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Maboroshi Vineyard & Wine Estate    マボロシ・ヴィンヤード&ワイン・エステート

セバストポール】        

ナパ郡と比較しても、ソノマ郡というのは面積が倍以上ありますため、「ソノマに行きたい」と考えたとしても、
ソノマの「どこ」に行くかがキーポイントになります。
AVA(
American Viticultural Area)を見ますと、サブAVAを含めると、現時点でナパ郡には16、ソノマ郡には
14のAVAがあります。
ソノマ郡の面積がナパ郡のそれの倍以上あることを考えると、ソノマ郡におけるAVA数の少なさが顕著です。
郡内のすべての土地に葡萄が植えられているわけではありませんので、数字だけでの単純比較はできま
せんが、ごくごく一般的に言って、ソノマ郡にはかなり広範囲に渡るAVAがあるというのが特徴です。

今回ご紹介する「マボロシ・ヴィンヤード」は、ソノマ郡における2大「広範囲AVA」であるところの「Russian River Valley」と
Sonoma Coast」が重なる位置にあります。ヴァレーとコーストを跨ぐ??と、言葉尻を捉えて考えると、まったく不可思議に
思えますが、これが「広範囲AVA」の成せる技(?)でございます。

古くからベイエリアに住んでいる人なら、セバストポールと言えば、近隣のオクシデンタルという街と並んで、クリスマス・ツリーを買いに
行く所であり、オーガニック野菜や果物の産地であるわけですが、今では、ヴィンヤードがポツポツと点在している地域でもあります。

眺めの良い土地】        

南北に伸びるフリーウエイ101号線から、116号線に下り、そこからくにゃくにゃと西に向かって入っていくと、
マボロシ・ヴィンヤードがあります。車で走っていると気づきにくいのですが、116号線から西に入っていくに
従って、微妙に坂道となり、わずかずつ標高を上げていくことになります。

そして、マボロシ・ヴィンヤードは、入り口ゲートから更にぐ〜っと傾斜がかかりますので、ヴィンヤードの頂上に
立ちますと、素晴らしい眺望が広がります。東には、ナパ郡との境を成す山脈、そしてマウント・セント・ヘレナの
台形シェイプを見、西には、太平洋こそ見えませんが、穏やかな丘陵地帯が広がり、大変牧歌的。

お邪魔した日は、雨期の狭間でありながら大変気持ちの良い快晴の日だったのですが、東の山脈のふもとに
うっすら霧が残り、でも、マボロシ・ヴィンヤードには霧ひとつかかっておらず、太陽光線が燦燦と降り注いで
おりました。
マボロシ・ヴィンヤードのオーナーでありワインメーカーであられる私市(きさいち)さんのお話によると、
夏の間はほぼ毎日のように午後3〜4時くらいに太平洋側(西)から霧が流れ込んでくるとのこと。
朝から昼間の間、充分に太陽に当たり、夕方に霧です〜っと冷やされるという理想的なクライメート・コンディションが
ここにはあるわけです。

ピノ・ノワール】        

マボロシ・ヴィンヤードは、全部で12エーカー。東半分に「667」、西半分に「115」ディジョン・クローン。
オーガニック農法を採用して、ピノ・ノワールが丹精に栽培されています。
ここから収穫されるピノ・ノワールのうち、半分ほどは「
De Loach」に売られています。
当サイトで「
De Loach」をご紹介した時にも書きましたが、ここのピノ・ノワール単一畑シリーズのうち、
個人的にはマボロシ・ヴィンヤードのピノ・ノワールが一番しっくりと来て、「美味しいなあ」としみじみ思った
ものでありました。

De Loach」のオーナーも特にマボロシ・ヴィンヤードのピノ・ノワールがお気に入りなようで、フランスに里帰りした際、これを
当地のワイン愛飲家たちにふるまったところ大好評。その場にいたフランス人の間で「
MABOROSHI」という言葉は、充分に認知
されたとのこと。

2004年ヴィンテージが初】        

フランスに渡ってワイン造りを学んだ私市さんご夫妻は、90年代に入ってアメリカ西海岸に居を移されました。
ソノマ郡のワイナリーに勤めつつ、自分達のヴィンヤードを探し、90年代が終わりに近づく頃、セバストポールの
この土地を購入。
当時、このヴィンヤードの持ち主は、俳優の
Rider Strongさん。
「フルハウス」や「ER」のように日本で放映されていない番組なので、アメリカに90年代住んでいた人以外は
ご存じないかもしれませんが、93年から2000年にかけて、ロングランで放映されたテレビ番組に「ボーイ・ミーツ・
ワールド
Boy Meets World」というコメディがありました。 その中で、主人公のコーリーの親友役として人気が
あったのが、ライダー・ストロングさん。
大ヒット番組に出演して、相当儲けられたのでしょう。サンフランシスコ出身のライダーさんは、この土地を購入して
葡萄造りを目指しておられたようです。

で、ライダーさんから買い受けた土地を、「マボロシ・ヴィンヤード」と名づけ、ピノ・ノワール栽培に着手。
04年ヴィンテージが初リリース・ワインとなりました。

ビジター受け入れ】        

ヴィンヤードは結構な傾斜がありますが、高台付近に私市さんファミリーの住処を、1年半ほど前に完成させて
おられます。下の入り口ゲートから見上げると、丘の上にポツンと建つ白い家。大変キュート。
中にお邪魔すると、すっきり広々としたスペース、「こういうキッチンが欲しい」と羨ましくなる「ゆったり」サイズの
キッチン。時々の訪問者にとっては、ドリーム・ハウスであります。

しかしながら、ヴィンヤードに囲まれた中での生活というのは、「時々の訪問者」にとっては羨ましいものである
でしょうが、実際に住む立場になると、これはこれでかなり大変だろうと思います。
自然の中で暮らすわけですから、考えられうる限りの動物たちがしょっちゅうやってきます。
やれ鹿だ、やれラクーンだ、やれモグラだ、やれ鳥だ・・・・。
ちょっとした物音、鳴き声にも敏感な人だと、夜を通して眠ることは、ほぼ不可能でしょう。

そういう話はさておき、このたびマボロシ・ヴィンヤードに、訪問者受け入れの許可が正式に下りました。
1日5組まで、ツアー&テイスティングを受け入れることができます。
ただし、必ず事前にアポイントメントを取ってからの訪問に限られます。

テイスティング

私市さんは大阪府出身で、穏やかな関西弁を話されます。私も関西(兵庫県)出身なので、相手が関西弁を
話すと、スイッチがそちらに入り、こちらも関西弁となります。
ただ、お見受けしたところ私と同世代っぽく、まだワインブームなど遥か先の話だった頃に、既にワイン造りをしたい
と行動を起こされた背景が不思議といえば不思議に感じていました。
お話を伺うと、ご実家が酒屋さんだったとのこと。70年代〜80年代前半の日本の酒屋さんでワインを取り扱って
いた店なんて、数えるほどしかなかったと思います。そんな状況の中、ご実家の酒屋さんはワインを販売されて
おり、ディストリビューター主催の試飲会にも、足繁く通っておられたとのこと。
それをお聞きして、なるほど〜と納得したのでした。

この冬に、ご自宅のベースメントをテイスティング・ルームに改装する予定ですが、完成までは、
ご自宅のリビング・ルームでのテイスティングとなります。
この日、テイスティングさせて頂いたのは以下。

@ Rebecca K, ピノ・ノワール、ソノマ・コースト 2006             $28
Maboroshi, ピノ・ノワール、Russian River Valley 2005    $40
Maboroshi, カベルネ・ソーヴィニョン、Napa Valley 2002   $48

「Rebecca K」奥様のレベッカ・キサイチさんの名前を冠した新ブランドです。
このラベルから現在、ピノ・ノワールとシャルドネを出しておられますが、ピノ・ノワールのフルーツは、すべて
マボロシ・ヴィンヤードから。
西側(115ディジョン・クローン)のフルーツを主体にしており、AVAも従って「ソノマ・コースト」にしておられます。

「レベッカK」のピノ・ノワールも、「マボロシ」ブランドのピノ・ノワールも、同じ当ヴィンヤードのフルーツで造られていますが、
「レベッカK」の方を「ソノマ・コースト」、マボロシの方を「
Russian River Valley」とすることで、違いをわかりやすくしています。

De Loachのマボロシ・ヴィンヤード、ピノ・ノワールを飲んだ時、他の単一畑ピノ・ノワールより断トツ「甘みが大人っぽい」なあと
思ったのですが、マボロシのピノ・ノワールはそれが更に成熟していると言いましょうか、甘さがほとんど良い感じに消えて、
earthyな、森林っぽい、大人っぽいものに感じました。
マボロシのピノ・ノワールが、ハンサムなお兄さんだとしたら、レベッカKのピノ・ノワールは、そのお兄さんが
大好きで、いつもついて回っているキュートな妹・・・、という印象でした。
$28というお値段が、これまたキュートではありませんか。

マボロシ、そしてレベッカ
のワインに共通するのは、「ミール・フレンドリー」であるということかと思います。
カベルネ・ソーヴィニョンも、スプリング・マウンテン地区のフルーツから造られているので、ヘビーになっても
おかしくないのですが、シダーの香り豊かで、心地よい酸がフルフルして、大変食欲がそそられます。
フード&ワインをセットにして楽しみたい者にとっては、これらマボロシ、レベッカKのバランスの良さは
ありがたいものです。

将来、マボロシ・ヴィンヤード敷地内にワイナリー施設を作り、葡萄栽培とワイン造りを同じ場所で、
自分達の好きなようにやりたいという願いを持っておられます。ごくごく、当然な
wish listだと思います。
(現在、ワインそのものは、当サイトでもご紹介した「ミシェル・シュラムバージェ」で造っておられます)
そう遠くない未来に、その願いが叶いますよう、陰ながら応援し続けたいと思います。
 

                   

マボロシ・ヴィンヤード&ワイン・エステート
Maboroshi Vineyard & Wine Estate

住所  2970 Thorn Road, Sebastopol, CA 95472
電話番号  (707) 694-0289
ウエブサイト  
 www.maboroshiwine.com

 私市さんのブログ「幻ワイン醸造日記」も是非、ご覧ください。
 

訪問  
 事前のアポイント要。突然の訪問は、ご遠慮ください。
 rebecca@maboroshiwine.com

 

 テイスティングは、おひとり10ドル。ただし、ワインを購入したら相殺されます。
 

                                                              (2007年12月現在) 

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