Sea
Salt
シー・ソルト
【イースト・ベイ、バークレー】
サンフランシスコから「ベイ・ブリッジ」を渡った対岸一帯を、「イースト・ベイ」と呼びますが、代表的な街がバークレー、
オークランド。バークレーは、1960年代のヒッピー文化、フラワー・ムーヴメント発祥の地とされており、
私がアメリカに住むようになった80年代当時は、「バークレーに行くと、変な格好をした人がいっぱいいるよ」と人に
よく言われたものです。
実際、ヒッピー・スタイルをそのまま引きずっているような人・学生が多かったのも確かですし、常に「進歩的で
ありたい」と願う街の雰囲気が充分にその頃はありました。
時代が流れ、今バークレー周辺をうろついても、さほど風変わりな格好をしている人は見かけません。
それよりも、「ナチュラル」な生活を、心身ともに「豊かな」「ヘルシーな」状態であることを熱心に追求する人たちが、
好んで住む街という印象になっています。
当コーナーでも紹介した「シェ・パニース」の登場を皮切りに、オーガニック農法、サステイナブル農法で栽培された地元の素材を使った、
いわゆる「自然派」ダイニングが、バークレー及びイースト・ベイの主流になってきているように感じます。
【シーフード主体のネイバーフッド・ビストロ】
私もイースト・ベイ側に住んでいますので、外食する時は、できることならベイブリッジを渡ることなく、イースト・
ベイ側で済ませたい。2005年にオープンしてから、チラチラと名前は見聞きしていたものの、訪れる機会の
なかった店「Sea Salt」に行ってみました。
お店のコンセプトは、「promotes innovative, healthy and sustainable
seafood dining.」です。
縦に長い店内は、右にバー・カウンター、右奥にオープン・キッチン、一番奥のドアから外に出るとテラス・
シーティングがありました。入り口入って右向こうは、恐らく最近拡張させた部分だと思います。
日曜日の夜、小学生くらいの子供連れファミリーも結構な数がいて、老若男女が入り混じっておりました。
サンフランシスコでは、それなりの、ビストロ・レストランで子供を見かけることが少ないのですが、
イーストベイではかなり多い。それだけ在住するヤング・ファミリーが多いということでしょう。
店名からも察せられるように、シーフードが主体。紙のメニューには日付が打たれていて、頻繁にメニューが変わることがわかります。
「raw bar」メニューがあったので、「とりあえずビール」ならぬ「とりあえずスパークリング」に合わせて、牡蠣を注文。
個人的に、牡蠣ならカナダ東海岸あたりのものが好きです。
malpeque (プリンス・エドワード・アイランド)、Olympia
(ワシントン州)、summer ice (ブリティッシュ・コロンビア)3種を頂きましたが、
やっぱり、プリンス・エドワード島のが一番美味しかったです。これは人それぞれの好み。
メニューは、「greens」「on
bread」「smaller」「larger」「sides」に分かれていて、それぞれ4種類ずつ程の選択肢。
★ミックス・キューカンバー・サラダ★ 9ドル
きゅうりも、その種類は結構あるもので、ひと昔前ですとアメリカに来たばかりの日本人には、「こっちのきゅうりは
でかくて太くて、でも中身がスカスカで・・」というのが常套句でした。が、今や、そんなこと言うと、「どこでいつも
買い物しているの」と逆に嘆かれてしまいます。
昔からある、いわゆる太いでかいキュウリのほかに、イングリッシュ・キューカンバーもありますし、日本風のイボイボが
ついた細いきゅうりもありますし、色の薄いコリアン・キューカンバーもあります。
こういうサラダにする時は、水分多めのものよりも、ネットリ感のあるきゅうりの方が美味しいなということを発見。
フェネルのスライス、フェタ・チーズ、ミントとの相性がとても爽やかで良かったです。
★クラム・チャウダー★ 9ドル
夏の暑い日の終わりだったのに、主人がスープを注文。何も今日、クラム・チャウダー頼むこともないのにと、口には
出さずとも心の中でつぶやいておりました。
が、これが意外なヒット!
ポテト、アサリ、ベーコン、パセリというクラム・チャウダーの王道、教科書的内容のスープでしたが、
何と言えば良いのでしょうか、その絶妙な塩加減が素晴らしかったのです。
次回訪れる時は、私一人でこれを注文したいと思います。
★モンクフィッシュ・リヴァー★ 14ドル
つまり「あん肝」でございます。きゅうりを「おろした」ものがお皿に敷かれ、その上に、あん肝の「torchon」。
トーションというのは、フランス語の「タオル」。布であん肝を包み、ポーチする調理法を意味します。
そして、この上にウニと、アメリカン・キャヴィア。マイクロ・グリーンを散らばせて、キュート。
お寿司屋さんで頂く「あん肝」には、時々、味が強すぎるというか濃いというか、わかりやすすぎるものがあるの
ですが、シー・ソルトのあん肝は、あくまで優しい、繊細な味わいでした。
★カリフォルニア・スクイッドのグリル★ 13ドル
イカの姿焼きも、げそ焼きも、イカを焼いたものは何でもあまり間違いがありません。
焼いたイカと何を合わせるかが、料理人のセンス・腕のみせどころ。
今日のイカは、プリップリ、サイズもジャスト・ライトなもの。
一緒に出てきたのは、「gigante beans」と名前そのものの大きな豆、そしてアーモンド・バジル・ペスト。
バジル・ペストは、私もよくサラダとかグリルした魚に使いますが、アーモンドを混ぜるというのが新鮮でした。
アーモンド独特の香ばしさと、ネットリ度が出ていて、大変ナイス。
★うなぎのBBQ ”banh mi” ★ 14ドル
「バンミ」というのは、ベトナムのバゲット及び、それを使ったベトナム・サンドイッチの総称です。
このバゲットで挟むのが、バーベキューしたうなぎ。つまり、うなぎサンドイッチです。
日本には、コロッケをパンにはさむ「コロッケ・サンド」という、ポテト+揚げ物+パン=炭水化物+オイル・
オンパレードのすさまじい高カロリー食品がありますが、カロリー高そうなものほど、美味しそうで、
時々無性に食べたくなってしまうもののようです。
うなぎサンドイッチも、「そういえば、このテがあったなあ」と納得の組み合わせで、でも期待度大。
結果、見事にハマりました。
ベトナム・サンドイッチにかかせないコールスローが、一緒にはさまっているせいもあるのでしょうか、
その甘酸っぱさと、うなぎがとても良く合っていたのです。
ハウスメードのポテトチップスも、薄さ加減が絶妙。これもまた美味。
今日一番のヒット・ディッシュでした。
【真面目に考えられているワイン・リスト】
シーフードの店なので、お肉料理は一切ありません。だから、ワインも、食べ物を凌駕してしまうような
タンニンびしばし、フルボディのものは敢えて、ここのリストには載っていません。
食べ物のメニューと同様、ワインリストもコンパクト。
全世界のワインを偏りなく均等に網羅してあります。
ボトルで100ドルを越えるものが、チラホラあるのですが、果たしてこういう店でそれが必要なのかなと
ちょっと疑問。
例えば、スペイン「Bodegas El Nido」のJumilla
2003が、リストにあります。
ワイン屋さんで、大体130〜150ドルあたりするワインですが、これが、225ドルで出されています。
マークアップ自体は、他の店とさほど変わらないものですが、そして、ワインとしても素晴らしいものである
ことは確かですが、この店で、こういう値段をつけて、リストに載せる意味が果たしてあるのかないのか。
そういうものを除けば、ボトル平均40〜60ドルで、食べ物とワインとの相性をちゃんと考慮している、
真摯なリストだなと思いました。
私は、スペインの白の気分でいたのですが、うなぎのバーベキュー・サンドイッチを頼んだ段階で、
ピノ・ノワールが欲しくなり、「Sea Smoke」Southing
2005を注文。
注文を受けたウエイトレスさんが、「ベリー・グッド・チョイス」とコメントされたのを始めとして、
テーブルの様子を伺いに来られたマネージャーの人も、ワインを見て「このワインを注文してくれて嬉しい」と
おっしゃったことを考えるに、やはり、この店に来る人たちはワインにお金をさほど使わないのでしょう。
ちなみに、このワイン、リーテイル価格は50ドル。レストランでは90ドルでリストされていました。
日曜日の夜に、家で食事を作るのが面倒くさくなって、外食した先。
そんなに期待せずに出向いたところ、嬉しい出会いが待っていた、そんな感じでした。
なんだか、ハマってしまいそうな予感。
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