Lynmar Winery
リンマー・ワイナリー 【ロシアン・リヴァー・ヴァレー】
ナパ・ヴァレー同様、ソノマ・カウンティにおいては、北へ上がれば上がるほど気温が高くなります。
もちろん太平洋側に近づくと、北に向かうほど気温は下がりますが、内陸部においては、「南=涼しい」「北=暑い」
という図式になります。
Russian Riverは、ソノマ・コースト、ロシアン・リヴァー・ヴァレー、グリーン・ヴァレー、アレキサンダー・ヴァレー
地区内を、うねうねと流れ、最終的に太平洋に出るのですが、寒流による冷風及び霧が、この川を「回廊」のように
して流れ込んできます。
すぐ北にあるドライ・クリーク・ヴァレーと比較すると、体感温度でさえ、その違いが明確です。
ドライ・クリーク・ヴァレーでは「暑〜〜い」と感じる日でも、ロシアン・リヴァー・ヴァレーあたりまで下がると、風がそよそよ吹いて
気持ちよく、時には肌寒いほど。
その冷涼さから、ロシアン・リヴァー・ヴァレー地区では高品質のシャルドネ、ピノ・ノワールが多く生産されています。
今回ご紹介するのは、当地を代表するワイナリーのひとつ「リンマー」です。
【別の分野で成功しないと・・・】
昔・昔から土地を持っていない限り、ワイン業界にまだ新しい人が「ワインを造りたいから、畑を持ちたい」なんて
考えても、資金的に非常に困難です。畑を無事購入できたとしても、それから植樹したりしていたら、収穫に値する
フルーツができるまで、大体5年かかりますし、5年で収穫できたとしても、それから発酵・熟成させるから、
赤ワインなら更にそこから2年。
つまり、およそ最低7年間、経費ばかりかかる状態を乗り越えていけるだけの資金的体力がないと、
難しいということになります。
1970年代から現在まで、ワイン・カントリーにはたくさんのワイナリーができましたが、ワイナリー施設、
テイスティング・ルーム施設が伴った立派な新進ワイナリーの大半は、何か別事業で一財産を築き上げた方によって
興されたものです。
今回ご紹介する「Lynmar Winery」も、オーナーのLynn
C.Fritz氏は、元「フリッツ・カンパニー」のチェアマンでありCEO。
一地方の小さな運輸書類作成会社だったものを、彼のリーダーシップにより、世界120カ国で1万人の従業員を抱える一大
ロジスティックス会社に成長させました。
その当時、1980年に現在のロケーションにあった「Quail
Hill」ヴィンヤードを購入、1990年に「リンマー・ワイナリー」を興しました。
フリッツ氏は2001年に、会社をUPSに売却。一線を退いた彼は、「フリッツ・インスティテュート」という、博愛主義に基づく救済組織
(humanitarian relief organization)をNPOとして設立、現在に至っています。
【名の知れたコンサルタントと、ワインメーカー】
90年からワイナリーは存在していましたが、一般公開はされておらず、かなり地味にワイン造りをしておられた
印象を受けます。リンマーの知名度が上がったのは、「ロシアン・リヴァー・ヴァレーのピノ・ノワール」という
「ブランド」認識が高まってきたのと時を同じくしたせいもありますが、コンサルティング・ワインメーカーに
Paul Hobbs氏を、ディレクター・オブ・ワインメーキングに、「Flowers」でヘッド・ワインメーカーをされて
いた Hugh Chappelle
氏を迎えたことが大きな要因になったと思います。
【素晴らしいセッティング】
テイスティング・ルームのあるホスピタリティー・センターは、金曜〜月曜にオープン。その他の日は、アポイントメント制です。
最近、名前が少々知れ渡ってきたせいか、週末はいつも何人か先客がいるのですが、それでもここはナパ・ヴァレーではなく、
ロシアン・リヴァー・ヴァレーですから、ナパ・ヴァレーのメジャーなワイナリーほどの混雑にはなりません。
ここが素晴らしいのは、そのテイスティングの方法です。
建物に入ると、ゆったり広々としたスペースにカウンターがあり、その奥に丘陵状になったヴィンヤードが広がり、
テラス席が、美しく、たっぷりと設置されています。
訪問者は、どこに座ってもOK。自分が気に入ったスポットに座ります。
すると、ワイナリーのスタッフがグラスとワインを運んできてくださり、テイスティングが始まります。
ちょっとしたラウンジです。
季節により出されるワインは変わってきますが、白2種、赤2種。
この4種類のワインが、それぞれ別々のグラスに注がれます。
1つのグラスで、ひと種類テイストしては、グラスを空にして次のワイン・・・というのが、ごくごく一般的な
テイスティングですが、ここは、飲み比べができるわけです。
特にもし、シャルドネが2種出てきたら、その違いがはっきりわかり、非常に興味深いテイスティングとなります。
Quail Hill
ヴィンヤードのフルーツ100%で造られたシャルドネと、ロシアン・リヴァー・ヴァレー内複数ヴィンヤードからの
フルーツのブレンドによるシャルドネ。どちらが良いというのではなく、どちらがより自分の好みに近いかを、発見していただきたい。
オーガニック、サステイナブルなヴィンヤード風景を目の前に、ゆったり腰を下ろしてグラスを傾ける・・・、
ワインカントリーにいるのだなあと実感できる瞬間です。
条例によりウエディングはできませんが、それ以外なら、会議、イベント、パーティー何でもござれです。
丘になっているヴィンヤードの中腹部分にケーヴが掘られており、15名程度なら、その中のライブラリーで
レセプションをすることも可能。
大きすぎず、小さすぎず、親密なパーティーをやるのには申し分ないサイズだと思います。
ロシアン・リヴァー・ヴァレー地区にお出かけの際は、是非、ここでゆっくりしてみてください。体がとろけます。
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