duck "Foie
Gras Au Torchon"
母が選択。「フォアグラが選択肢にあったら無視できないでしょう」と。30ドル、エキストラです。
クインスの花、栗、セロリ、黒トリュフが添えられていて、トーストされたブリオッシュ、そして
3種の塩がついてきます。
私は横から、この3種の塩を失敬し、美味しい・美味しいと味わい比べ。
B
(選択A)
Sautéed Fillet of Pacific
Moi
主人が選択。
Moi
というのは、ハワイ沖で獲れる「コノシロ」の一種で、乱暴に括ってしまうと、つまりはヒカリモノの部類に
入るかと思います。さぞや、コハダのように「握り」にしたら美味しかろう・・・。
で、こういう魚はやっぱり、皮の焼き具合が見どころ・味わいどころでしょう。
もう、それは見事な焼き具合でした。皮の面だけ、しっかり焼いて、ひっくり返したあとの身の部分は、
さっと火を通す程度なのでしょう。皮の香ばしさ、パリパリ感と、身のモイスチャー度が絶妙でした。
(選択B)
Nantucket Bay Scallops "Poêlées"
母と私が選択。
上記、主人が選んだMoi に感激しっぱなしでありながら、自分のディッシュはお裾分けすることなく
きれいに頂きました。
ホタテの並び方があまりにキュートだったので、テーブル目線で写真を撮りました。
お皿を飾っているのは、ブラック・ライス、カリフラワー、マドラス・カレー、シラントロ、
そして、アプリコット&リースリングのエマルジョンが、さ〜〜っと敷かれています。
ブラック・ライスを添えるというのが、これまた目からウロコ。
リゾットにホタテが入るのは、よく見かけるパターンだけれど、アルデンテのブラック・ライスのモグモグ感と
合わせるのは、「なるほどなあ」。
ペアリング・ワイン: Von Hovel,
Riesling, "Oberemmeler Hutte," Kabinett, Mosel 2008
C
Maine Lobster Tail "Pochée
Au Beurre Doux"
フランス語だと、なかなかピンと来ないのですが、バターで
poachしたロブスター・テイルということでしょう。
このディッシュは、季節を問わず、コースの中に必ずといって良いくらい頻繁に登場するもので、
違いは、ソース及び、添えられるもの。
この日は、ソース2種。 美しい乳白色のスービーズと、対照的な色の濃さを出すコーヒー&チョコレート・ソース。
小さくキュートなチポリーニ・オニオンと、細かく刻まれたヘーゼルナッツが、ロブスターを支えます。
ロブスターを、このように、2つの対照的なソースで食すことができるのは、実に幸せです。
いわゆるバシャメルに近いスービーズも、コーヒー&チョコレート・ソースも、極めて繊細な味で、
ソースそのものが主張するのでなく、ロブスターを引き立たせる「脇役的存在」に徹しているかのようでした。
ペアリング・ワイン:
Ramey, Chardonnay, "Hyde
Vineyard," Carneros 2006
D
(選択A) "Dégustation"
of Acorn-Fed Berkshire Pork
バークシャー・ポークというのは、イギリス産のearly-maturing
ブラック・ピッグを指します。
今では希少なものとなっており、イギリス以外では、鹿児島の「黒豚」が同種とされています。
で、今回は、ブレイズされた belly(お腹の部分)、ベーコンで巻いて焼かれたロイン、煮込んだ肩部分の
3種となって登場。
秋の豆のカスレーと、ホール・グレイン・マスタードが添えられています。
マスタードとポークの組み合わせは大好きなので、ああ美味しい、ああ美味しいと、恍惚状態。
ペアリング・ワイン: Williams-Selyem,
Pinot Noir, Sonoma Coast 2007
(選択B)
Tartare of Kuroge
Beef From Shiga
主人が選択。 30ドル、エキストラ。
昨今、和牛というのは、こちらのレストランでは引っ張りだこで、でも大抵のところは「Kobe
Style Beef」で、
つまり、神戸牛と同じ方法で、アメリカやカナダで飼育されているビーフということになります。
日本のどこどこ産のビーフであるかを明記している店は、まだまだ少ないです。
だって、ものすごく高いですから。和牛はとても美味しいと聞いていても、いざレストランに行って、
すごい値段を目にしたら、大抵の人は怖気づいて注文しません。
で、このディッシュ。
「タルタル」とあったので、どれだけ細かく叩かれて出てくるのだろうと興味津々でいたところ、結構大きなサイズ。
普通の感覚で考えたら、このひと皿に30ドル!?となるところですが、
サービス料(=チップ)20%を引いたら24ドルなわけで、まあ、それでも高いのは高い。
が、これが日本から直送の和牛の恐ろしさです。
それにしても、美しい。
シュガー・スナップ・エンドウ、タンベリーナ人参、カブ、ひたすら薄い「Pommes
Maxim's」(ポテトチップス)、
ホースラディッシュのプディング、そして赤ワイン・リダクション。
このひと皿を完成させるのに、何人のスタッフが、どれだけの手間と時間をかけているのだろうと、
お皿を眺めながら、う〜んと唸る。
E
Elysian Fields
Farm Lamb Rib-Eye
エリシアン・フィールド牧場は、ペンシルベニア州にある牧場で、フレンチ・ランドリーがここのラム肉を
メニューに入れた時は、地元で結構なニュースになったそうです。
残念ながら、このディッシュの写真を撮っておりません。
というのも、これに合わせて出して頂いたワインに、すっかり気を取られてしまったからです。
ペアリング・ワイン: Jack
Quinn, Cabernet Sauvignon, "Agave Rose Vineyard," Rutherford 2006
このワインについては、「あれこれ」のなんちゃってブログにも書きましたが、凡庸な2006年ヴィンテージのもの
だからかなのかどうなのか、ワインが一人歩きすることなく、もともとラム・ディッシュのソースに当ワインが
使われているかのように、素敵にマッチしたのでした。
フード&ワイン・ペアリングをして、こういう初めてのワクワクするワインと出会うと、心底嬉しくなります。
F
Aged Cavatina
デザートのように見えますが、これはチーズ・ディッシュです。
フレンチ・トーストと、Cavatina
というチーズのサンドイッチで、極めて濃厚。
上に乗せているのが、また意表をつくもので、アーティチョーク、トマトのコンポート、そしてマイクロ・ロメイン・
レタス。チーズと合わせるのに、私のような素人にはチラっとも浮かんでこない素材のパレード。
調子よく、ワインを飲み干していた私に、(母はおとなしく、まだ上記のカベルネを飲んでおりました)、
ソムリエは何を、このチーズ・ディッシュに合わせてサーヴしてくれたでしょうか。
ペアリング・ワイン: Neyers,
"Cuvee d'Honneur," Napa Valley 2005
なんとシラーであります。
どんどん、酔っ払ってちょうだい、と言われているかのようで、よ〜し、受けてたってさしあげようじゃないの
と、身構えましたが、ディッシュが濃厚なだけに、まったく違和感なく、すいすい飲めてしまいました。ナイス。
G
Dark and Stormy
ソルベです。写真、撮っていません。この時点で、相当酔っ払ってましたので。
マウイ産ゴールド・パイナップルのソルベに、ジンジャーブレッドとバナナ。
H
(選択A)
Gateau Saint Nizier
Au Manjari
私と主人が選択したデザート。
Manjari
というのは、チョコレートの種類名で、これを使ったガトー(チョコレート・ケーキ)ということです。
黄色いのは、マンゴ&チリ・レリッシュ、大きめの白い楕円形はココナッツ・ミルク・ソルベ、
ソルベの下に敷かれているのは、Valrhanaココア・ニブ、真ん中の小さめの白い球体は、
ライムのフォーム。美しい。チョコレート・ケーキも、とても上品なテイストで、ナイス。
ペアリング・ワイン: Kiralyudvar,
Tokaji, "Cuvee Ilona," Tokaj 2002
(選択B) Bakewell
Tart
母、選択のデザート。
タルトと書かれてあったので、フルーツ・タルトのようなものが出てくるのかなと思っていたら、
棒状になって出てきました。
ハックルベリーが乗せられて、Creme Fraicheのソルベも、色は爽涼感を出しているけれど
しっかり濃厚そう。
粒の大きいマルコナ・アーモンドが、大変味わい深く印象的でした。
このあとのMiganardises
も3種類のものが出され、大満足のうちに、3時間半のランチを終えました。
フレンチ・ランドリーには、過去ディナーで2回来たことがありましたが、今回、3回目にしてようやく、
フレンチ・ランドリーという店の凄さ、素晴らしさを実感しました。
オーナー&エグゼクティブ・シェフであられるトーマス・ケラー氏のもと、Chef
de Cuisine, Sous Chef は
変わっています。
現在のチームが作り上げるものと、今の私のテイストとの相性が非常に良かったのかもしれません。
このあたりの、もっと突っ込んだ感想は、別途「あれこれ」で書く予定にしております。 |