Kelham Vineyards ケルハム・ヴィンヤーズ
【オークヴィルの優良ご近所さん】
ナパ・ヴァレーを南北に縦走する「ハイウエイ29号線」と「シルベラード・トレイル」、この2本をつなぐ
東西の通りが何本かありますが、そのうちのひとつ、「ジンファンデル・レーン」は、セント・ヘレナの街の
南端近くに位置します。この通りに、最近になってやっと一応の目処がついて、一般にオープンとなった
ワイナリーが「Kelham Vineyards」です。
オーナーは、Rawson
& Susanna Kelhamご夫妻。
ツアー&テイスティングを申し込むと、奥様のスーザンさんが出迎えてくださいます。
とっても元気の良い、ファイト満々、闘志溢れる(?)レディです。
ご主人Rawsonさんは、オークヴィルに65エーカーのヴィンヤードを所有し、35年間に渡って良質の葡萄を
栽培してこられており、ダックホーン、ボーリュー、モンダヴィ、ケークブレッドといった有名ワイナリーに、
収穫物を提供しておられます。
そのオークヴィルの畑はマヤカマス山脈のすぐふもとにあり、丘の上にはハーラン・エステート、
北隣はMarthas Vineyard、オーパス・ワン、南隣は
Vine Hill Ranch、東隣はParadigm・・・と、
錚々たるご近所さん達です。
ヴィンヤードは65エーカーですが、土地そのものは125エーカーあり、ご夫妻はここにご自宅をお持ちで
いらっしゃいます。そして同じ場所にワイナリーを建設したかったのですが、もろもろの規制により、
その願い叶わず。1997年に、セント・ヘレナの「Shadow
Brook Winery」跡10エーカーを買い取り、
ここでのワイナリー建築に着手。98年から工事が始まり、ゆっくりゆっくりと作業は進み、3年後には
3エーカーにカベルネ・ソーヴィニョンが植えられました。
発酵施設、熟成施設もほぼ完成、大方の体裁は整ったと言えるでしょう。
現在では、オークヴィルの葡萄も全て、ここセント・ヘレナの施設に運びこまれ、ここで全プロセスを経ています。
ワイナリー施設がある場所と、所有ヴィンヤードがある場所とが違うため、ボトルに「エステート」とつけることができませんが、
自分たちの所有畑のフルーツで造っているという点では、間違いなくエステートものです。
【意図せずに、家族経営ワイナリーに】
「Kelham」というブランド名でワインを出し始めた数年前は、当時のワインメーカーのラストネームと
合わせて「Kelham-McLean」という名前を使っていました。
確か99年ヴィンテージあたりから、単独「Kelham」ラベルになったと記憶しています。
息子さん二人がワインメーカーになられたためです。
母親であるスーザンさんが、ナパ育ちの息子さん達に望んだのは、ワイン業界以外の世界に
進んでもらうことでした。その希望は聞き入れられていたと最初は思っていました。
長男は建築、次男はホテル・レストラン経営をメジャーに、大学を卒業したからです。
と〜ころが、ところが、二人揃って「家族経営のワイナリー」を興したいと願うに至り、現在は二人で
ワインメーカーをやっているという次第。
兄弟が同じ場所にいて、うまく仲良くやっていけるケースは希少かと思うのですが、どうか仲違いせずに、
お母様をサポートしていってあげて頂きたいと思うばかり。
【テイスティング】
ツアー&テイスティングは、キュートに整えられたリビング・ルームから始まります。
天気が良ければ、敷地内のヴィンヤードに足を運んだり、100%完成後は発酵施設、
熟成施設も見学させてもらえることでしょう。
私が訪れた日は、この春典型の雨の日でしたので、一歩もリビング・ルームから外に出ず、
暖炉の火が暖かい部屋の中でお話を伺い、テイスティングをしました。
@ソーヴェニョン・ブラン
2003
オークヴィルのヴィンヤード、樹齢30年前後の木から収穫されたフルーツ。二次発酵をブロック。
Aセント・ヘレナ、カベルネ・ソーヴィニョン 2002
オークヴィルではなく、セント・ヘレナの敷地内で育ったカベルネを使用。
オークヴィルのフルーツと違って、軽めで飲みやすいので、「パーティ・ワイン」と位置づけ、マグナム・サイズでのみ販売。
確かに大変飲みやすく、外は雨だというのに、バーベキュー気分。くいくいとイケてしまいます。
01年ヴィンテージから、世界的に有名なコンテンポラリー・アートのGerald
Puvis氏作成ラベルが使われており、
この作品を眺めるだけでも、価値あり。
Bメルロー 01
オークヴィルのヴィンヤードから収穫されるメルローは、その一部をダックホーンに卸しています。
毎年、3〜5%ほどのカベルネ・ソーヴィニョンをブレンドし、よりしっかりした、フルボディさを加えています。
フルーツの芳しい香り、丸い柔らかいテキスチャー、す〜〜と滑らかなフィニッシュ・・と、
メルローの教科書のようなワイン。
Cカベルネ・ソーヴィニョン 2000
& 2001
まず2001年を、そしてそのあとに2000年を頂きました。
年数が1年長い分、2000年ものは、より丸い印象がありましたが、個人的には2001年の「はっきりした」味わいが
好みでした。酸味があって、時間がたっても飽きの来ないカベルネが2001年でした。
Dカベルネ・ソーヴィニョン・リザーヴ
2001
オークヴィルの畑の中でも、もっともヒルサイド寄りにあるリザーブ用ブロック100%のカベルネ。
申し訳ないけれど、これはグラスから立ち上る香りだけで、もう「これ以上何も要りません」と言いたくなる
極上品でした。 深くもフレッシュなダーク・チェリーのアロマ、エレガントでありながら、
ちょっとジェントルマンっぽい葉巻みたいな風味、口にするたびに、いろいろ出てくる味わい。
$75という値段はちょっと高いかなあと思いましたが、記念に1本購入。
スーザンさんは、とても熱心にテイスティングのレクチャーをしてくださいます。
テイスト・ディヴェロップメント(舌の上での感覚について)や、ヴィンテージによる違いについてだとか、
グラスのことだとか、彼女なりのセオリーを聞くことができます。
ナパ・ヴァレー内においては、なかなかオーナー一家のメンバーが、テイスティングやツアーに出てくることがありませんので、
(ほとんど、それ専門のスタッフを雇って任せています)、ここは貴重な存在です。 |