Vine Cliff Winery
ヴァイン・クリフ・ワイナリー 【その昔の話】
ヴァイン・クリフ・ワイナリーは、ナパ・ヴァレーを南北に縦断する主要幹線29号線と平行して走る「シルベラード・
トレイル」沿いにありますが、アポイントメント制のため、道路沿いの門は通常固く閉ざされています。
比較的、新しいワイナリー(といっても、10年以上はたっています)という印象があるかもしれませんが、
現在のオーナー、Sweeney夫妻が当ワイナリーを買われるまで、意外に長い歴史が流れています。
1830年代、ソノマのダウンタウン一帯を統治していたメキシコ政府のドン、ヴァレーホ将軍は、
1836年にノース・カロライナ州からやってきた開拓者、George
Calvert Yount氏に、
ナパ・ヴァレーの12000エーカーの土地を与えました。
これによりYount氏は、ナパ・ヴァレーに初めて居ついたアメリカ人ということになり、同時に、
ヴァレーホ氏から譲り受けた木を植えたことにより、ナパ・ヴァレーに初めて葡萄の木を植樹した人という
重要人物として、歴史に名を残しています。
このYount氏の功績を称えて、彼の死後2年目に、この街が「Yountville」(Yountさんの村)という名に
なったわけです。
で、ヴァイン・クリフ・ワイナリーのある土地は、もともと、このYount氏が所有していたものだったのでした。
1870年、ヨント氏死後5年目に、George Burrage氏&Thomas
Tucker氏が、ここを購入し、ワイン造りを
始めました。このお二人の時代、石造りの重厚なワイナリー施設を建てており、その当時ではヴァレー内で
最大規模のワイナリーになっていたようです。
斜面をくりぬいて造られたワイナリーは4層にも及び、当然ながらナチュラルな「グラヴィティ・フロー」
(重力流動)システムが、そこにあったようです。
次のオーナーが活躍した1890年代が、ヴァイン・クリフとして最も華やかな時代だったようですが、1901年に
そのオーナーJohn Fry氏が亡くなられたあと、フィロキセラにより大半の木々がやられてしまったのと、禁酒法が施行されたこと、
そして、このあたり一帯を襲った大火事などにより、いわゆる「ゴースト・ワイナリー」となってしまいました。
一時はナパ・ヴァレーにその名を轟かせていた立派な石造りのワイナリーが、いつ、何故、どのように朽ち果ててしまったのか、
その記録はどこにも残っていないようです。
現在のオーナー、スイーニー夫妻が1985年にここを買われた時には、その石造りワイナリーの一部と
トンネルが、かろうじて残っており、今でも、その残影(?)を目にすることができます。
ちょっとした感慨を覚えます。
【ツアー&テイスティング】
道路沿いの門のそばにあるインターフォンで声をかけ、ぎぎぎ〜と開くゲートを通り過ぎると、
道がくねくね奥(上)の方まで伸びています。テイスティング・ルーム、ワイナリー、ケーブのある場所は、
ヴァレー・フロアーよりも結構上になっています。
斜面に並ぶ葡萄の木々に囲まれ、ここだけ時間が止まっているかのように感じられます。
テイスティング・ルームでワインをテイストしたり、グラスを持って、2000年に完成したケーヴの中を見学
しに行ったりする間に、ワイナリーの歴史などを聞きます。
ケーヴの中では赤ワインが寝かされていますが、一部ホール・スペースが設えられており、美しくも怪しげな
照明により、厳かな食事の場となります。
20名前後の、クラシック生演奏を伴うディナー・ファンクションなど、とても素敵そうです。
久しぶりに訪れたヴァイン・クリフ・ワイナリー、その日のテイスティングは以下でした。
シャルドネ、Proprietress
Reserve 2003
$60.00 ★
メルロー、 Oakville, 2003
$50.00 ★
カベルネ・ソーヴィニョン、Oakville,
2004
$75.00
カベルネ・ソーヴィニョン、Private Stock
16 Rows 2003 $135.00
★
現在のヴァイン・クリフ・ワイナリーのワインは、全て当ワイナリー所有のヴィンヤードのフルーツで
造られており、「サステイナブル農法」により葡萄が育てられています。
ワイナリーがあるオークヴィル地区の土地には、カベルネ、メルロー、少量のジンファンデルが、そして
カーネロス地区の畑では、シャルドネが栽培されています。
今回テイストしたもののうち、★印のあるワインは、ワイナリーでしか販売されていないものです。
レストランなどで見かけるのは、「ナパ・ヴァレー」と表記があるものが大半で、レストランに流通しているものか、
ワイナリーでしか販売されていないものかを見分けるのは、ラベルの下の線。
赤いラインが入っているのが、一般に流通されているものです。(右上写真)
ヴァイン・クリフは基本的に、カベルネ・ソーヴィニョンで有名なのですが、今回上記4種をテイストして、
シャルドネとメルローの素敵さに、嬉しい驚きを覚えました。
シャルドネは、最初の一口で思わず、そこにいた全員が「うわ、美味し〜〜い」と声をあげてしまったほど、
絶妙のバランスを持つものでした。ML100%、例年より半年も長い樽熟成にも関わらず、オーク度がギリギリ
抑えられていて、そしてエレガントな酸味がノドを通り過ぎていきます。
メルローは、中途半端な「よくわからない」柔らかいメルローではなく、しっかり骨太な「シリアス」なメルローです。
380ケースほどしか造られていないせいもあり、お値段がかなり高めで、買って帰ろうかどうか、かなり迷いました。
久しぶりに口にした、「素敵な」メルローでした。
テイストしていると、たまたまワインメーカーのRex
Smith氏が入ってこられ、あまり忙しそうでなかったのを
良いことに、ぺちゃくちゃおしゃべりさせてもらいました。ワイナリーのウエブサイトに載っている写真と、
あまりに違っており、「ヒゲがない方が、断然若々しくてハンサムですよ」と思わず言いそうになりました。(言わない)
キュートなニュージーランドというか「ダウン・アンダー」訛りの英語で、とても気さくで明るいナイス・ガイ。
ロバート・パーカーJR氏には取り上げられないし、2003年ヴィンテージを「X」にしているワイン・スペクテータ誌の
James Laube氏にいたっては、ここのカベルネ、ナパ・ヴァレー2003が「67」なんていう、とんでもなく低い点数を
つけられていたりして、ヴァイン・クリフは少々地味な存在ではありますが、「しっかりした」ワインの造り手として、
その存在を覚えておくべきワイナリーだと思います。
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