A16
【イタリアと言えでも広し】
画像をクリックして、ご覧下さい。
イタリアン・レストランは、どの国にあっても人気です。パスタ、ピッツア、リゾット・・と、一時の「アトキンス・ダイエット」
ブームの中にあっては、食べたいのに食べてはならぬ炭水化物のオンパレードですが、お肉を使わないパスタ、
ピッツア、リゾットというものが可能なので、ベジタリアンの方にもOKな点が、多くの人に長く愛され続けている
理由のひとつなのでしょう。
ただ、多くの人にとって「イタリアン・フード」とは、依然ラザーニャであり、リゾットであり、ペペロンチーノであり、
リングイーニ・アラ・ボンゴレであり、ピッツアであるのも現実。外国での日本食が、依然、寿司であり天ぷらであり・・
というのと同じでしょう。
天ぷらひとつ取っても、関東と関西では使う油の種類が違うでしょうし、麺類だって関西と他地方では、
そのお汁そのものが別物です。
それと同じことが、諸外国料理にもあてはまると思います。
イタリアと言っても、北部と南部では使う食材も異なるでしょうし、味付けもきっと全然違うのではないかと思われます。
で、2004年冬に、サンフランシスコはマリーナ地区にオープンした「A16」は、カンパニア地方の食を提供する
イタリアン・レストランです。店名の「A16」は、このカンパニア地方を走るハイウエイの番号だそうです。
オープン以来、ベイエリアの有名シェフがこぞってここに食べに来ているようで、丸2年が過ぎた今も、
ちゃんと事前に予約していかないと、席がないくらいの盛況ぶりです。
【うなぎの寝床か、ハイウエイか】
当店は、カフェやレストラン、セレクト・ショップがひしめきあうChestnut
チェストナット・ストリートにあります。
フィッシャマンズ・ワーフからさほど離れていないマリーナ地区ですが、地元に友人・知人がいない観光客の
方々は、ほとんどこの地区に足を踏み入れません。
ですから、顧客の恐らく9割強はベイエリア住民でしょう。
キュートな入り口を入ると右手にバー。カウンターと、ハイ・チェア&テーブル席合わせて、約30席ありますが、
午後6時あたりともなると、このスペースも人で満杯になります。予約なしで行って、ラッキーなら、このスペースで
食事ができます。
そこから先は、縦に奥に長いスペースで、うなぎの寝床か、はたまた、店名のようなハイウエイが奥に延びているような形。
奥のダイニング・ルームに入ると、右手にオープン・キッチン。
一番奥に、半テラスのエクストラ・スペースがあります。
天窓が等間隔にしつらえられており、小さなスポット・ライトがぽつっぽつっと光を放ち、各テーブルには小さなキャンドル。
光というのは、これらだけです。あとは、オープン・キッチンの白い光が、その周辺を明るくさせているだけ。
カジュアルなはずなのに、大人っぽい雰囲気が出ているのは、この抑えられた照明のせいでしょう。
さあ、食べましょう。
メニューは、スターター(前菜)、サラミ、ピッツア、パスタ、フィッシュ&ミート、サイド・ディッシュにわかれています。
パスタだけは、アペタイザー・サイズとメイン・ディッシュ・サイズの2択。
★
Spicy Lamb Salami
★ 9ドル
このラムのサラミと、フィノッキオーナ(フェネルを使ったポーク)のサラミは、この店で保蔵処理されています。
ごくごく薄くスライスされてきたので、味がわかるかなと危惧したのですが、口に含むと即刻、ラムの風味が
押し寄せてきて、そしてきっちり「スパイシー」。う、う、うまい。
サラミそのものは、写真に撮っても映えないので撮影は却下。変わりに、この日のスペシャル前菜、ソーセージの写真を
載せておきます。このソーセージが、また美味でございました。
★
Tripe napoletana ★ 9ドル
トライプというのは雄牛の胃壁ですが、ポークのそれも「トライプ」というので、この店の場合どちらなのかは聞きませんでした。
いづれにせよ、ナポリ風トライプの煮込みは、玉ねぎとトマト、白ワインが使われている、とてもとてもマイルドなもの。
個人的には、もう少しハフハフするくらい熱くても良いな、と思ったのですが、それでも美味しい。
同席者とシェアして食べましたが、これなら軽く一人でたいらげられます。
★Mozzarella
burrata ★ 10ドル
今使っているデジカメと私とは,相当,相性が悪いようで、肝心な時に手ブレします。
このディッシュの写真もご覧のように、酔っ払いの目を通した画像のようで残念。
モッツエレラはわかるけれど、ブーラータというものを知らなかったので注文。
これはつまり、モッツエレラのカードのようなもので、中がねっとりクリーミー。
イタリア語で「burro」が「バター」という意味だそうです。ものすごく腐敗が早いデリケートな食材だとのこと。
このブーラータに、上質のオリーヴ・オイルが垂らされ、シー・ソルトがパラパラ、クロスティーニ(パン小片)が
サイドについてきます。
いやあ、これも、う、う、うま〜〜〜いい。
あまりに美味しくて、調子に乗ってワイン飲むペースが早すぎ。
★
Pizze- Funghi ★ 13.50ドル
「A16」に来て決して外してならないのが、ピッツアです。オーナー・シェフのChristophe
Hille氏(まだ32歳)は、
サンフランシスコ市内の「キャンプトン・プレース」「チャールズ・ノブヒル」といった一流店でのキャリアもありますが、
カンパニア地方に長期滞在し、「Vera Pizza
Napoletana Association」から、
「pizzaiolo」の認定を受けています。
そういう免許を持ったシェフの店で、ピッツアを食べないわけにいかないでしょう。
6種類のピッツアがありましたが、サーヴァーのお姉さんのお薦めに従って、キノコのピッツアにしました。
各種マッシュルーム、グラナ・パダノ・チーズ、ガーリック、オレガノ、パセリ・・・。
あああああ、至福の時でありました。
キノコ類は大好きなのですが、ピッツアに使ったもので当たりに出会ったことがなかった私は、もうこれだけで来た甲斐があったと
いうものです。 薄く、ワイルドに波打つ生地、キノコの森の風味、ガーリックの芳醇さ。
これも、もしかしたら、私ひとりでペロっとたいらげてしまえたかもしれません。
★
Pork shoulder
★ 20ドル
フィッシュ&ミート欄で、最初っから目についた当メニュー。
野性味溢れる、この堂々とした姿、どうです。これぞ、ポークのあるべき姿であります。(どんなだ)
軽く焼きを入れたあと、白ワイン、栗、ガーリック、各種ハーヴを足してコトコト煮込んでできたディッシュ。
適度の脂身をも溶かし込んだお肉の塊は柔らかくて、栗の歯ごたえも良し、煮込んででてきたお汁も抜群。
テーブルに隙間がなくなるから、と、早い段階でパンを下げてもらったのですが、この汁にパンをつけて食べたかった。
赤ワインがどうしようもなく良く合って、回る回〜るメリーゴーランド、じゃなく、目が回ってきました。
【イタリア・ワイン!イタリア・ワイン!】
「A16」が他のイタリアン・レストランと一線を画しているのが、その充実したイタリアン・ワイン主体のワインリストの
存在にあります。パートナー・オーナーであり、ワイン・ディレクターでもあるShelley
Lindgrenさん(女性)は、
当店がオープンして以降、大注目を浴び、各種メディアに盛んに取り上げられて,今や有名人ソムリエであります。
彼女だけでなく、彼女の補佐を勤める若い女性ソムリエ達も立派です。ものすごく一生懸命お勉強してるのだろうな
と思わされます。若いのにシャンとして、決して媚を降らず、顧客が望むワインを真剣に考えてくれます。
食事のスタートに、私達はまず「イタリア・ワインについては、ほとんど無知(ナイーヴ)です。乾杯の白を、
グラスで3種類選んでください」とお願い。クリスプ、フローラル、セミ・スイート、と3種、キャラクターの違う白が出てきて、
食欲が俄然出てきました。
す〜ぐに飲みきって、次は赤。若いソムリエのSkyeちゃんが登場。(写真)
Aglianico(アリアニコ)という品種に、かねてから興味があったので、「アリアニコ主体で、
キノコのピッツアやポークに合うもの。
予算は1本60ドルくらい」とリクエスト。
出てきたのは、バシリカータ地区の「Re
Manfredi, "Serpara" 1998」。59ドル。
標高の高い、急斜面に多くが植えられているというアリアニコは、ヴィンテージによってかなりのアップダウンがある、
と、何かで読んだことがありますが、98年が良い年だったのかどうかまでは知りません。
でも、深いルビー色、ダークベリー系の大人っぽい香り、そしてとってもドライな味わい。
これが、ソーセージにとても好く合いました。ブラボーなワインでした。
「ポークにも合うように」と上のワインを注文したのに、案の定、ポークが出てくるまでに飲み干してしまい、
更に別のものを注文。
「同じような感じが良い?」と聞かれたので、「ちょっと違うタイプ。少しだけメロウなのを・・・」と答えて出てきたのが、
「Librandi "Val di
Nieto" Rosso Gravello 2000」 54ドル。
カベルネ・ソーヴィニョンと「Gaglioppo」という品種のブレンドとのことでしたが、さすがに聞いたことのない
品種のものらしく、今まで経験したことのないような風味でした。
ポーク・ショルダーとナイスなマッチングをしていたので、くいくい飲んでいましたが、これ単体で出てくると、
かなりのタンニンの強さにちょっと参ってしまうのではないかと思いました。
イタリア・ワインは、トスカーナ地方を旅した時にたくさん頂いた、キャンティ、キャンティ・クラシコ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの域を
出ることがなかったのですが、「A16」のおかげで、こちらの世界も広がりそうです。
ワインもそうだし、食のメニューの方も食べてみたいものが、まだまだありますので、機会があるごとに何度も通ってみたい店です。
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