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Freeman Vineyard & Winery          フリーマン・ヴィンヤード&ワイナリー

ワインを愛するお二人が辿った道】        

フリーマン・ヴィンヤード&ワイナリーは、Ken Freemanさん、奥様のAkiko Freemanさんがオーナー、
そしてワインメーカーにテスタロッサ時代を経て、ピノ・ノワールの造り手第一人者として知名度高い
Ed Kurtzman
氏を擁しての珠玉のワイナリーです。

東京生まれ、東京育ちのAkikoさんについて、少しお話しておきましょう。
Akikoさんがアメリカに来られたのは、大学1回生の時、交換留学生としてニューヨークに来られました。
当初は、1〜2年ほどで帰国される予定が、勉強も面白く、アメリカでの学生生活も楽しかったため、卒業するまで
ニューヨークに留まることになりました。この学生時代に、ご主人のKenさんと出会っておられます。
彼女のメジャーは美術史で、特にイタリア・ルネッサンス時代を専門としておられ、これを極めるべく、西海岸の
名門、スタンフォード大学の大学院に進まれました。す、す、すごいです。スタンフォードの大学院で、
アート・ヒストリーです。
のちに、ニューヨークのメトロポリタン美術館で、「Art Appreciation」をテーマにしたクラスで講師を勤められた
Akiko
さんは、シカゴの大学院を卒業して仕事に就かれていたKenさんと結婚。彼の転勤に伴って、香港、シンガ
ポール、インドネシアというアジア諸国で4年間、生活されています。

サンフランシスコでPrivate-Equity Bankerのポジションに おられるKenさんは、ニューヨーク近郊育ち。
もともとはビール派だったとのことですが、グルメなご両親のもとで育ったので素地は充分あったと見受けられ、
ワインの世界を知ってからは、ずぶずぶずぶとハマりこんでしまわれたようです。
一方、Akikoさんはと言うと、お父様が大のブルゴーニュ・ワイン好きであられ、小さい頃からちょっぴりずつワインを味わっておられた
とのこと。つまり、ピノ・ノワールのテイスト歴というものがあるとするならば、相当のキャリアであるということです。
今の時代でこそ、両親が晩酌にワインを楽しむということは、日本においてもさほど珍しいことではなくなっているようですが、
20〜30年前の頃、ごく自然に、ごく当たり前にワインが食卓を飾るという家庭の数は、本当に少数だったと思います。

仕事柄、日頃、世界中を飛び回っておられるKenさんは、Akikoさんにとって「亭主、元気で留守が良い」の見本のようですが、
サンフランシスコの家を守り、フルタイムでフリーマン・ワイナリーの経営に携わっている彼女は、従って、ワインメーキングにも
積極的に関わっています。
実に実に華奢なAkikoさん、力仕事は男性にお任せするほかありませんが、体力・持久力は負けていないとお見受けしました。
そして、小さい頃からワインに慣れ親しんできた故の繊細なパレット、これが彼女のパワー・ポイントだと思います。

ピノ・ノワールを求めて】        

北カリフォルニアに住まいを構えられたKenさん&Akikoさんは、当然のことながら、ワインカントリーに足繁く
通われ、各種テイスティング・イベントにも積極的に参加され、ワイナリー関係者との交流もどんどん増やして
いかれました。冷涼な土地で造られるピノ・ノワール、ブルゴーニュ・スタイルのピノ・ノワールをことのほか
愛されていたお二人が、自分達のワイナリーを持ち、自分達でピノ・ノワールを造るという目標を設定されたのも、
ごく自然な流れだったと思われます。

それでも、いざ場所探しとなると、そうは簡単にいきませんでした。ピノ・ノワールの産地として優良な地域を、
それこそ南はサンタ・バーバラ近辺から、北はメンドシーノ近郊まで、あらゆる所を当たりましたが「ここ!」と
いう場所に出会うことなく、数年が過ぎたそうです。
もうダメなのかもしれないと諦めかけていた矢先、ネットサーフィングをしていたKenさんが、「ワイナリー付き
スモール・ハウス@セバストポール」の広告を見つけられたのです。
「ワイナリーがある小さな家」って、どんなものなのだろうと半信半疑でそこを訪ねられたお二人。
そこには、4エーカーの土地とボッロボロの納屋がありました。

セバストポールの中心(ダウンタウン)から、さらに車で10分ほど北西に入っていった所にあるその土地は、
太平洋岸まで約1.6キロ、朝には霧が寒流の太平洋から流れ込み、日中には燦燦と太陽の光が差し込み
ますが、それでもナパ・ヴァレーや、ソノマ・カウンティのドライ・クリーク・ヴァレー、アレキサンダー・ヴァレー地区
よりも数段、涼しい所です。
常に何本か群れになって育つレッドウッドや、アカシアの木々に囲まれた土地は、その気候、静けさ、
こじんまりさなどにおいて、お二人の理想に近いものだったことでしょう。

ワイナリー、ケーヴ、そしてエステート・ヴィンヤード

2001年にここを購入し、朽ち果てかけていた納屋を大改装して、ワイナリー施設を再装備。
購入当時は、年間2000ケースまでの生産ライセンスがあったのですが、親しい友人の方々に「うしろの丘に
ケーヴを造っては?」と提案され、2003年着工。同時に、年間6000ケースまでのライセンスを取得。
2004年に、そのケーヴも完成しました。

2002年ヴィンテージのものから、ここでワインを造り始めておられますが、初リリース2002年ものは500強
ケース。03年に1200ケース、04年に2500ケース、05年が3000ケース、そして06年ヴィンテージが
5000ケースとなっており、着実にその生産量を伸ばしてこられています。

購入当時は全4エーカーだった土地、その周囲に広がる土地をあと4エーカー買い足すことができ、ワイナリー横のスロープに
エステート・ヴィンヤードを開墾する予定となっています。もちろん、すべてピノ・ノワール。5〜6年先が楽しみです。

ヴィンヤードとワインメーカー

フリーマンのワインを造り始めた時、最初に手がけたフルーツが、Dutton Ranchと、Merry Edwardsさん
所有のエステート・ヴィンヤードからの各5トンでした。どの品種でもヴィンヤード・ソースは重要ですが、
特にピノ・ノワールの場合は、どこのフルーツであるかが、大きな違いを出します。
従って、ピノ・ノワールを栽培するヴィンヤードの持ち主は、大変な手間暇と労働力を投入して葡萄を育てて
おられますし、その分、そのフルーツを売る相手先選定にも神経を使われます。
その中にあって、初リリースのワインに、これら有名なヴィンヤードのフルーツを分けてもらえたのは素晴らしい
ことですし、KenさんとAkikoさんの情熱がどれほど強いものだったのかが、推し量られます。
(葡萄の栽培方に少々意見の食い違いが出てきたため、Dutton Ranchのフルーツについては、06年から
取り扱わなくなりました)

お二人の情熱は、フルーツ・ソースの獲得だけに留まらず、最高のワインメーカーを迎え入れたことにも反映されました。
テスタロッサ時代から、そこで造るピノ・ノワールがお二人の好みのタイプだったEd Kurtzmanさん。
ある年の「World of Pinot Noir」イベントで、テスタロッサ・ワイナリーの人から彼が辞めたという情報を得たお二人、
今こそチャンスと、早速Edさんにコンタクト、そして、フリーマンでのワイン造りに携わってもらうこととなりました。
在籍当時、直接の交流はなかったものの、KenさんとEdさんが、同じマサチューセッツ大学出身だったというのも、
不思議な巡り合わせでした。

「彼をワインメーカーとして迎え入れることができたのは、本当にラッキーでした。タンザーさん(註:「インターナショナル・ワイン・
セラー」を発行されているワイン評論家)が、『自分のワインへ注ぐのと同じくらいの情熱を、雇い主のワイン造りに注ぐことができる
ワインメーカーというのは本当に少ないけど、彼はその少数の中の一人だ』と言ってくださってます。」と、Akikoさん。

ピノ・ノワールに向ける愛情、情熱が生み出したトライアングル、彼らをもってして、高品質なワインが出来上がらないわけが
ありません。

バレル・テイスティング

フリーマンを訪れた日、Akikoさんは06年ヴィンテージの樽試飲を提供してくださいました。

1) Meredith Estate   Merry Edwards さんのエステート・ヴィンヤード
2) Rayhill Vineyard   少し前までGary Farrellワイナリーが購入していたフルーツ、現在はすべて
                 フリーマンに。
3) Thorn Ridge Vineyard  メレディス・エステートのワインがフェミニンで、レイヒルのものがより男性的
                 であるなら、このThorn Ridgeは、それらの良いとこ取りをしているかのようで、
                 個人的に最も感銘を受けました。
4) O'Connor Vineyard     当ヴィンヤードのシャルドネはPaul Hobbs、ピノ・ノワールはDumolで使われていました。
                    Russian Riverらしいearthyさタップリ。
5) Keefer Ranch      フリーマンのピノ・ノワールで、唯一の単一畑のものが、このヴィンヤードから。
                                     ワイナリーを立ち上げた当初、当ヴィンヤードに葡萄を売っていただくべくお願いに行ったものの、
                 どこの誰かもわからなかった彼らに、既に名声高かったキーファー・ランチの方が簡単にOKを出して
                 くれるはずもなく・・・。が、収穫・発酵・二次発酵を終えた02年ヴィンテージのバレル・サンプルを
                 持って再び訪れたところ、それをテイストされたMarcy Keeferさんが大層彼らのワインを気に入られ、
                 次の年からの提供を即決して頂けたそうです。記念すべき、ハンドシェイキングの一瞬だったのでした。

                 立ち上がる香りが、もうそれだけで堂々たる「ベテラン」ぶりを発揮しており、口内に広がるスパイシーさが
                 大変エレガント。シングル・ヴィンヤード・ピノ・ノワールにふさわしい、輝きあふれるワインでした。

バレル・テイスティングをした上記のほかに、2つのヴィンヤードとも契約を交わしており、ピノ・ノワールは全部で7ヴィンヤードの
フルーツを使っています。
それぞれ際立った特徴があるので、キーファー以外に単一畑ものを出すというのも、マーケティング上では「高く」売れるひとつの方法
なのかもしれません。が、フリーマンさんは「ソノマ・コースト」と「ロシアン・リヴァー・ヴァレー」という2箇所の「リージョナル・ブレンド」を
ワイナリーの特徴として前面に出していきたいという意向をお持ちです。
ソノマ・コーストのピノ・ノワール、ロシアン・リヴァー・ヴァレーのピノ・ノワール、それぞれの地域性が出た、「その土地らしい」ワインを
毎年味わうことができるのは、とても素晴らしいことだと思います。

05年ヴィンテージ・テイスティング

バレル・テイスティングのあとは、もうすぐ一般向けにリリースされる05年ヴィンテージのワインを
試飲させていただきました。

1) ピノ・ノワール ソノマ・コースト 05
2) ピノ・ノワール、キーファー・ランチ 05
3) ピノ・ノワール、Akiko's Cuvee 05

Akikoさん曰く「Cream of the crop」であるところの「Akiko's Cuvee」は、毎年、全7ヴィンヤードをテイストしたのち、
Kenさん、 Akikoさん、Edさんがそれぞれベストと思う配分でブレンドしたものをブラインド・テイスティングし、
最良のものをその年のブレンド・ワインとして出しています。
初ヴィンテージの2002年から05年ヴィンテージまで、ずっとAkikoさんブレンドが選ばれていますが、
将来誰のものがボトルとして出されるかは、もちろんわかりません。
もし、Kenさんブレンドが選ばれたら、ラベル名は「Ken's Special 」、Edさんブレンドが選ばれたら「Ed's Awesome」になるということ
だけ決まっているそうです。これも楽しみです。

いづれになろうとも、各ヴィンヤードを頻繁に回り、丁寧に育て収穫した最高品質のフルーツをブレンドしているのですから、
実に贅沢な、魅惑的なキュヴェであることは間違いありません。

アメリカ東海岸を皮切りに、アジア諸国での数年間に及ぶ生活、そして日本出身であるAkikoさんのバックグラウンドを顧みると、
アジアン・テイストやシーフードに合う品種として、高品質なピノ・ノワール造りを主眼とされていることは、大きくうなずけることであり、
実際にフリーマンのワインを頂くと、「ああ、XXが食べたい」「XXと合わせたら、さぞや素敵だろう」と、食べ物への想像が豊かに
なります。

サンフランシスコ及び北カリフォルニアの有名レストランなら、必ずフリーマンのワインがリストに入っているはずです。
まだお飲みになっていなければ、是非、一度注文してみてください。

                   

フリーマン・ヴィンヤード&ワイナリー
Freeman Vineyard & Winery

住所  Sebastopol
電話番号  (415) 831-4756   サンフランシスコ市内のオフィスに繋がります。
ウエブサイト  www.freemanwinery.com
訪問&メモ  
 ★一般公開されておりません。事前のアポイントメントが必要です。
  (週末・祝日はご遠慮ください)

 ★ワイナリーでは、ワイン購入ができません。事前にオンラインその他で購入された
  ワインをピックアップするのは可能。

 ★メモ:ワインのラベルは、Akikoさんの弟さん(アーティスト)の作品です。

 ★2004ヴィンテージから、Russian River Valley地区のフルーツのブレンドによる
  (Heintz Ranchのものが主体)シャルドネ「Ryo-fu(涼風)」が出されています。
  ワイナリー・ディナーを開く時、最初の白だけ他ワイナリーのものというのは
  どうも収まりが悪いというKenさんの提案により、造られ始めたそうです。
 

                                                                                                                                                 (2007年2月現在)
                      
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