Spottswoode Estate Vineyard & WInery スポッツウッド・
エステート・ヴィンヤード&ワイナリー
【歴史との繋がり】
京都や奈良の神社仏閣を見て周る時、ただ単に、その建築物の素晴らしさ、季節折々の花の美しさを愛でるの
ではなく、そこの背景にある歴史、関わってきた過去の人々を知ると、より一層、そこに愛着を覚えるものだと
思います。
ワインもそれと同じで、そのワイナリー及びヴィンヤードの歴史、関わってきた人の歴史を知ると、より一層、
味わい深くなるというもの。
今回ご紹介するスポッツウッドは、スポッツウッド・ワイナリーとしての歴史は25年と、それほど深いものでは
ありませんが、エステートの歴史は1800年代後半から綿々と繋がっており、その歴史を大切に、未来に
引き継いでいきたいという情熱に満ちたワイナリーであると言えます。
詳しい歴史は、当ワイナリーのウエブサイトをご覧いただくとして、簡単な年代表をここに記しておきます。
1882年 ドイツからの移民 George
Shonenwald氏が、セント・ヘレナの一角、17エーカーの葡萄畑と、31エーカーの土地を購入。
夏の間の別荘として使う目的で、ここを「エスメラルダ」(スペイン語で「エメラルド」の意)と名づける。
1884年 エスメラルダの一部の土地を、Frank Kraft氏に売却。クラフト氏は、ここにヴィクトリアン調の家と、石造りのワイン・セラーを
建て、クラフト・ワイナリーを設立。
1885年 ショーネンワールド氏、敷地内に、クイーン・アン・スタイルを一部取り入れた、ゴージャスなヴィクトリアン・ハウスを建てる。
庭には、パームツリー、オーク、オリーヴ、杉、ウオルナッツなどの木々をふんだんに植える。
1906年 奥様が亡くなられて、ショーネンワールド氏は、エスメラルダを
Joseph Bliss氏に売却。
ブリス氏は、ここを「ストーンハースト」と名づける。(hurst
という古語は、森という意味を持ちます)
1908年 フリス氏、Dr. George Allen氏にエステートを売却。
アレン氏は、庭に植えられていた4本のインディアン・ツリー「linden」に因んで、当エステートの名前を「Lyndenhurst」に変更。
ハドソン通り沿いに石塀を設け、入り口に「Lyndenhurst」と彫られた鉄門をつけた。(現在は、これが「Spottswoode」に
なっている)
1910年 アレン氏、リンデンハーストを、Albert Spotts一家に売却。スポッツ夫人が、亡くなったご主人の思い出に、と、
このエステート名を「Spottswoode」に変更。
このあと禁酒法時代を経て、スポッツ夫人は、当エステートを姪
Florence Holmesに贈与。
エステート内ヴィンヤードから収穫された葡萄は、セント・ヘレナ・ワイン・コーポラティヴに売られていた。
1972年 Dr Jack & Mary Novak夫妻が、当エステートを購入。すぐに隣接する15エーカー分の土地を購入し、合計46エーカーの
エステートとなる。
1982年 メアリー・ノヴァくさん、正式にスポッツウッド・ワイナリー設立。初のカベルネ・ソーヴィニョンを生産。
1989年 クラフト氏のプロパティーを購入。石造りのワイナリーはバレル・ルームに、ヴィクトリアン・ハウスはオフィスに使用すべく
改築を始め、1992年に完成。
敷地のオーナーが変わるたびに、エステート名が変わってきたわけで、ワイン名、エチケットの絵柄が、これらの歴史と繋がり、
ワインを頂きつつ、100年以上も昔にタイム・スリップするような気持ちになるのです。
【ファミリー・ビジネス】
もうひとつ、スポッツウッド・ワイナリーが数多ある他ワイナリーと一線を画しているのが、ファミリー・ビジネスである
という点です。1977年にご主人が突然亡くなられたあと、メアリー・ノヴァクさんは残された家族全員、ナパに
留まることを決意し、ご夫妻の夢だったワイナリー設立に向け、尽力されました。そういう母親を見て育った娘さん達。
お一人は、1987年からスポッツウッド・ワイナリーのプレジデント、もう一人は、92年からナショナル・マーケ
ティング・ディレクターに就かれていて、スポッツウッド・ワイナリーの継続・発展に力を注がれています。
ワイナリーを興しても、あとを継いでくれる人がいなければ、そのワイナリーは別の人の手に渡るか、消滅してしまうかであり、
ファミリー内で次世代に繋いでいくことは、たやすいようでいて、実に難しいものです。
節目節目に、優秀なワインメーカーを雇ってこられたスポッツウッド、今後も長きに渡って、ファミリー・ビジネスを続けていかれることを
お祈りする次第です。
【エステート・ツアー&テイスティング】
前置きが長くなりましたが、ここからツアー&テイスティングについて。
ツアーはまず、上記歴史の最後、92年に改築完成したヴィクトリアン・ハウスの中にある一室で始まります。
注がれたのは、2007
ソーヴィニョン・ブラン。
2005年ヴィンテージあたりまでは、エステート・フルーツと、ナパ・カウンティ内の購入フルーツで造られていましたが、
2006年ヴィンテージから、ソノマ・カウンティの購入フルーツがブレンドされています。
エステート内のソーヴィニョン・ブランは、大半がフィロキセラでやられてしまったため、現在、エステートからは、
少量のソーヴィニョン・ブランと、ソーヴィニョン・マスク(Musque)が使われており、残り大半は、
ソノマのFarina Vineyard、カーネロスのHyde
Vineyard、カリストガのTafanelli
Vineyard (ここからのセミヨンも
少し入っている)からのソーヴィニョン・ブランが使われています。
フルーツの出所の違いからなのでしょうか、私がイメージしてきたスポッツウッドのソーヴィニョン・ブランとは、
何かが違っているようで、その違和感が何なのか、最後までわかりませんでした。
美味しく頂いたのは頂いたのですが・・・。
そして、グラスを持ったまま外に出て、ワイナリー施設、セラーを見て周ります。
ソーヴィニョン・ブラン専用のスペースには、今やナパ・カウンティ内ではほとんど目にすることのない、
卵型コンクリート・タンクが。
スポッツウッドでは今でも、このコンクリート・タンクで、ソーヴィニョン・ブランの一部を発酵させているそうです。
そのあと注がれたのが、2005
Lyndenhurst
カベルネ・ソーヴィニョン。
前記歴史をご覧いただくと、この名前の由来がおわかりいただけるでしょう。
エチケットにある絵は、禁酒法制定以前のクラフト・ワイナリー時代の様子です。
その絵が描かれたワインを、現在のワイナリーの前で頂くのは、これまた感慨深いものがあるというものです。
由来は古いけれど、ワインそのものは、樹齢の若い木からのフルーツをメインに造られています。
ラム・チョップが食べたい・・。
そしてツアーは、通りを渡ってハドソン・ストリートへと続きます。
「CCOF」(California
Certified Organic Farmers)のサインが掲げられたヴィンヤードを右手に、我々は、
「エスメラルダ」から「ストーンハースト」、「リンデンハースト」、「スポッツウッド」と名前が変わってきたホーム&
ガーデンに向かいます。 鉄柵の向こうには、たくさんの木々、草花に囲まれたお庭と豪邸。
プールサイドからは、マヤカマス山脈、スプリング・マウンテンの山並みを奥に、一面広がるヴィンヤードの景色を堪能できます。
ここで注がれたのが、2005
Spottswoods
エステート・カベルネ・ソーヴィニョン。
これこそが本当の「エステート・テイスティング」であります。
春の日差し、マスタード・フワラーの鮮やかな色、そして澄んだ青空、清清しい空気。
これらと一緒に頂くカベルネ・ソーヴィニョンは、どこまでも優雅で、洗練されています。
それでいて、芯の強さみたいなものも感じられ、頭の中を「アタックNo.1」の主題歌が流れました。
♪苦しくったってぇ、悲しくったってぇ、ワインの中では平気、なの ♪ 意味不明。
スポッツウッドのワインがお好きな方は、是非とも、このエステート・ツアー&テイスティングに一度は
参加されることをお薦めします。
ワインが造られる、その環境を実際に目にすると、もっともっとスポッツウッドのワインが好きになると思います。
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