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Littorai     リトライ

【醸造施設、完成】

リトライと言えば、主にソノマ・コースト及びアンダーソン・ヴァレーのフルーツから造られるピノ・ノワール、
シャルドネが知られていて、メジャーとは言えないものの、熱狂的ファンがついているワイナリーです。
オーナー兼ワインメーカーであられる
Ted Lemon 氏は、1993年のブランド設立以来、生活拠点は
セバストポール(ソノマ郡)近くに置きながら、ワイン造りに関しては、ナパ郡の
Angwin という街のカスタム・
クラッシュ施設でされていました。
地図の上では、セバストポールとアングウインは直線距離にして約50キロほどですが、(もちろん、50キロというのはそれだけでも
結構な距離ですが)、実際は道中、山を2つ越えていかなければならないわけで、ちょっと気の遠くなるような通勤状況です。

2007年6月から始められた醸造施設建設が、今年の夏前に完成し、2008年ハーヴェストに何とか間に合いました。
2008年ヴィンテージのフルーツは、すべて、この新施設に運び込まれ、ここでクラッシュされたのです。
ブランド設立以来、15年目の達成というわけで、本当に本当に、おめでとうございますと申し上げたい。

【サステイナブルという姿勢】

場所は、最近よく耳にする「セバストポール・ヒル」と呼ばれるエリアの中、以前当サイトでご紹介した「Freeman
ともご近所です。

建物の周りは、一面、ヴィンヤード。
2001年から、当ヴィンヤードをサステイナブル農法、バイオダイナミック農法に転換されてきたレモンご夫妻は、
新・醸造施設にも、その姿勢を反映させておられます。
例えば、丘の高低を利用して2階建てになっている建物は、壁にわら俵がはめこまれています。
現在、工事第一段階が終了し、第二段階に入っていますが、ソーラー・パワーを導入予定。
エネルギーの有効利用・活用を目指します。
また、醸造施設そばには、湿地帯(
wetland)トリートメント・システムを設置、醸造施設内で使われた水はすべて、その一角に集まり、
ヴィンヤードへの灌漑、施設内での必要物資として、再利用されるようになっています。

実際、収穫時にワイナリーで働いたことのある方ならおわかり頂けると思いますが、施設内を清潔に保つため、
床やタンク、タンクの蛇口付近をきれいにしておくために、ものすごい量の水が使われています。
水の勢いを借りて、床に散らばった葡萄やら皮やら種やら果汁やらを、ザ〜ッと流すのは、気持ちよく楽なのでは
ありますが、水不足で家庭内の水使用を制限している者からすると、「ああ、もったいない」と思ってしまうのです。
そういう必要に迫られた「垂れ流し」状態の水を、このように再利用できたら、それに勝るものはありません。

ご自分のヴィンヤードだけでなく、フルーツ購入先のヴィンヤードにも、「Oranically certified materials 」のみを使う
農法を求めてこられてきています。 例えば、
Roman ヴィンヤードとは、この冬、長期リース契約を結ぶに
至りましたが、契約が結ばれた直後、ここをバイオダイナミック農法に転換し始めました。
Charles Heintz, Cerise, Hirsch といった有名ヴィンヤードとも、リトライ用ブロックにおいては、「organically certified materials
のみの使用に転換することを同意。

こうして、2008年ヴィンテージから、以下の状況になっています。
   リトライのワインになるフルーツの出所(=ヴィンヤード)の90%は、
organically certified materialsのみを使った農法。
   リトライのワインになるフルーツの出所(=ヴィンヤード)の54%は、バイオダイナミック農法。
   リトライ・ワインの39%は、エステート・プロダクション。

【ワインのスタイル】

丘を利用して2階建てになっている醸造施設は、従って、グラヴィティ・フロー(重力移動)の形式を取っています。
ステンレス・スティール・タンクに混じって、昔ながらの木製タンクもあります。
温度調整が素早く適確に行なえるステンレス・スティール・タンクと違い、木製タンクは、温度変化がかなり
ゆっくり行なわれます。
発酵を終え、プレスを終えたあとのタンク内清掃も、木製タンクの方がずっと手間がかかります。

「品種別、或いは畑別に、ステンレス・スティール・タンクと木製タンクを使い分けているのですか?」とのクライアントからの質問に、
テッド・レモン氏は、「その時に空いているタンクを使っているのが現状で、そういう明確な分け方はしていません。」とおっしゃり、
そのあと、こう言われました。
「ワインのスタイルというのは、ワイナリーでの処理のされ方、つまりワイン・メイキングから出てくるのではなく、
あくまで、ヴィンヤードから出てくるものだと思っています。」

つまり、各ヴィンヤードの特性というものは、フルーツそのものに充分に表現・反映されていて然るべきであり、
それらがステンレス・スティール・タンクで発酵されようが、木製タンクで発酵されようが、そういったことからはさほど影響を
受けないものなのだ、ということです。

【ビジター受入れ】

ワイナリー完成と同時に、(まだ工事は続いていますが)、ビジターの受入れも始めました。
敷地内のウエットランド・システムの説明、醸造施設内の説明、そしてテイスティング。

訪れた日のテイスティング・ラインアップは以下でした。全て、2006年ヴィンテージです。

ピノ・ノワール Savoy Vineyard, Anderson Valley
ピノ・ノワール 
Cerise Vineyard, Anderson Valley
ピノ・ノワール 
Hirsch Vineyard, Anderson Valley
ピノ・ノワール 
The Haven, Sonoma Coast

シャルドネ   Charles Heinz Vineyard, Sonoma Coast
シャルドネ   
Thieriot Vineyard, Sonoma Coast

レート・ハーヴェスト・シャルドネ 

2006年ヴィンテージの単一畑ピノ・ノワールについて、テッドさんご夫妻は、「Fine and Feminine」と
Bold and Brawny」の2タイプに分かれていると、ニュースレターに書いておられます。
フェミニンなタイプの方がわかりやすく飲みやすいのは確かなのでしょうが、私個人的には、リトライのピノ・ノワールは
earthyでウッディで、最初はとっつきにくいけど、じっくりつきあっていきたいと思わせるワイン、というイメージがあり、
ですから、「
Bold and Brawny」でも、ぜ〜んぜん構いません。

今までのイメージですと、サヴォイ・ヴィンヤードのものが、シリアスなピノ・ノワールの典型だったのですが、
2006年ヴィンテージのサヴォイは、予想をくつがえして、若々しくフレッシュ。
セリース・ヴィンヤードの方が、森林のイメージ、深いタンニン、甘さ控えめどころか甘さまったくないダーク・チョコレート。
そして、常にマッチョなイメージがあるハーシュのピノ・ノワールが、酸がキリっとして大変飲みやすくなっていて驚きました。

どこのワイナリーでも大抵、テイスティングは白ワインから始まって赤に移行しますが、リトライでは、ブルゴーニュ・スタイルを
採用しているとのことで、一連のピノ・ノワールのあとに、シャルドネでした。

Charles Heintzのシャルドネは、とてもわかりやすいシャルドネで、ウッディさとバラの香りが芳しく、ナイス。
でも、それ以上に、
Theiriot のシャルドネが素晴らしかった。
グラスに注がれた瞬間から立ち上がる甘いフルーツの香り、フルボディ&マッチョながら、きれいな酸の主張が
途絶えることなく、ずっと飲み続けたいと思わされました。う〜〜む、素晴らしい。

そしてそして、今まで口にしたことのなかった、リトライのデザート・ワイン。
レート・ハーベスト・シャルドネは、下手すると、ざらざら砂糖の結晶を感じるようなものがある中、そのスムースな
のったり度、甘さ加減、酸のバランスがパーフェクトな、素晴らしいものでした。
これも、頂いた途端、「おいし〜〜い!」と叫んだきり、言葉をなくしてしまいました。
あまりに少量生産なので、販売はしていないとのことでしたが、いやあ、素敵なデザート・ワインでした。

ワイナリー施設、ビジター受入れ施設がすべて完成するのには、あと半年〜1年はかかると思いますが、
世間の評価、ワイン批評家・雑誌からのポイントなど、まったく気にせず、信じる我が道を行くテッド・レモンさんご夫妻、
アシスタント・ワインメーカーさんの益々のご健勝、ご発展をお祈りする次第です。

                  

リトライ
Littorai

住所  Sebastopol, CA
電話番号  707-823-9586
ウエブサイト  www.littorai.com
訪問  事前のアポイントメント要。
 テイスティングは無料。

                                                                              (2008年10月現在)

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