2008年10月08日
10月になりました。
近所の気の早い家ではハロウイーンの飾りつけを施し、各種料理関連雑誌は、サンクスギビング(11月末)用ホリデー・ディナーの
特集が出ています。
先週、夕方から雨が降り出し、一晩中、結構な風雨があったのですが、翌朝にはカラっと晴れて、未だ、日中最高気温30度(摂氏)前後の
日々が続いています。
それでも、ワインカントリーを走っていますと、木々の葉っぱが秋色に変わっているところも見られます。
今週の「あれこれ」は、メディア&トレード関係者対象に開かれるテイスティング・イベントについて。
一般公開されていないワイナリーには、いくつかのパターンがあって、
@生産量が少なく、メーリング・リスト・メンバー及びレストランへの販売だけでハケてしまうから、一般売りするものがない。
A自分達の醸造施設を持っておらず、カスタム・クラッシュ或いは近隣ワイナリーで醸造をしているため、一般公開するものがない。
B訪問者に対応するスタッフがいない。専任スタッフを雇う余裕がない。
Cビジター受け入れの許可を取っていない。(取らない)
大まかに言えば、これら4つのいづれかにあてはまります。
行き着くところは結局Cになるわけで、@もAもBも、ビジター受入れの許可を取らない・取れない「理由」になって
います。今回、「メディア&トレード限定イベント」の招待状をくださった「Black Ridge
Vineyards」も、
@AB全てにあてはまります。
現状は、@生産量 計1400ケース
A近所のテスタロッサで醸造作業を行なっている。
Bパートナー(共同所有者・経営者)と、アシスタント・ワインメーカー兼オペレーション・ディレクターの3人しかいない。
で、一般公開するだけの材料が揃っていないということになります。
が、現在敷地内に醸造施設を建設中であり、テイスティング・ルームも完成させ、生産量も6000ケースまでOKの
許可も取ってあるとのこと。人手の問題さえ解決できれば、近い将来、アポイントメント制で訪問者を受け入れることが
できるようになるかもしれません。
まあしかし、初めて訪れてみてびっくりしました。一般公開されていないのが信じられないくらい立派な所だった
からです。門構えも立派ですし、全部で20ヘクタールはあるだろうと思われる敷地内にど〜んとあるパートナーの
お一人の邸宅も立派です。
建築中の建物は、当初は住居とする予定で建てられ始めたものの、途中から、その半分を醸造施設・セラーに
することになり・・・。
ここからの眺めがまた素晴らしい。北東方面には、山並みの向こうにシリコン・ヴァレー、サンノゼのダウンタウンを
見渡すことができます。
その昔、19世紀半ばにはワイン用ブドウが栽培されていたこの土地は、禁酒法時代にはプルーン畑に変わり、
その後クリスマス・ツリー用、樅の木畑になっていました。
そんな土地を、1999年にJim Landes
氏と Fred Faltersack氏がパートナーとなって購入、土地の歴史を遡り、
再び、ヴィンヤードとして開墾したのでした。
現在、ヴィンヤードは全部で約23エーカー。見上げてしまうほどの急斜面にある「Upper」部分と、
鉢(ボウル)のように下に広がる「Lower」部分とに分かれています。
ここで、ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン、メルロー、マルベック、プティ・ヴェルドー、ヴィオニエ、
シラー、シャルドネ、ピノ・グリが育てられています。
自分達の畑からのフルーツだけで造るブラック・リッジ・ヴィンヤーズ・ラベルでは、ヴィオニエ、ピノ・ノワール、
カベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン、ブレンドが出されており、シラー、シャルドネ、ピノ・グリは、
他ワイナリーに売っています。
この日のテイスティングは、最近完成したというテイスティング・ルームで行なわれました。
4種類のワインに、それぞれにマッチさせたチーズが振舞われています。
ワインを注ぐのは、アシスタント・ワインメーカー兼オペレーション・ディレクターの
Ashley DuBois さん。
チーズの説明をする別の男性スタッフも。(名前聞き忘れました)
以下、ラインアップと感想です。
2007
ヴィオニエ 生産量120ケース $25 チーズ:
Fromager d'Affinois
シャルドネではなく、ヴィオニエをブラック・リッジ・ヴィンヤーズのラベルで出しておられることが、個人的に嬉しい。
パートナーのフレッドさん(右上写真の左の方)いわく、05年ヴィンテージは収穫を遅らせたために、のったりした
フルボディすぎるヴィオニエになり、06年ヴィンテージは逆に、早く収穫しすぎて、leanすぎるヴィオニエとなり、
この07年ヴィンテージで、やっと自分達が理想とするヴィオニエになったと思う、とのこと。
とにかく、ナイスな酸がポーンと弾けて、マンゴの「のったり感」がそのあとに入ってきて、口内に長く余韻が残ります。
かすかにウオルナッツの風味、ブリー・チーズの風味も感じられ、非常に爽やかな素敵なヴィオニエだと思いました。
ダブル・クリーム・ソフト・チーズであるところのフロマーゼイ・ダフィノワは、その製法がブリーと良く似ているとのことで、
ワインだけで頂いても上記のようにブリーの風味が感ぜられたので、このチーズと合わないわけがない。ナイス・マッチ。
2006
ピノ・ノワール 生産量187ケース $39
チーズ:Humboldt Fog
サンタ・クルーズ・マウンテン地区は、独特のピノ・ノワール生産地として、その名を挙げてきています。
2005年に、テスタロッサ・ワイナリーで開催された「サンタ・クルーズ・マウンテン・ピノ・パラダイス」イベントに
行った時は、バランスの悪いピノ・ノワールが結構な数あって、どうなのかなあと思ったりしましたが、
それから3年たって、クオリティがぐんぐん上がってきているようです。
ブラック・リッジ・ヴィンヤーズの06ピノ・ノワールは、イチゴの風味満載、押し付けがましくないけれど充分主張された
きれいな酸とのバランスがよろしく、食事に合わせるのにピッタリのワインだと思いました。
私には、ほんの少し「森林っぽさ」が足りない気がしました。これは私の嗜好によるものです。
11月1日号の「Wine Enthusiast」誌で、当ワインが91ポイントをつけて載っておりましたが、いかんせん
生産量たったの187ケースですから、3月にリリースして2ヵ月後には完売してしまっております。
2005
カベルネ・ソーヴィニョン 生産量102ケース $35
チーズ: Piave
ブラック・リッジのワインメーカーは、テスタロッサと同じ
Bill Brosseau氏ですが、どういうわけか、この
カベルネだけ、Mount Eden Vineyardsの
Jeffrey Patterson氏です。
最初の1杯目では、よく言えばまったくクセのない、悪く言えば個性に乏しい、とらえどころのないカベルネだな、と、
思ったのですが、全ワインを一巡して、二巡目でテイストした時、まったく印象が異なることに驚きました。
杉の香り、セージのようなハーヴの香り、ゆるやかな酸。
新人選手が、自信を秘めながらも控えめに登場、翌年開花して、みんなが認める実力の選手になったという感じ。
ボストン・レッドソックスの、ジャスティン・ペドロイヤ選手みたいな。
サンタ・クルーズ・マウンテン地区は、ピノ・ノワールに最適の地とされつつあるので、カベルネ・ソーヴィニョンは
どうだろうと疑問視されがちなのですが、(実際、フレッドさんも周りからそのように言われ、カベルネを育てるのを
一瞬躊躇したそうです)、ここの「Lower」部分は、南東に向いて鉢型に窪んでおり、冷気が入ってこないで
陽光熱が貯まる独特のヒート・スポットを形成しています。
そこで育てられているカベルネは、まだ若い木ではありますが、これからもっともっと、良いフルーツができてくる
ことでしょう。
Ridgeのかの有名な「Monte
Belloモンテベッロ」ヴィンヤードだって、サンタ・クルーズ・マウンテン地区
なのですから、将来性充分なはず。
お値段も35ドルというのは、昨今の相場で言えば、かなりリーズナブル。
この値段であるうちに、ちゃんと飲んでおきたいワインです。
2006 San Andreas Red
生産量488ケース $49
チーズ: Selles Su Cher
69%
Cabernet Sauvignon, 15% Merlot, 15% Cabernet Franc, and 1% Petit Verdot.のブレンド。
これも最初の1杯目は、香りが立ち上がって来ず、それでもラズベリー、シナモンの風味がキュートだなと思った
のですが、2杯目でガツ〜ンと来ました。
ブラックベリー、黒胡椒の風味がビシバシ出てきて、その分、ヒートも少々強めに感じられ、上記のカベルネに
比べて、バランスに欠けているようにも感じられました。
しかしながら、このワインは、ワイン・スペクテーター誌で最近92ポイントを取っており、
James Laube氏による、「トップ・新カリフォルニア・カベルネ・ソーヴィニョン」11本の中に、一番手で登場しました。
この記事は、同誌のウエブサイト上だけでの掲載ですが、雑誌の方で11月15日号に予定されている
「カリフォルニア・カベルネ」特集記事にも、このワインが紹介されたら、途端に販売もぐ〜〜〜んと伸びることでしょう。
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