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2009年04月29日

日本ではゴールデンウイークに入り、今年は繋がりが良いので、有休を2日取れば一週間、4日取れれば最長12日間のお休みとなるそうで、
きっと日本国内各地、大変な混み具合になることでしょう。
今日現在、サンフランシスコ・ベイエリアは、涼しい快晴。東のニューヨークでは、ここのところ連日摂氏30度を越す夏日となっています。

約1ヶ月ぶりのご無沙汰でしたが、今週の「あれこれ」は、なんちゃってブログ「こんなもの食べてます飲んでます」の3・4月分をお届けします。
4月6日から23日まで、日本への里帰りをしておりましたので、4月分は、ほぼ日本での「あれこれ」です。
 

 20093月某日

牛肉が少しずつ高くなってきており、ど〜んとしたステーキを食べたいと思って、スーパーマーケットのお肉セクションに
行っても、ちょっと買うのを躊躇ってしまう。そんな時は、ポークだ。でかいポーク・チョップがセールになっていて、
同じ大きさで牛肉の約半分の値段。
シンプルに塩・こしょう、カイエン・ペッパーを満遍なく振って焼いて、ネギたっぷりの溶き卵を注いで「ピカタ」にする。
付け合せは、春野菜、ベビー・キャロット、新じゃが、芽キャベツのロースト。
合わせたワインは、Lucia ピノ・ノワール、サンタ・ルチア・ハイランズ2006。年明け、ピゾーニを訪れた時、お土産に
頂いて帰ってきたもの。野菜から来る土の風味と、ピノ・ノワールの土っぽさがうまくミングルして、ナイス。
 
 20093月某日

ランチ・アポイントを、サンフランシスコの「Amber India」で。ハイエンドなインド料理レストランといった風情で、店内は
モダン。IT関連会社にお勤めしていそうなインド系の方々がやはり多い。ランチは、アラカルトもあるけれど、ビュッフェが主体。
7ドルくらいで食べられるインド料理ビュッフェと違い、やはり一品一品、味が上品なような気がした。(ここのランチ・ビュッフェ
は17ドル程度)
3人での食事だったので、ワインをボトルで1本注文。インド料理には白を合わせるのが好きなので、スペインの
アルバリーニョを。Fillaboa アルバリーニョ、Rias Baixas 2007
このアルバリーニョと言い、ヴェルデーホと言い、スペインの白は飲みやすくて値段も手頃で、かなり好きだ。
 
 20093月某日

 ワインカントリー日本語ガイドのリピーター顧客をお連れして、「Larkmead」。通りの名前と同じワイナリー名である
 割りに、知名度はさほど高くないような気がする。テイスティングには事前アポイントが必要だという点も、大手メジャー・
 ワイナリーとは一線を引いている感あり。
 周囲をヴィンヤードが取り囲む、大変のどかで静かなセッティング。テラス席に座って、ソーヴィニョン・ブランやら、
 カベルネやら、シラーを試飲。こういう所では、時間を気にせず、ゆったりとテイスティングをするべし。
1800年代から、エステート・ヴィンヤードを所有してきたという長い歴史があるので、ワインそのものの値段も極端に高くつけられていない。
メイン・ラインのカベルネで、55ドル。「LMV Salon」でも75ドル。同じくらいのクオリティでも最近の他ワイナリーのものになると、簡単に
100ドルを越えることを考えると、とても良心的。06年のカベルネは、しかしながら、ほんの少し個性に乏しい印象。07年に期待したい。
ワインメーカーは、DuMol でもやっておられるAndy Smith 氏。
 
 20093月某日

 「自然派ワインの造り手のところに行きたい」とのお客様からのリクエストを受けて、フロッグス・リープ・ワイナリーへ。
 自然派とかオーガニックとか、そういった条件がなくても、ここは大抵の方に気に入っていただけるワイナリーである。
 健康で元気いっぱいの果樹・野菜・草花・ニワトリに囲まれたセッティングは、いつ訪れてもホっとする。
 ビジター・センターの入り口には、その日に獲れた野菜や果物が無造作に置かれていて、訪問客はこれらを自由に
 頂戴していって良いことになっている。
 それら無料プロダクツの他に、最近ではフロッグス・リープ産のものが、ちゃんと販売されている。
オリーヴ・オイル、ハチミツ、ドライ・フルーツなどなど・・。サラダ用ドレッシングに、頻繁にハニーを使う私は、ここでハチミツを
一瓶、購入。
 同じお客様のリクエストで、翌日は「WH Smith」へ。Angwin の山の中。お客様いわく、「ここのオーナー兼ワインメーカー
は、かなり気難しい人らしい」とのことだったが、そんなことは露とも感ぜず。こちらの質問に、熱意を込めて答えてくださる
Bill Smith 氏のお姿は感動的ですらあった。
アシスタント・ワインメーカーさんと二人で、2008年もののバレル・テイスティングを、どんどん提供してくださった。
個人的には、Marimar Estate ヴィンヤードのピノ・ノワール(AVA=Sonoma Coast) が思いのほか美味しく感じられた。
 
 20093月某日

ワインカントリーご案内の最中、レストランで座って昼食を取る時間がなかったので、道中にあるデリに寄り、軽くつまむものを
買う。お客様が見つけてこられたのが、写真の変わり稲荷。
時々、家で稲荷寿司を作ることがあるが、揚げを閉じずに、逆さまのまんまにして、適当な具を乗せるというこのスタイルは、
初めて見た。
目からウロコだ。これは面白い。
ノン・ジャパニーズ相手のパーティなどで受けそうである。今度やってみよう。
 
 20094月某日

年に一回の日本里帰り。昨年に続き、今年も春を選んだ。私が到着した週あたりから、春の陽気が訪れ、桜も一気に満開。
日本に行くと、実家で数日過ごしたあと、国内のどこかを訪れることにしており、今回は島根県松江へ。幼馴染の友人と
2泊3日の旅。
新大阪から新幹線で岡山へ出て、そこから「特急やくも」で松江まで。この日は気持ちの良い快晴で、列車から大山が
きれいに見えた。松江でレンタカーをして、出雲大社へ。
途中、「島根ワイナリー」の看板が目に入り、へえと思い立ち寄る。県名・土地名をつけたものは、地元JA(農協)がやって
いるケースが多いので、ここもそうかと思ったら、やはりそうだった。バスが何台か停まっていて、結構な人の数である。
バーベキュー・レストラン、カフェテリア、物産販売コーナー・・と、必要なものは全部揃えました、といった内容。
テイスティング・ルームに行くと、そこは物産販売店を兼ねたところで、ちくわだの乾き物だの、まんじゅうだの、おそばだの、
とにかく何でもあり状態。
「無料試飲コーナー、カップはこちら」のサインを見て、「カップ???」と思いつつ、そちらに行くと、湯呑みサイズのプラスティック・カップが
積み重ねられていた。そのそばに、赤・白全部で10種類ほどのワインがあったのだが、ボトルから注ぐのではなく、なんと氷が敷かれた上に
置かれたボールから、玉杓子ですくって注ぐのである。フルーツ・ポンチだ、これは。かなり面白かったので、写真に収めた。
ワインの味については、聞かないでいただきたい。別コーナーで、有料試飲した「にごりワイン甲州」は、なかなかイケた。
ここは、島根牛と一緒に赤ワインを頂くのが王道なのだろう。
 
 20094月某日

 さて出雲大社。2006年の明治神宮、昨年の伊勢神宮、そして今年の出雲大社。
 これで、日本の源を制覇した気になる。
 巨大な注連縄に圧倒されるが、神社というのは朝一番に出かけるのがベストだろう。夕方だと、そろそろ
 閉める準備を始められるし、それに伴って、神様も仕事を終えて寝所にお戻りになるような雰囲気が漂う。
 宍道湖を眺めつつ、松江市内に戻り、宿で一息。ちょっと奮発して、「皆美館」の最上階(といっても4階)
 改装後の「モダン」ルームを予約しておいた。部屋の大きな窓の向こうは、宍道湖大橋と宍道湖。
 その風景を眺めながらのお湯が楽しめる内湯も美しく、極楽、極楽である。
 この日の夜は、宿での懐石。カウンター席でセットされてあった夕食は、
 先付 牛肉と斐川葱のヌタ和え。 前菜 旬の味覚盛込み。 椀 鰻沢煮仕立て。 造り 三品盛り。
焼物 鱸と貝柱グリル。 焚だし 竹の子めばる。 強肴 川鱒変り揚げサラダ。
これらのあと、皆美館名物「鯛めし」、香の物、デザートが続く。
焚だしのあと、カウンター向こうのシェフが、「ちょっとこれも食べてみてください」と、二口の島根牛ステーキを出してくださった。
美味しい。
すべて、地のものを使ってあるとのこと、松江周辺の食材の豊かさを存分に感じることができた。
特に、先付のヌタ和えで使われていた斐川葱は、どっさり使ってネギ焼き(お好み焼き)にしてみたいと思うほど鮮烈だったし、
お造りの中にあった「よこわ」(マグロの幼少期)は、しみじみ美味しかった。
が、いかんせん、量が私には多かった。名物「鯛めし」を頂くあたりは拷問に近く、デザートはシャーベットだったが、これをパス。
 
 
 20094月某日

 朝目覚めて、窓辺に行くと、宍道湖名物「しじみ」を獲る小舟が何艘も出ている風景。松江にいるのだ
 なあと、しみじみ思う。
 旅館に泊まると、朝食もしっかり取ることになる。2泊したので、朝食も2パターン。これはありがたい。
 前夜、鯛めしが 出たので、この日の朝は、それなしの和朝食。
 自家製緑野菜ヨーグルト・ジュースに始まり、先付、温物、椀物、焼物、中付、蓋物、冷し鉢、ご飯、
 香の物と、これまたどっさり。ランチを抜く覚悟で、しかしながら、意外とペロっと完食。
 何たって、「仁多米と奥出雲延命水で炊き上げた土鍋炊きご飯」が大層美味しく、その場でニガリを入れて
 できあがる「おぼろ豆腐」と、地元産野菜サラダを、「美味しい、美味しい」とつぶやきつつ、
 ガシガシ頂いた。
 
 20094月某日

松江2日目は、朝のうちにまず安来(どじょうすくいの安来節で有名)にある「足立美術館」へ。
ここの日本庭園は、「The Journal of Japanese Gardens」誌において6年連続日本一となっており、欧米人訪日客にも
人気の場所。最近発行されたフランスの旅行ガイドブック「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」でも、山陰地区唯一の
三つ星を取っている。
散策はできず窓越しの鑑賞となっているが、それでも、借景と見事に調和した美しい庭園は、わざわざ訪れる価値あり
というのがうなづける。
池庭側から、枠どられた窓越しに見る庭も趣きあり。
紅葉の時期、そして真っ白な雪が積もる冬も、さぞや美しかろうと思われる。
午後は、松江市内に戻り、松江城、小泉八雲記念館、旧邸、武家屋敷、堀川めぐりを、ゆっくり、ぶらぶら。
松江城、武家屋敷共に、わかりやすいアナウンスが始終流れているものの、余計な飾り物は一切なく、当時の面影を
なるべくそのまま見てもらいたいという「真摯な」ホスピタリティが感じられ、静かに感動。
ただし、日本語がわからないと、どこもまったくチンプンカンプンである。
 
 20094月某日

 松江2日目の夜は、昔、サンフランシスコに駐在されていて、現在松江市観光振興部におられる
 T氏と会食。
 予約してくださった先は、「たかお割烹」。遠来からのゲスト用にと、コースが設定されてあり感激。
 一般の訪問客では絶対たどりつけないような路地裏。小さな小さなお店だが、これが素晴らしい
 割烹どころ。
 島根地酒(日本酒)をぐいぐい頂きつつ、出されたものすべてパクパク食べては、おしゃべりしまくりで、
一品ずつのメニュー書き取りを失念・・というか放棄。
お寿司、お造りでは、ヒカリものと白身が大・大好きなのに、日本に着いて、ヒカリものを一回も口にしていなかったので、
お造り盛り合わせに「さより」が出た時には大喜び。「女性とお聞きしていたので、ひかりものはダメかと思ってましたが、そうですか、
お好きですか」と、しめ鯖も登場。うううう、嬉しい、美味しい。
終わり近くで出された「バッテラ」なぞ、もう、涙が出てきそうなくらい味わい豊かで、ここに連れてきてくださったT氏に大・大感謝。
 
 20094月某日

 松江最終日の朝は、鯛めし和朝食。皆美館の鯛めしは、卵の白身、黄身、鯛の身をそぼろ状にした
 ものを、ごはんの上に乗せて、出汁をかけて頂くスタイル。これはこれでナイスなのだが、出汁がもっと
 しっかり熱い方が私の好みかもしれない。出汁が熱いと、しかし、鯛の身や黄身がクックされてしまう
 だろう。
 「宍道湖の七珍」と呼ばれるものは、あまさぎ、白魚、鯉、うなぎ、すずき、えび、しじみ、であるそうで
 鯉・あまさぎ以外はすべて今回の旅で口にしたはず。
しじみといえば、小さすぎて、身をほじくり出して食べるのは面倒だからしないし、そもそも、しじみ汁
なんて最近まったく食べたことなかったものである。が、ここ松江では、それなりの店に行くと、身がぷっくら大きいしじみが
椀の中に盛られてくる。しじみも美味しいなあ・・と、久しぶりに感じただけでも、ここに来た甲斐があるというものだ。
(それだけじゃ、もちろんなかったが)
 
 20094月某日

 松江のあとは、東京3泊の旅。岡山から新幹線に乗り、新大阪で同行の友人は下車。
 そのあと品川まで、熟睡。
 東京初日の夜は、古くからの親友Hさんと、丸の内「ブラッセリー・オザミ」。
 白人の若い男性がメニューを持ってこられたので、いつものように「ハロー」と声かけると、「こんにちは。
 これがメニューです。」と、たどたどしい日本語。あら失礼、と、日本語に戻した。
 ところが、他の日本人スタッフが、バーに飲み物の注文を通す時は、「なんとかかんとか(メニュー)、
 シルヴプレ。」
 う〜ん、そうか、ここは日本語かフランス語でないといけないのだなと、笑って納得。
 松江2泊3日で、これでもかというくらい純和食を頂いたので、体が洋食を欲しているのがよくわかった。
前菜、メイン、デザートの3コースにしなければいけなかったのだが、最後のデザートをチーズ・プレートに変えてもらった。
「少しで良いので、1オーダー分を二人に分けてください」とお願いしたら、本当に「少し」だけ出てきた。
いや、でも、これで充分です。いつもなら当たり前に取っているワイン&チーズの組み合わせも、なんだか久しぶりに会えたような感じがして、
とても嬉しかった。
このあと、もう一杯だけと、国際フォーラム内にあるビール・パブに寄った。ベルギー・ビールが主体になっているように見受けたのだが、
ここも、オーダー通しの時、「なんとかかんとか、シルヴプレ」と、店員さんが叫ぶ。
「シルヴプレの夜」と名づけよう。
 
 20094月某日

 東京に滞在していた時は、折りしもIOCの視察団が、2016年夏オリンピックの最終候補地の一つ・
 東京に来られていた時期で、東京の街はいたるところに、オリンピック誘致の宣伝バナーが掲げられて
 いた。
 泊まったホテルの部屋は、「タワー・ビュー」とのことで、東京タワーが真正面向こうの方に見えていた。
 東京を「訪問客」(=非居住者)の目で見ると、この東京タワーのある風景というのは、いつも何だか
心躍るものである。
左が、ホテルの部屋から見た午前中の東京タワー、そして右が夜。 IOC視察団を歓迎してのことらしいが、ライトアップが五輪の色と
なっていたようだ。ちょっと、色合いが幼稚なような気がした。
 
 20094月某日

 東京滞在3日目に、「ワインカントリー日本語ガイド」で知り合った方とランチをご一緒するべく、
 愛宕山へ。とても天気が良い日で、朝起きた時から「歩きたい」モードになっていたので、地下鉄で
 大門まで出て、そこからテクテク歩く。
 増上寺を抜けて、東京タワーのふもと近くまで行き、森タワーの前を経由して、新橋愛宕山東急インを
 越して、参道となるゆるやかな坂を上って愛宕山神社まで。
 増上寺の威風堂々とした風情と、すぐ後ろにそびえる東京タワーとのマッチングが素晴らしい。
 愛宕山というのは、「東京で初めて電波を発信した所」(1925年7月)であり、山上にあるNHK放送
 博物館へ行くと、日本における放送の歴史というものが大変良くわかる。このNHK放送博物館で、
 小一時間ほど時間を費やしてしまったほど、展示内容に見入った。入場無料というのが素晴らしい。
 さて、ランチは、愛宕神社境内にある「T(てい)」。田崎真也氏プロデュース、「東京都産の食材のみを
使った創作和食」を提供するお店。

 靴をぬいであがる座敷には、背の低い椅子とテーブルがセットされていて、私のように正座・あぐら・
 横座りができない者にとって、大変ナイス。
 大都会との認識がある東京も、都全体を見ると、かなり広い範囲までを含むものであり、東京都産の
 ものだけで店を開くことも、さほど難しいことではなかろうと思うのだが、それをコンセプトにしている店を
 他に聞いたことがないだけに、「T(てい)」の存在意義は大きい。
 何故、愛宕山?と聞かれたら、「東京都産のものだけを使っている店」があること、そして、北カリフォル
 ニアでも人気だった「篤姫」を見ていた人になら、「ほら、勝海舟と西郷隆盛が、江戸城の無血開城を
 決めた所よ」と言えば、「ああ!」ということになる。
 ランチ・メニューは、丼もの2種、麺もの、季節もの、と至ってシンプル。親子丼に目がない私は、
 迷うことなく「愛宕丼」を選択。卵は町田産、お肉は東京香鶏。
 飲み物も、全部東京産というのがユニークである。「葛飾区新小岩のラムネ」とか「伊豆大島 あしたば
青汁」とか、「青梅産 朝ゆず果汁」とか、できれば全部飲んでみたかった。
が、たくさん歩いたので喉も渇いていて、やっぱり、ビール。店名がラベルになっているオリジナル・ビールを注文。
ぐい〜っと、オヤジ並みの一気飲みをしてしまった。
 
 20094月某日

 品川を正午ちょっと前に出発する「のぞみ」に乗って実家へ戻り、荷物をほどいて支度して、また外出。
 今夜は、大阪・堺筋本町で、昔の仕事絡みの知人4人と会食。連れて行ってくださったのは、
 「卸魚屋の店 漁亭」というお店。マンションの2階にあり、外階段で上がっていくのだが、
 連れていってもらわない限り、絶対見つけていないだろうし、目に止まらなかっただろう。
 いや、その「怪しげな胡散くささ」は、かなり目立っているので目には入るだろうが、一人で入る勇気は
 なかったかもしれない。
 入り口入ってすぐは、10人くらい用の円卓のみ。そこから左横に行くと、何故か小さな段差があって、テーブル席と
 掘りごたつ式座敷。店内、ご主人のご趣味と思われる収集品が所狭しと飾られていて、その間を縫うように、壁には
 メニューがめいっぱい貼られている。
 その手書きメニューの文字が、これまた独特で(怪しげで)、夏の遊園地の納涼お化け屋敷にぴったりじゃないかと
思われる筆跡。
「日替わりおすすめ」「HIT! 大人気」「今売れてます」という貼り紙があちこちにあるので、要するに夥しい数のメニュー全てが「おすすめ」
であり「大人気」なのだ。「本日限り!」という謳い文句もあり、これも毎日「本日限り」なのだろう。
店内中に張られているメニュー、渡されたプリント・メニューは、見れば見るほど混乱を招くだけで、ご主人にお任せした。
卸魚屋の店となっているだけに、特にマグロの質・鮮度には自信・定評があるようで、「大間のマグロ、どう?刺身、すごいでえ」との
ご主人の言葉に、「好きにやっちゃって〜」状態の私達。
食べ物よりも、内田裕也風のご主人のこと、メニューのこと、店内のことが、座の話題として盛り上がること請け合いだ。
マグロの頬肉を使った中華風野菜炒めが、美味しかった。次回来ることがあったら、「アジアンカレ〜」か「マグロらーめん」というものに
挑戦してみたい。(アジアンカレ〜って何だ)
 
 20094月某日

 春野菜を使った料理をたくさん頂いたし、お魚・お刺身も素晴らしいものを堪能した。和食は毎日
 続いても平気だと、今まで思っていたが、今回はどうもそうじゃない。和食が3日ほど続くと、ど〜んと
 した「肉」が食べたくなっていた。ステーキも良いけれど、日本でのステーキは高いし、同じくらいの
 お金を費やすのなら、やっぱり目指すは日本の焼肉だろう。
 ということで、家族会食を「山形牛焼肉 牛兵衛 草庵」で。阪急西宮北口からプロムナードが延びて
 いる「西宮ガーデンズ」は、昔、西宮球場があった所にできた商業コンプレックス。4階に飲食店が
 固まっているのだが、どこも大変賑わっている。
 「草庵」は、5〜6人席テーブルが並び、テーブル間に透明なガラスがはめ込まれているため、
 ちょっとしたブース・個室感を出している。
 朝から体が「肉、肉、お肉〜〜〜う〜〜」となっていた私は、きっと目が血走っていたに違いない。
山形牛・牛刺し、ユッケ、サラダ、特上タン塩、クラシタ、ランプ、上ロース、大山鶏の塩焼き・・・と、食べる食べる。みんな食べる。
一口ごとに、「アア、美味しい〜〜」と心の底から感謝の気持ち。
 
 20094月某日

 今年の恒例京都行きの日は、雨が降ったり止んだりになるということが、前日までの天気予報でわか
 ったので、歩きを中心に考えていたルートを急遽変更。しとしと降る雨を見ながらお酒を飲むのも悪く
 なかろうと、サントリーの山崎蒸留所でのツアー&テイスティングを予約。
 大阪駅から山崎までは、JRでたったの25分。名神高速、新幹線から見えていたサントリーの工場も、
 訪れるのは初めてだった。無料ツアーに参加すると、シングルモルト・ウイスキー「山崎12年」と
 「白州12年」を頂ける。テイスティング・ルームでは、有料で、サントリーが輸入元となっているスコット
ランドのシングル・モルトを飲むことができ、天気が良い日ならショップでおつまみを買って、テラス席でシングル・モルトを
ちびちびやるのも楽しいだろうなあ・・と思う。

サントリー工場の北東方向には、アサヒビール所有の大山崎山荘美術館があり、ここも素晴らしい。京都方面を見渡すテラスは
カフェになっていて、もちろんアサヒビールを飲むことができる。(もちろん有料)
 

 20094月某日

 その日の夜は、京都・三条木屋町の「京都ネーゼ」(イタリアン)で。地下鉄で三条京阪まで出て、ぷら
 ぷら歩いて四条通りまで行き、「原了郭」などの祇園界隈のお店を見て、またぷらぷら、今度は先斗町を
 練り歩いてからレストランへ。
 先斗町を歩くのは随分と久しぶりだが、よくやっていけてるなあと思うくらい、ありとあらゆる飲食店が
 通り沿い、そして路地裏にひしめきあっていて、しとしと雨に濡れる石畳も、それなりの情緒を出している。
 「京都ネーゼ」は、カウンター8席、テーブル8席の小さなお店。ビルの3階にあるが、エレベーターの階数
 表示のところに「本日は予約で満席です。席が空き次第、お伝えしますので、係りの者にお名前を残して
 ください」といった内容のメモが貼ってあった。人気があるのだなあ。

 予約を入れてもらった時、コースではなくアラカルトで、と言い残していたので、美味しそうなメニューから、
 前菜3種、パスタ2種、アントレ1種を選び、二人でシェア。
 読者投稿のレストラン批評には、「ワインバーだからか、食事の量が少ない」という意見が多く見られた
 が、そういう風には感じなかった。どのディッシュも、適度な量だったし、上記のオーダーで二人とも、
 お腹いっぱいになった。
 カルパッチョで使われた海老の頭部分を揚げたものは、つんつん美味だったし、ホタルイカのパスタは
 風味豊かで心温まったし、アントレで注文した白金豚のローストは、今回の旅の中で一番印象に残る
 ポークだった。
 同行者がビール好きの人だったので、私は一人でグラス・ワインを注文。スパークリング、白、赤、赤、と
 4杯も頂いたが、注文のたびにワイン担当のスタッフが、ボトルを2〜3本カウンターに置いて、
 それぞれの特徴の説明をしてくださった。とてもナイス。

アフター・ドリンクは、JRで大阪まで戻って、北新地の「バーK」で。真っ当な方が作る真っ当なカクテル、ドリンクを飲みたい
と思い、あちこち検索した結果、ここと決めた店だ。オーセンティック・バーというタイトルがついているが、肩の凝らない、
居心地の良いバーだった。
棚に並べられている瓶を見たところ、サントリーがやっているのだなとわかり、「今日、山崎のサントリーに行ってきました。」と
マスターに。「甘いのが飲みたいので、アマレットを使ったものを作っていただけますか?」とのリクエストに、マスターが出して
くれたのが、シングル・モルト・ウイスキーと合わせた「ゴッド・ファザー」というカクテル。マッカラン12年を使われていたので、
とても美味しかったのだが、もともと、ゴッドファザーはウイスキー主体の飲み物だそうで、私にはもう少し甘みが必要だった
ため、アマレットをちょっと足してもらった。
次回、どこかのバーに行ったら、「ゴッド・ファザーを、アマレット少し多めで。」と注文してみよう。むははは、クールじゃないか。

ゴッドファザーに行き着くまでに、既に、ソルティドッグ(塩乗せなし)、モヒートを1杯ずつ飲んでいたので、明らかに飲みすぎだ。
「終電近いで」との同行者の呼びかけにも、「大丈夫、大丈夫、気にしないでえ」と、のたまう。気にするだろう、普通。
相手への迷惑というものを考えろ、だ。
 

 20094月某日

 日本滞在を終えて、アメリカに戻ってきた。日本では、日本酒、焼酎、カクテル、ワイン、ビール、ウイスキー・・と、様々な
 ものを飲んだが、ワインに関しては、フランス、イタリア、スペイン、日本のものばかりで、カリフォルニア・ワインから
 遠ざかっていた。
 家に帰ってきたばかりで食材のストックもなく、かろうじて残っていたカリフラワとキャベツを使って、ピリ辛パスタを作る。
 久しぶりに飲むカリフォルニア・ワイン、何にしようかと即席セラーを眺め、Small Vines ピノ・ノワール、
  Russian River Valley 06 
を選択。
 キュっと鮮やかな酸と、熟したベリーの甘さに、ことのほか「懐かしさ」を感じて、「ああ帰ってきたのだなあ」と実感する。
 

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