ヴェンギ

【ゴースト・ワイナリー】　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　画像をクリックしてご覧下さい。

                カリフォルニア・ワインの歴史は、１８００年代中頃～後半
                にかけて、ヨーロッパから多くの移民がこの地にやって
                きたことで、彩りが加わりました。
                潤沢な資金をもとにワイナリーを始めた人もいれば、
                畑作業から始めて、こつこつとお金を貯めて、
                ヴィンヤードを購入した人もいます。

                ところが、１９1９年に禁酒法が制定されてしまったがために、それまでの苦労が水の泡となり、
                手入れもされないまま、ほおっておかれた場所があります。
                今、「ゴースト・ワイナリー」と呼ばれているものの大半が、この背景を物語っているものです。

今回ご紹介する「Venge Vineyards」（ヴェンギ・ヴィンヤーズ）も、その「ゴースト・ワイナリー」
だった建物を復元させたワイナリーです。

                ハウエル・マウンテンのふもと、ＡＶＡで言うと「セント・
                ヘレナ」の北東端に位置する「Rossini Ranch」は、
                スイスからの移民、カルロ・ロッシーニによって耕された
                土地です。
                １８９１年には、石と木材を使用したシンプルなワイナリー
                まで建立したのですが、１９２９年の禁酒法により、出入り禁止の建物となってしまいました。

ほったらかしにされていた「ゴースト・ワイナリー」を買い取ったのが、ヴェンギ・ファミリー。
１９９９年になっていました。

                往時の輪郭とシンプルなデザインをそのまま大切に、石造りの部分を残し、あとを全面改装。
                建物後方の丘を利用し、７０００スクエアフィート（約６３０平方メートル）のケーヴを新たに
                造りました。

                このケーヴ増築の監督をしたのが、ヴェンギ・ファミリー
                の息子さんの方、Kirk Vengeさんです。
                生まれも育ちもナパ・ヴァレーという、生粋のワイン・カン
                トリー・ボーイ（・・勝手に新語を作ってますが）である
                カークは、お父様　Nils Venge氏がワインメーカー
                だということもあり、いつもワインが身近にあった環境の中、
                自身もワインメーカーへの道を選んでいます。

                お父様のニルズは、現在、Saddleback Cellarsのオーナー兼ワインメーカーですが、
                彼の名前をどこかで聞いたことがあるぞ、と思われたなら、かなり昔からカリフォルニア・ワインを
                愛飲しておられるに違いありません。
                １９８０年代後半、ニルズは Grothでワインメーカーをしておられ、その当時手がけた
                １９８５年ヴィンテージのカベルネ・ソーヴィニョンは、ロバート・パーカーＪｒ氏から、
                初めてアメリカ・ワインで１００点満点をもらっています。

                そういう父にして、この息子あり、と申しますか、ご両人
                ともＵＣデイビス校を卒業されているという純粋さ。
                カークは、しかも葡萄栽培学と醸造学のダブル・メジャー
                で卒業していますから、環境だけでなく、彼自身のその
                努力、「この道！」と決めて没頭する、そのまっすぐさが
                素晴らしいと思うのであります。

                カークは、大学を卒業後、Mummで働きながら、ニュージーランドに渡り、ワイン造りを
                手がけました。何故、ニュージーランド？ピノ・ノワールに興味があったのですか？と
                聞くと、「何故なんだろう。。。スペイン語が話せるから、スペインに行っても良かったんだ
                けど、敢て理由を探すとすると、カリフォルニアでの収穫時期を逃したくなかったからかな。
                ニュージーランドは季節が逆だから、その時は、あっちとこっちで、１年に３回、収穫をしたよ（笑）」

                ツアーを申し込むと、カルロ・ロッシーニ当時の歴史、
                敷地の説明を受けながら、ケーヴの中へと進みます。　
                ケーヴのために掘り起こした時のオリジナルの岩盤を
                残した空間に、最初のテイスティング用ワイン（サンジョ
                ベーゼ）が置かれています。

次に、「今まだ作りたてだけど、ここがライブラリー・

                セラーになるんですよ」と言う空間で、２本目の
                テイスティング（シラー）。
                発酵タンクが並ぶ空間に移動し、空になっているタンク
                の中から、３本目のワインが・・・。
                （スカウト・オーナー・ジンファンデル）

                そして、建物の２階にあるサロンへと進み、ここで、
                メルロー、カベルネ・ソーヴィニョン、
                レート・ハーベスト・ジンファンデルのテイスティング。
                全部で６種のテイスティングです。

                太陽が燦々とふりそそぐ、素晴らしいお天気の日

                でしたので、「ゴースト・ワイナリー」の「ゴ」の字も
                感じない明るい雰囲気の中でのツアー＆テイステ
                ィングでした。
                サロンでは、チーズやクラッカーも頂けて、テラスから
                のヴィンヤードの静かな眺めを楽しみながら、
                ゆったりテイスティングができます。

畑での作業にも従事しているカークは、毎朝あちこちの
ヴィンヤードを回っており、加えてワインメーカーとして

                複数のプロデューサーのワイン造りにも参画していて、
                なかなか忙しい毎日です。
                ３０歳になるかならないかの若い世代が、これからの
                ワイン・カントリーを支えていくわけで、まさに
                「次世代」へのシフトの時期です。

                まったくえらそうな感じのない、本当にワイン造りを好きで
                やっている「ナイス・ガイ」なカーク。
                彼の名前、ちゃんと覚えておきたいものです。数年後、あっと言うことになるかもしれません。

ヴェンギ・ヴィンヤーズ Venge Vineyards
住所	424 Crystal Springs Rd, St. Helena
電話番号	(707) 967.1008
ウエブサイト	www.vengevineyards.com
訪問	事前予約要。空いていれば、いつでも可能。テイスティング代、１０ドル。クリスチャン（下写真）か、カークが案内してくださいます。
メモ	いつもすぐに売り切れる白ブレンド含めて、７種類の　ワインを出していますが、それでも生産量は、　合計２２００ケースという少量生産です。　そのせいか、どれも少しずつ、高めの値段設定に　なっているのが残念。　個人的には、Mt.Veederと Dry Creekの畑からの　フルーツをブレンドした２００２年シラー（California）　が、個性的で好きでした。（３２ドル）　カベルネ・ソーヴィニョンは、ナパ・ヴァレーの中でも一番リリースが遅い　うちの中に入ると思われますが、今現在でも２０００年ものです。　２００１年ヴィンテージは、なんと来年２００６年１月のリリースになるとの　ことで、一体どんなものになるのか、かなり楽しみです。　２０００年のカベルネは、成熟しおえた感じの色でありながら、まだまだ　フレッシュで、パワフルでした。（９５ドル）・・・高くて買えない。残念。