Chateau Montelena Winery
シャトー・モンテレーナ・ワイナリー
【ナパ・ヴァレーのほぼ北端】
サンフランシスコからの日帰りでナパ・ヴァレー巡りをすると、大抵の場合ヴァレーの中心より南で終始して
しまいます。ちょっと北まで上がっても、せいぜい、ベリンジャーあたりでUターンというパターンが多いようです。
南北を走る幹線道路、ハイウエイ29号線を北上していくと、ヴァレーの横幅(東西)が段々と狭まっていく様子が
見て取れますが、北へ上がるほど気温が高くなるという気候現象も、はっきりと実感することができます。
カリストガの街を通り過ぎて更に北上、ナパ・ヴァレーのほぼ北端に、「シャトー・モンテレーナ」があります。
ヨーロッパに比べて圧倒的に歴史の浅いカリフォルニア・ナパ・ヴァレー、ボルドー地方のように「シャトー」が名前につくワイナリーは、
片手で数えられるくらいしか存在しません。
その数少ない存在の中のひとつが、「シャトー・モンテレーナ」です。
【それなりに豊かな歴史】
ここの歴史は、1800年代後半に遡りますが、簡単にまとめてしまうと、こうなります。
@ 1882年に、カリフォルニア州最初の上院議員のおひとり、Alfred
L. Tubbs氏が、この土地
254エーカーを購入。ヴィンヤードとシャトーを造った。
★ワイナリーのある道は、彼の名前を取って「Tubbs Lane」となっています。
★Mount Saint Helena(セント・ヘレナ山)がヴィンヤードの向こうに見えますが、
この山の名称を短縮して「Montelena」と名づけられました。
A 1958年に、満州鉄道建設で財を成した中国系エンジニアのYort
Frank氏ご夫妻が、このプロパティを購入。
5エーカーの人口湖(池)と、中国風の庭園を加えた。が、ワイン造りには興味がなかったようで、ヴィンヤードと
ワイナリー施設は維持されず、ほっとかれた。
B 1970年代に入って、南カリフォルニアのAttorneyだったJames
Barrett氏が、一切を購入。
ほっとかれていたヴィンヤードに新しく葡萄の木々を植え、ワイナリー内も改築、ワイン造りをこのシャトーに
復活させた。 1972年ヴィンテージが復活後最初のワイン。
C 1976年に行われた、かの有名な「パリ・テイスティング」で、当ワイナリーのシャルドネ73が、
堂々の一位を獲得。
その当時のワインメーカーは、現「Grgich Hill
Cellar」創設者の、Miljenko
"Mike" Grgich氏。
現在のワインメーカーは、創始者Jamesさんの息子さんBo
Barrett氏。(Heidi
Barrettさんのご主人)
「Judgement
of Paris」テイスティングで、シャトー・モンテレーナのシャルドネが一位を取ったのは、かなり有名な話
ですが、この歴史を見ると、復興後2年目のヴィンテージが、この栄誉を勝ち取ったわけで、シャトー・モンテレーナに
とっても驚きの結果だったと思われます。
その73年シャルドネのボトルがワイナリー内に展示されていますが、非常にユニークなのがラベルの表示です。
当時はまだ、AVA(American
Viticultural Areas アメリカ政府公認ぶどう栽培地区)システムが導入されていなかったためでしょうか、
「シャルドネ」という品種表示に上に印刷されているのは、「Napa
& Alexander Valley」です。
このような表示は、今では目にすることはないはず・・・です。
現在造られているシャルドネは、ナパ・ヴァレーの南「Oak
Knoll」地区で栽培されているフルーツが使われています。
【ツアー&テイスティング】
カリストガを越えて、この北端近くのワイナリーまで訪れるのなら、「ツアー&テイスティング」に参加されることを
お薦めします。
エレガントな「エステート・ルーム」で、ジェイムスさんやボーさんが登場するDVDプレゼンテーションを見て、
ぶどうの木の季節ごとの移り変わりを写真で説明を受け、部屋の一角に展示されている土壌サンプルの
説明を受けます。
そして部屋を出て、お散歩タイム。2代目オーナー・フランク氏の時代に作られた湖(大きな池、と言った方が適当)の
周囲をゆっくり歩き、奥に広がるヴィンヤードまで行きます。
一面に延びるヴィンヤードと、その奥に頂上を見せるマウント・セント・ヘレナ、ちょっとしたハイキングのメッカ、
テーブル・ロックやパリセードも見渡せて、これはなかなか素敵な眺めです。
湖には何匹ものダック、真っ白で可憐な白鳥、十数匹いるという亀たち、そして生い茂る緑・・・。
ツアーをしてくれる女性の話し声と、鳥のさえずり以外は何の音もせず、なんとも心落ち着く、
豊かな時間を過ごせます。
シャトーに戻って、ぶどうが収穫されてきてからあとの一連作業を、施設を見ながら一通り説明を受け、最初の「エステート・ルーム」に
入り、お待ちかねのテイスティング。
5月某日に訪れた時のラインアップは以下でした。
2004 Potter Valley
Riesling
$18.00
2004 Napa Valley Chardonnay
$38.00
2003 Montelena Estate Zinfandel
$28.00
1991 Montelena Estate Zinfandel
$35.00
2003 Napa Valley Cabernet Sauvignon
$40.00
2002 Montelena Estate Cabernet Sauvignon $95.00
ジンファンデルの古いヴィンテージが出されたのは、どのようにエイジングするかを参加者に知ってもらいたいからだったと思うのですが、
これが、なんというか、ご一緒したクライアントの方が「これ、イっちゃってませんか?」と小声で囁いたほど。
タバコ、レザーの香り・・と、良く言えば言えるのですが、暑いところに出しっぱなしにしておいた醤油のような、ちょっと奇妙なテイスト
でした。
それに比べて、03年のジンファンデルは大層フレッシュで、凝縮されたフルーツ味と酸味、そしてたっぷりのスパイス風味が良いバランス
を取っていて、ナイスでした。
以前、ニュースレターで、ワインスペクテーターのJim
Laube氏が、モンテレーナ・エステート・カベルネ01に「69点」という、信じられない
低い点数をつけたこと、一方でロバート・パーカーJR氏は同じものに「96ポイント」をつけたことを、お伝えしました。
ワイナリーの人に、これの影響はどうだったかとお聞きしたら、これが良い方に転がって、いつもにまして売り上げが増したとのこと。
お二方両方が低い点数だったら悲惨なことになっていたでしょうが、この両極端の数字は、かえって「良い宣伝」になったのでしょう。
現在出ているエステート・カベルネは、上の02年ヴィンテージですが、この日頂いた赤の中で、申し分なく断トツに素敵なワインでした。
タンニンばしばし、ブラックベリーびしびし、とってもEarthy。
シャトー・モンテレーナの名を有名にしたシャルドネは、それはそれなりに良かったのですが、私が個人的に
この日一番気に入ったのは、最初にサーヴされたリースリングでした。
ほんのり甘い風味がありながらも全体的には、いい感じにドライ。
青いリンゴの「しゅっ」とした酸味が、これからの季節にぴったり。
ワイナリーとワイナリーのウエブサイト上でしか販売されていない少量生産ワインとのことで、迷わず買いました。
ナパ・ヴァレーで、ゆっくり過ごす余裕のある日程をお持ちなら、シャトー・モンテレーナを始めとするカリストガ近隣の
ワイナリーと、スプリング・マウンテンか、ハウエル・マウンテン、ダイアモンド・マウンテンのいづれかの
山間ワイナリーを組み合わせて回るのも、素晴らしいと思います。
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