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            ウエスマー・ワイナリー  WesMar Winery

            カリフォルニアのピノ・ノワール】                          

            ワイン関連雑誌の中で、個人的にいつも読むのを楽しみにしているのが、「ワイン・スペクテーター」誌内、
            マット・クレーマー氏のコラムです。クレイマー氏は、「ワインがわかる」「ブルゴーニュワインがわかる」等の
            書籍で、日本でもお馴染みの方。

            5月15日号ワイン・スペクテーター誌の彼のコラムは、興味深いものでした。イタリアで旧知のワイナリー・
            オーナーを訪ねた時、その方が実験で作っているというピノ・ノワールを試飲しました。イタリアでピノ・
            ノワールとは!そのオーナーは「ここの気候はピノ・ノワールに充分の冷涼さがある。もちろん、ブルゴーニュ
            のような味はしないけど、意見が聞きたい」と、クレイマー氏に言ったそうです。
            それに対して、クレイマー氏は「良いワインだし、ピノ・ノワールの味わいはある。確かにブルゴーニュの
            ようなテイストはしないけれど」と言い、しかしながら、と彼はこう書いています。

            「もっと大切なことを、私は彼に言うことができた。すなわち、ブルゴーニュはもはや、スタンダード(基準)
            ではない、ということだ。もっと正確に言うなら、ブルゴーニュは、もはや「唯一の」スタンダードでは
            ない、ということだ。」

            ここ10〜20年の間に登場してきた世界各国のピノ・ノワールが、どれだけ「サクセスフル」なものかを考えると、
            イタリアのオーナーが作るピノ・ノワールが、ブルゴーニュのような味わいを持つ必要は全くない、と、
            クレイマー氏は言っています。
            カリフォルニアのピノ・ノワールの、ここ20年間の成長ぶりは目を見張るものがあり、上質なピノ・ノワール
            が産まれるという地区のものは、それぞれが独特のオリジナリティを呈しています。
            あまりに独特なので、今までのイメージをくつがえすようなピノ・ノワールであるともいえます。     
            オレゴン州のもの然り、ニュージーランド然り、西オーストラリア然り。

            クレイマー氏の結びはこうでした。「ブルゴーニュは、いつの時代にも「指標」ではある。しかし、
            もはや世界のワインの中で、ユニーク(ただ一つのもの)なものではない。ただ、先頭を走っている
            存在であるだけだ、今のところ。」

            ラッシャン・リヴァー・バレー Russian River Valley

            前振りが異常に長くなりましたが、カリフォルニアにおいて、今、上質のピノ・ノワールを産出して
            いる地域は、カーネロス、ラッシャン・リヴァー・ヴァレー、ソノマ・コースト西部、サンタ・リタ・ヒルズ、
            サンタ・マリア・ヴァレー、アロヨ・グランデ、パソ・ロブルス西部、アンダーソン・ヴァレーと
            なっています。

            いづれも、冷涼な地域です。夏の盛りに、ラッシャン・リヴァー地区を訪れますと、時にはその風の
            強さにびっくりすることがあります。太陽はさんさんと照っているのに、ちょっと肌寒く感じるのです。
            今回、ご紹介するのは、そのラッシャン・リヴァー地区のピノ・ノワールを作っている
            「ウエスマー・ワイナリー」です。

           

            【二人だけのワイナリー                              
画像をクリックして、ご覧下さい。

            ウエスマー WesMarは、カークとデニース(Kirk &
            Denise Hubbard)ご夫妻のワイナリーで、お二人のミドル
            ネーム、「ウエスリー(Wesley)」と「メアリー(Mary)」を
            ドッキングさせて、その名が生まれました。
            2本の葡萄の蔦が、バランスよく絡んでいるラベルの絵
            が、お二人の二人三脚ぶりを表しています。

            種々の登録・許可申請のみ、プロを雇った以外は、
            全て、お二人だけでやっておられます。だから、生産量
            合計で1020ケースという少量ながら、求めやすい値段
            設定を保つ事ができている、とのこと。

            知る人ぞ知る

            お二人は、COSTCOで働いている時に知り合い、結婚。
            1995年から、二人して、かの「ウイリアム・セリエム」で
            フルタイム勤務。え?あの、有名なウイリアム・セリエ
            ムで?どういうツテ?と思われる方もおられることでしょう。
            ここで「私、その理由知ってる」と言う方は、カリフォルニア
            ・ワインが大好きで、勉強好きな方に違いありません。

            デニースは、ウイリアム・セリエムの元オーナー、エド・
            セリエム氏の娘さんなのです。
            小さい頃から、ワイン造りに打ち込むお父様の姿を見て育ち、
            ワイナリーとは関係ない一般企業で働いたあと、ウイリアム・セリエムでの仕事を叩き込まれた
            デニースが、ピノ・ノワールこそ自分達のワインと決めたのも、ごく自然の成り行きと言えるでしょう。

            エド・セリエム氏がワイナリーを売却したあと、しばらくして、カークとデニースは独立し、
            自分達のワイナリー「ウエスマー」を立ち上げました。2000年ヴィンテージが、彼らの
            商業ベース初のリリース、二人がオーナーであり、二人がワインメーカーであり、
            二人がセールスマンであり、二人がマーケティング担当であり、二人がウエブサイト管理者です。 

            シングル・ヴィンヤード

            彼らはヴィンヤードを所有していません。ピノ・ノワール栽培者との親密な関係を保ってこそ、
            良いフルーツを確保することができます。
            「ハーベストの時期になると、長時間労働と緊張感で、みんなピリピリしてイラだってくるんだ。
            そんな時にでも、ちゃんと冷静に話し合える、働きやすいグローワーかどうか、というのも、
            ぶどう購入先決定の重要なポイントなのですよ。」と、カークが言っておられました。

           


            現在、ウエスマーは、4つのシングル・ヴィンヤード(単一畑)ピノ・ノワールをリリースして
            います。いづれも、ラッシャン・リヴァー・ヴァレーの畑で、しかしながら、それぞれが
            全く異なるテイストを出しています。
            2003年ヴィンテージからは、ソノマ・コーストのヴィンヤードからのピノ・ノワールも
            出すとのこと。

            少量生産

            二人だけでやっているので、大量生産はできません。

            2002 Piner Ranch Vineyard   247 ケース
            2002 Olivet Lane Vineyard     185 ケース
            2002 Oehlman Vineyard         81 ケース
            2002 Gilbraith Vineyard         67 ケース
            2002 Russian River Valley     445 ケース

            これらが現在リリースされているものですが、
            本当に少ない。81ケースのOehlmanなど、おかげで既に
            売り切れです。

            お二人を訪れた日には、最も多く生産されているラッシャン・リヴァー・ヴァレー
            ピノ・ノワール(上記上から3つのブレンド)を頂きましたが、リッチで甘いフルーツの味わいが豊か、
            ふるふるふる〜っと、ノドを通っていく、とてもキュートなワインでした。
            29ドルという値段も、キュートだと思います。

            レストランで、なかなか感じの良い男性がこのウエスマーのピノ・ノワールを選んで、
            笑顔の素敵な女性が、おいしそうに飲んでいる・・・、そんな情景がピッタリくるワインです。         

            カークは、「少量ながら複数のピノ・ノワールを作っているけれど、どれを開けても美味しい!と
            思ってもらえる、確かなクオリティを持ち続けたい」と言います。
            エド・ウイリアム氏のもと、あまたの上質ワインを口にしてきたデニースは、「ワインを飲むからには
            クオリティの乏しいものは飲みたくないでしょ?今60ドル、70ドルするワインでも、ネームバリューに
            よる価格というだけで、質が追いついていってなくて、ガッカリするものが結構あります。
            私達は、35ドルのワインで、50ドル、60ドルの価値があると感じてもらえるようなワインを作って
            いるつもりです。」と、力強く語ってくれました。

            ワイナリー自体は、あたり一帯、倉庫が立ち並ぶ中にあり、看板も何も出ていないので、
            普通に行っても、まったくその存在がわかりません。
            その素っ気無さが、お二人だけで情熱込めてやっている様子とマッチして、清々しく思えました。

            WesMar Winery
        ウエスマー・ワイナリー

            住所: P.O.Box 810, Forestville
            電話:(707) 829.8824
            ウエブサイト: http://www.wesmarwinery.com

            訪問:アポイントメント要。

                                           (2004年4月現在)

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