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2011年03月31日

今年の3月は実によく雨が降りました。ストームも2〜3回来て、川が氾濫したり、地崩れが起きたり、強風により大木が倒れたり。
シエラの山の方では、この雨が雪となりますので、春以降の雪解け水がかなりの量になることでしょう。
ここにきてようやく、カリフォルニアでは3年ほど続いた
drought(旱魃)に終わりを告げることになるわけですが、今度は降水量が
多すぎて、あちこちの貯水池や地下路のキャパシティを越えてしまっており、そこから溢れた水については、どこにも溜めておく場所が
ないという、実にもったいない状態になっています。

今週の「あれこれ」は、3月28日に開催された「California Pinot Noir: In Pursuit of Balance」テイスティング・イベントについて
レポートいたします。
サンフランシスコの人気レストラン「
Michael Mina」(セントフランシス・ホテル内から元「Aqua」のあった場所に移転しています)と
RN74」のワイン・ディレクターであるRajat Parr 氏と、Hirsch VineyardsJasmine Hirschさんお二方が発起人となって立ち上げられた「In Pursuit of Balance」(「バランスへの追求」「バランスを求めて」)。
ピノ・ノワールにおけるバランスとは何ぞや?そして何故「バランス」がそんなに大事なのか?については、彼らのウエブサイトをご覧頂けたらと思います。

今回は、この組織の初めてのテイスティング・イベントということで、200名限定でチケットが販売され、レストラン「RN74」の大部分を使って、午後5時〜7時半の間に行なわれました。

当日は、全部で23のワイナリーが参加。以前、Coombsville のテイスティング・イベントのレポート時にも書きましたが、このくらいの数のテイスティング・イベントだと、ほぼすべてのワインを試飲できるので、嬉しい限りです。
ただ、そんなに広くないスペースに200名が押し寄せるとどういうことになるか、事前の予想通り、「エクスキューズ・ミー」の連発で人の波をくぐりぬけ、ワインに達するといった状態で、ワイナリーの人のお話をじっくり伺うなどということは到底無理。
そういうことはあきらめて、ひたすら試飲に集中。名前は見聞きしていたものの、口にしたことがなかったものがたくさんあったので、ウキウキ試飲いたしました。
以下、簡単なノートです。すべてピノ・ノワールです。(アルファベット順。印象深かったものには★をつけました)

                     

alta maria vineyards Alta Maria Vineyards, Santa Maria Valley 2009
  表現しにくいワイン。
Alta Maria Vineyards, Santa Maria Valley 2008
     ポワーンとした味わい。
7〜8年前には、サンタ・バーバラ周辺のピノ・ノワールをよく飲んでいたのですが、昨今は北のものばかり飲んでいるなあと、このイベントで思い当たりました。久しぶりの南ピノ・ノワールでした。決して悪くはないのですが、南独特の「田舎っぽさ」が、私には少々ダルいです。
Au Bon Climat "Le Bon Climat-K&U", Santa Maria Valley 2009
  スルスルと飲みやすい
"Isabelle" California 2008
 
earthy,
きれいな酸
Clendenen Family Vineyards "Le Bon Climat" 2007
 
日本のカリフォルニア・ワイン愛好家で知らない人はいないだろうと思われるオーボンクリマ。昔は、ここの「Knox Alexander」ピノ・ノワールを好んで飲んでいたので、久しぶりに飲んでみたかったなあ、Isabelleも良いけれど・・と贅沢な感想。
Calera "Jensen Vineyard", Mt. Harlan 2007
 
普通に美味しい。が、70ドルというのはどうなのだろう。
"Ryan Vineyard", Mt. Harlan 2007
  微妙
Central Coast 2009
  レストランでのグラス・ワインに最適
 
ここも日本のカリフォルニア・ワイン愛好家の間ではつとに有名。当サイトでも何度となく登場しているのですが、どうも私とは相性が合わないような感じです。カレラについては、個人的にはヴィオニエが大好きです。
Ceritas

 

"Escarpa Vineyard", Sonoma Coast 2008
 
プロシュートの香り。もう少し酸が欲しい。
"Escarpa Vineyard", Sonoma Coast 2009
  
きれいな酸。少々甘さが強め。


大変シンプルなラベルで、かねてより興味のあったワイナリー。スモーキーでミネラリーなワインを予想していたのですが、この日試飲したものは、フルーツの甘みが前面に出ていた感あり。生産量が少なく、リリースした先から売り切れになるので、なかなかお目にかかれなかった ワインですので、お会いできて嬉しかった。
オーナー兼ワインメーカーのJohn Raytek氏は、長いことCopainのアシスタント・ワインメーカーをされていて、去年の夏、Pfendler のワインメーカー職に就かれています。(Greg Bjornstad氏の後任) 注目していきたい。
 
Chanin

 

"Le Bon Climat Vineyard" Santa Maria Valley 2008
    野獣の香り
"Bien Nacido Vineyard" Santa Maria Valley 2008
    エレガントな香りなのに、田舎っぽい。

オーナー兼ワインメーカーGavin Chanin氏は、爽やかな好青年で「良いなあ」と、間違った方向から期待度を高めてしまったのが運のつき。久しぶりに飲む南のピノ・ノワールは、どうも私には「ダルい」のでした。Bien Nacido など、かなり好きなヴィンヤードだったのになあ・・・。
 
Cobb "Diane Cobb: Coastlands Vineyard" Sonoma Coast 2008
    スモーキー
"Emmaline Vineyard" Sonoma Coast 2007 ★
    エレガント、きれいな酸。ナイス

背景や関わっている人のことを知らないワインの場合、それが60ドルを越えていたら、なかなか手が出ません。Cobb のワインはまさにそのパターンだったのですが、だからこそ、こういうイベントが役立つわけです。
 
Copain Wines

 

"Les Voisins", Anderson valley 2009
"Monument Tree" Anderson Valley 2009
"Wentzel" Anderson Valley 2009

大好きなアンダーソン・ヴァレーの、しかも散々な年だった2008年のあとの2009年ヴィンテージの、しかも単一畑ものもあるということで、是非試飲したかったのですが、いかんせん、ものすごい人だかりで、近づくことさえできませんでした。残念。
 
Evening Land "Tempest Bloom's Field" Santa Rita Hills 2009
     少々固い?
"Occidental Vineyards" Sonoma Coast 2009
     大変ドライで、タンニン強し。ピノ・ノワールの異端児的存在。
 

オレゴンEola Hills、ソノマのOccidental、サンタ・バーバラ近くのSanta Rita Hillsのバラバラ3箇所に畑を「所有」しているワイナリー。結構なタンニンの強さにたじたじとしてしまいましたが、数年寝かせておくと馴染みやすくなるのでしょうか。個性的であることは問題ないのですが、1本100ドルを越えるようなワインは、もう手が出ません。
 
Failla "Keefer Ranch", Russian River 2009
"Pearlessence Vineyard" Sonoma Coast 2009
"Hirsch Vineyard"  Sonoma Coast 2009

年に数回はワイナリーを訪れているし、それ以外でも比較的よく飲んでいるので、今回は試飲をパスしました。背が高いEhren Jordan氏はよく目立っていて、彼のブースにはたくさんの人だかりでした。
 
Flowers "Sea View Ridge Estate" Sonoma Coast 2007
     体に良さそうな薬草の味わい。
"Frances Thompson Estate"  Sonoma Coast 2007 ★
  ダーク・ココアの香りがナイス。

1年ほど前に、ナパのQuintessa Flowersを傘下に収めて以来、スタッフの数が充実して、今ではツアー&テイスティングが一般に開放されています。(アポ要)
大量の霜、夏の山火事と災難続きだった2008年は、当ワイナリーにとっても影響があったようで、2008ヴィンテージのものは極端に種類が少ないです。この日出されていたのも2007年で、Flowersの今までの印象をガラっと変えてくれたFrances Thompson Estateのピノ・ノワールも、2008年ヴィンテージは出ていません。
 
Freestone  Sonoma Coast 2007
 Sonoma Coast 2008
 Sonoma Coast 2009
(バレル・サンプル)

Insignia
でお馴染み、ナパのジョセフ・フェルプス・ワイナリーのピノ・ノワール&シャルドネ・ブランド。何度となく口にしているので、今回はパス。単一畑ものも出ていなかったし・・。
 
Hirsch Vineyards
"Bohan Dillon" Sonoma Coast 2009
     適度に甘くて、酸もしっかりしていて、飲みやすい
"San Andreas" Sonoma Coast 2007 ★
     スモーキーで
earthy で、エレガントでもあり、ナイス。

昨年6月に、メーリング・リスト・メンバー用オープンハウス・パーティがあり、山の中の当ワイナリーへ伺ったのを懐かしく思い出しました。(左の写真は、その時のもので、オーナーのDavid & Marie Hirschご夫妻)
ここも、2008年の山火事の悪影響が少なからずあったようで、2008ヴィンテージのものはラインアップが極端に少ないです。
 
Kutch  Anderson Valley 2009
     ナイスな香り。森林を彷彿させるのは好みのタイプなのだが
  少々ボヤけた味わい。
"Falstaff" Sonoma Coast 2009
     ドライでミネラリー。とっつきにくい。もう少し待ちたい。
"McDougall Ranch" Sonoma Coast 2009

ニューヨーク在住のトレーダーだったJamie Kutch 氏が高額サラリーを投げ打ってワイン造りの道に飛び込んだというのが、当ワイナリーの「ストーリー」。ジェイミーご自身は、人当たりの良い快活な男性。ロバート・パーカーJr氏から高評価を受けて以来、入手困難なワインになっております。生産量が少ないので、メーリング・リストに載せるのもウエイト・リストになってしまっていますが、それでもワインの料金を40ドル代に抑えているのは素晴らしいと思います。
 
Lioco "Hirsch Vineyard" Sonoma Coast 2009
    
earthy、ミント。ハーシュ・ヴィンヤードの良さが出ている。
"Michaud Vineyard" Chalone 2007
     甘いイチゴ。
 
初めて口にするワイン。
あちこちのAVAを代表するヴィンヤードからフルーツを買って造っておられます。
Littorai "The Pivot Vineyard" Sonoma Coast 2009
"Savoy Vineyard" Anderson Valley 2009
"Savoy Vineyard" Anderson Valley 2007 ★

アンダーソン・ヴァレーの2008年ヴィンテージに「ダメ出し」をして、一切ボトリングしないことにしたのは、このリトライが最初でした。
で、2007年ヴィンテージを早めにリリースしたとのことですが、2009年ものが市場に出回るようになったこの時期に、Savoyの2007年を試飲できたのは嬉しいことでした。
素敵なピノ・ノワールでした。
 
Miura Vineyards "Garys' Vineyard" Santa Lucia Highlands 2008
      大地の香り。
"Pisoni Vineyard" Santa Lucia Highlands 2008
      しっかりときれいな酸が素晴らしい
"Silacci Vineyard-Matador" Monterey County 2008
      ダーク・ベリーの芳しい香り。
 
久しぶりに口にしました。で、やっぱり美味しいなあと嬉しく思いました。
今時、ウエブサイトも持っていないワイナリーなんて、そうそうありません(笑)
 
Mount Eden
"Estate" Santa Cruz Mountains 2009 ★

      とてもフレッシュ。若々しくキュートなワイン。
"Estate" Santa Cruz Mountains 2007
      ・・・・・
"Estate" Santa Cruz Mountains  2005
      深い森林の香り、
earthy、心地よい酸。
 
少し前のサンタ・クルーズ・マウンテン地区のピノ・ノワールは、やたらスモーキーでドライで、口の中がシュワシュワ乾ききってしまうかのようでしたが、大分と変わってきたのだなあと思わされました。
Native9 "Rancho Ontiveros Vineyard" Santa Maria Valley 2008
"Rancho Ontiveros Vineyard" Santa Maria Valley 2009
派手なところのまったくない、家族経営で地味にボチボチやってます、といった「ほのぼの」感漂うワインだと思います。
悪く言えば、垢抜けない・田舎っぽいワインということになりますが、これはこれで良いと思います。
Peay

 Sonoma Coast 2009
"Ama Estate" Sonoma Coast 2009
"Pomarium Estate" Sonoma Coast 2009

メーリング・リスト・メンバーになっているので、毎年少なくとも6本は飲んでいるのではないかと思います。もともと、ピノ・ノワールが好きで当ワイナリーのメンバーになったのですが、最近は赤ならシラーの方が面白く感じています。
試飲はしなかったけれど、せっかくだから写真をと、ワインメーカーのヴァネッサと一緒に撮ってもらったら、まったく知らない男性が間に写っていて、ちょっと憮然。
 
Sandhi

"ELV Tempest" Santa Rita HIlls 2009
    
Meatyな香りだが、味わい極めてエレガント。

このイベントの主催者の一人、Rajat Parr氏が立ち上げたブランド。この2009年がデビュー作。「Sandhi」というのはサンスクリット語で「アライアンス」「コラボレーション」という意味だそうで、大地と葡萄の木々、そしてそれらを取り巻く人間との連携、コラボレーションがワインを生み出すという背景を表しています。
Parr氏は、ワイン・ディレクターとして、「RN74」で出すピノ・ノワールはアルコール度数が14度以下のものに限るというルールを打ち出し、それが一時ワイン愛好家の間で物議を醸しました。
目の前のParr氏は、クリクリっとして、偉ぶったところのない紳士です。
 
Soliste "L'Esperance", Sonoma Coast 2007
     
森のイメージの香りながら、味わいはイチゴ・ジャム
  
もう少し酸が欲しい。
"L'Esperance" Sonoma Coast 2008
      甘さが抑えられて、より
earthy。ナイス。

初めて口にするワイン。2007年のものは、ソノマ・コーストと言うより、Russian River Valleyのイメージでしたが、2008年はよりソノマ・コーストっぽい感じがしました。ただ、150弱ケースの生産量ということで、1本$69にもなっており、ちょっと手を出しにくいレンジであります。
 
Tyler

"Clos Pepe" Santa Rita Hills 2008 ★
     
クロ・ペペ復か〜つ!と喝采したくなるワイン
"Presidio" Santa Barbara County 2008
   ポプリの香り。穏やか。
"Bien Nacido N. Block-Old Vines" Santa Maria Valley 2009★
      1973年に植えられたという古樹からのフルーツは、
   成熟した落ち着き感がありながら、ダーク・チェリーと
   スパイス風味が相まって、フレッシュで素敵なピノ・ノワール
  になっている。
     
南のピノ・ノワールは、どうしてこうも「良く言えば素朴、悪く言えば田舎っぽい」のだろう、と悶々としていたところにTyler 登場で、左3種のワインを試飲して、思わず「これだ〜!」と嬉しくなりました。
Clos PepeBien Nacido も昔、飲み倒した畑なだけに、キリっとした、そして翳のあるピノ・ノワールに再び出会えたことが、この日の何よりの収穫でした。でも、Old Vinesのワインの生産量がたったの94ケースって・・・。
(写真は、オーナー&ワインメーカーのJustin Willett氏)
Wind Gap


 
"Woodruff Vineyard" Santa Cruz Mountains 2008 ★
     
ワイルド・マッシュルーム、きれいな酸。ナイス。
"Woodruff Vineyard" Santa Cruz Mountains 2009
 Sonoma Coast 2009 ★

      earthy, vivid, vibrant acidity
ナイス。

初めて口にしたワイン。最初に「ソノマ・コースト2009」を頂いた時、新鮮で躍動感溢れたピノ・ノワールにいたく感動しました。そして、サンタ・クルーズ・マウンテンの単一畑ものが見せた、ダーク・フルーツとマッシュルーム、そして酸との絶妙なバランスに、うっとり。アルコール度 12.5というのが驚き。
オーナー&ワインメーカーご夫妻のお顔に見覚えがあったので、イベントのブックレットを見直してみたら、PAX Pax Mahle 夫妻じゃあないですか。いやあ、Paxさんが造るサンタ・クルーズ・マウンテンのピノ・ノワールに出会えたなんて、う、う、嬉しい。
 

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