Redd レッド
【Yountvilleの新名所】
ナパ・ヴァレーの南寄り、ナパ市に隣接するYountvilleという街の中心は、約500メートルほどの可愛らしさ。
そのサイズと反比例して、カフェ、レストランなどの飲食関係店が多いことが、ここの特徴です。
かの有名は「フレンチ・ランドリー」がここにありますし、当店のオーナー・シェフ、トーマス・ケラー氏のご兄弟がやって
おられる「Bouchon」、系列の「Bouchon
Bakery」も、このダウンタウンにあります。
(右の写真は、「フレンチ・ランドリー」の一品。)
そのケラー氏、「フレンチ・ランドリー」前の敷地に、ベッド&ブレックファスト宿を建てる計画をお持ちで、それだけでなく、「Vintage1870」モール内に、ハイクオリティ・ブッチャー(お肉屋さん)「Bouchon
Boucherie」を来冬に、ヴィンテージ・
インとヴィラージオ・インの間の敷地に、「Bouchon
Private Dining」という野外イベント・スペースをオープンさせる
ことになっています。更に、当サイトでもご紹介したものの、ビジネス不振で閉店した「Wine
Garden」の建物を入手したとのこと。
ここを使って、どういう店にコンバートさせるのか、まだ詳しいプランは立てられていないようですが、つまり、この小さなダウンタウンは、
「ケラー氏のテーマパーク」になりつつあるということです。
もちろんケラー氏以外の方々も、このグルメ・タウンで評判・人気を得ようと日々奮闘されており、その中でも「Piatti」レストランが入っていた
建物を大改造し、2005年秋にオープンした「Redd」のシェフ、Richard
Reddington氏は、現在大注目の的となっています。
【待ってました、レディントン氏!】
レディイントン氏の名前が一躍スポットライトを浴びたのは、2000年〜04年にかけて、ナパ・ヴァレーの高級
リゾート「Auberge du Soleil」でヘッド・シェフに就いていた時です。それまで、「宿泊施設そのものは素晴らしい
のに、オーベルジュという看板がズレ落ちるくらい平凡なダイニング」という暗黙の評価があった所が、彼の登場で
ジワジワと汚名挽回を果たしたのでした。
そこを離れたあと、サンフランシスコの「Masa's」をテンポラリーで手伝っていたのですが、Yountvilleに適地が
見つかり「Redd」を開けた、といういきさつです。
オーベルジュ・ド・ソレイユでの彼の料理を楽しんでいた人達にとっては、遂にワインカントリーに戻ってきてくれた!という嬉しいニュースだった
わけで、オープン以来、毎日大盛況の様子。
【Modern
and Sleek】
低い柵に囲まれた一角は、どなたかの家かな?と思うほどシンプルで、それでいてinviting。
大きな窓が建物を覆っているので、灯りが外まで漏れて、中の様子がよく見えるというのが、その「入りやすい」
雰囲気を出している要因かと思います。訪れた日はあいにくの雨だったので、ちょっと映りが良くないのですが、
天気の良い日にはテラス席も素敵な彩りを添えています。
中に入ると、すぐ左手がバー・エリア。カウンターは程よく暗く、充分なスペースがあるので、席待ちのお客様へも
ちゃんと対応可能。大きな窓は、ひとつひとつが赤っぽいヒマラヤスギの木で枠組みされていて、壁はオフホワイト一色、
床はハードウッド。
大きなシャンデリアがあるわけでもなく、どでかいフラワー・アレンジメントがあるわけでもなく、いたってシンプル、
そしてスリーク。大変モダンなインテリアで、考えさせられるようなアートもなく、訪れた人は、出される食べ物と、
お互いの会話に集中できる環境。
さあ、食べましょう。
【テイスティング・メニュー】
メニューは、アラカルトとテイスティング・メニュー。
テイスティング・メニューは、5コース(70ドル)と9コース(105ドル)の2種類。内容は、季節によって変わります。
私達は、5コースのテイスティング・メニューを選択。
「MASA'S」で、レンディントン氏の前任者、鉄人ロン・シーガル氏がやっていたように、2人でテイスティング・メニューを
頼むと、同じカテゴリーの食材を使って、2種類のディッシュが出されます。つまり、5コースであれば10種類の
ディッシュが出てくるということです。
First Course:
★Sashimi
of Hamachi:
しっかり脂ののったハマチが、小さく切り刻まれたきゅうり、枝豆を混ぜたもち米の上にのっています。
もち米を使った握り寿司のような感じ。でも、ハマチにタラタラっとかけられたライムとジンジャー・ソースが
素敵で、ハーフで注文したGrüner
Veltlinerにぴったりでした。
★ビーツ、スクアッシュ、トマト、スモークサーモンのアペタイザー:
超薄切りのスモークサーモンが敷かれた上に、これまた芸術的に美しく薄くスライスされたラディッシュ、
新鮮なビーツ、トマト、スクアッシュがキュートに盛り付けられてあります。見るだけで楽しい。
Second Course:
★Caramelized
Diver Scallops:
く、く、暗い。写真が暗い。プリプリ、大ぶりのScallop(ホタテ)は、ひと口で食べてしまうのが勿体無く、
それでもこういうものはガブっといった方が楽しいので、半分に切って食べることで妥協。
ホタテも美味しかったですが、下に敷かれた野菜とドライフルーツが美味で、しかもホースラディッシュが
とても鋭く効いていました。
★Cod(タラ)とアサリのカレーソース:
出ました、シュワ泡(正式な呼称わかりません。私の造語です)ここでも使われています。
何度か当サイトでも書いていますが、この泡はモノを冷めさせてしまうので個人的には、あまり好みではないの
ですが、見た目は確かにきれいです。
チョリーゾ、シラントロ、鷹のツメがチラッチラっと入っていて、エスニックな味わいが上手に出ていました。
Third Course:
★ポーク・ベリー:
ダイエットしている人には天敵ともなる、脂身たっぷりの豚のお腹部分は、今をときめくシェフが好んで使うように
なっている流行の食材です。豚は好きなのですが、ベリーは少々ひつこくて、私はあまりファンではありません。
Reddのポークベリーは、確かに美味しいのですが、やはり塩気が強く、テイスティング・メニューの、このサイズを
二人でシェアするくらいで充分。フェネルのピュレーと、ごぼうが添えられていて、このごぼうが、しょうゆキャラメル
で味付けされていたため、私には「きんぴら」でした。懐かしい思いが。
★Quail(ウズラ):
香ばしくローストされたウズラ、何も手をつけずとも、素材の新鮮さ・質の高さが感じられるディッシュ。
下に添えられたレンティル(レンズ豆)が、ウズラから出たであろうジュースと一緒に煮られて、深い味わいを出していました。
メインの素材もさることながら、周辺に添えられる野菜の使い方、料理のされ方が素晴らしい。
Fourth Course:
★Veal ロイン:
ともすれば、フラットな味に落ち着いてしまうヴィール(子牛肉)ですが、Reddでは、そのフラットさを、
スイートブレッドを添えることで解決させています。
Molassesのグレーズで、ほんの少し甘めに料理されたスイートブレッドは、ふにゃぐにゃほっくり。
芽キャベツの可愛らしい葉っぱが、しゃんと姿勢よくまぎれていて、「あなたのこと、ちゃんと見てるわよ〜」と
声をかけたくなります。
★ニューヨーク・ステーキ:
ステーキも、Reddのテイスティング・メニューなら、繊細な形で出てきます。ほら肉だ、ド〜ン!ではありません。
パーフェクトにミディアム・レアに焼かれたステーキが、程よい厚さにスライスされて、ピュレーされたほうれん草の
上に乗せられて出てきます。
ナツメッグの味わいがキックになっていて、赤ワインが進みまくります。
Fifth Course (Dessert):
★バナナ・ラムケーキ
素晴らしい。ラムの香りとアルコール度が大人っぽく、ココナッツ・アイスクリームが爽やか。微妙な甘さ加減が完璧。
★パンナコッタ&パッション・フルーツ
マイヤー・レモンのパンナコッタの上にパッション・フルーツのシャーベット。ブラッド・オレンジが美味で、見た目も美しく。
派手さはないかもしれませんが、ここのデザートは、そのためにお腹のスペースを空けておく価値あり、と見ました。
この日、私達二人は、オーストリアのGrüner
Veltlinerをハーフで(すみません、どこのものか忘れました)、
そして赤は、Wolf
Family, Cabernet Franc 02をボトルで注文。ソムリエの方と相談して、これらに決めたのですが、
カベルネ・フランのしっかり度が、濃厚なポークベリーや、ヴィールのスイートブレッドとマッチして、非常にナイスな選択でした。
デザート・コースになって、グラスで2種類違うデザート・ワインをソムリエさんにお願いしたところ、ミス・コミュニケーションがあったようで、
チーフ・ソムリエさんと、フロア・マネージャーさんお二人が、それぞれ2種類ずつ持ってこられ、「あら?」と思ったら、
テーブルの上に、4種類のデザートワインが並んでいました。
酔っ払っていたので、記憶が数億光年かなたにすっ飛んでいますが、確か、ドルチェ、トカイ、ヴェスパイオロ、レートハーヴェスト・
ソーヴィニョン・ブランだったと思います。
この中で特に印象的だったのが、ヴェスパイオロ。Maculan "Torcolato"
2003(Veneto,
Italy)でしたが、甘さが大人っぽく、
パンション・フルーツのシャーベットとも良く合い、濃厚すぎない、素敵なデザート・ワインでした。
ワイン・リストは、ワイン・カントリー内のレストランにふさわしく、有名どころ・希少価値どころ、満遍なく取り揃えられています。
「ナパ・ヴァレーに来た甲斐があった」と、ビジター客に思ってもらえるレベルの高いラインアップだと思いますが、ベイエリアに住んでいて、
「何か目新しいものはないかな?」と期待してくる人には、ちょっと物足りないかもしれません。
ハーフボトルが充分リストアップされていて、スパークリング4種、アメリカ白6種、フランス他8種、アメリカ赤12種、フランス赤3種。
なかなか予約が取りにくいフレンチ・ラウンドリー以外は、ビストロ、カフェの数だけやたらあったYountiville。
「Redd」は、その中間を行く正統派カリフォルニア・ワインカントリー・キュイジーヌの店として、これからもますます繁盛することと
思います。次回は夏に訪れて、テイスティング・メニューを試してみたい。 |