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2008年12月24日

12月の第三週に入った頃から、「雨期」らしく降ったり止んだり。気温もぐ〜んと下がって、標高500M位以上の山では積雪も。
カリフォルニアだけでなく、北のオレゴン州、ワシントン州、中西部のイリノイ州、東海岸全域にかけても、冬のストームが来ていて、
今週に入ってから、航空ダイヤが大乱れ。
クリスマスに実家で過ごそうとしている人たちの大半が、空港で足止めを余儀なくされています。

今週の、そして今年最後の「あれこれ」は、バークレー「Wood Tavern」で行なわれたワインメーカーズ・ディナーについて書きます。

よく買い物するチーズ・ショップ「Farmstead Cheese」は、なかなか渋いワインを揃えており、毎週末には
ブローカーやディストリピューター主催のテイスティングも行なわれています。週に一度のペースで、「こんなチーズが
入荷しました」「こんなワインが入りました」というお知らせがメールで送信されてくるので、それを見て、欲しいチーズが
入ってきた時は店を訪れるようにしています。

そのチーズ・ショップ主催で、ワインメーカーズ・ディナーが2~3ヶ月に1回、行なわれています。
今回は、一度ランチに行って結構気に入ってしまった「Wood Tavern」が会場であること、そして招待ワインメーカーが
Byron Kosuge
氏だったこと、この2点で即刻、参加を申し込みました。

バイロン・コスゲ氏は、ご自分のブランド「B.Kosuge」の他に、「Miura」のコンサルティング・ワインメーカーでもあり、
サンタルチア・ハイランズの新しいワイナリー「McIntyre Vineyards」のワインメーカーもされています。
更に、チリ・カサブランカ地区の
Kingston Family と組んで、ピノ・ノワール&シラー造りプロジェクトを進めておられます。

ほぼ私と同い年あたりであろうバイロンさんは、物静かな、大変控えめな方です。
人の話し声がエコーして、店内は相当うるさい中、それでもバイロンさんは声を張上げることもせず、でも一生懸命
ワインの説明をされていました。ディナーが始まる前に、彼と直接お話する機会があったので、メンドシーノ方面の
ヴィンヤードの話や、チリのプロジェクトの話をお聞きしたのですが、始終「トーン」が変わらず、丁寧に物事をお話される。
ディナーでお隣になったブローカーの人の話では、「彼は滅多に自分から演説をぶったり、説明をしたり、講演したり
することはないのだけれど、一旦そういう場が与えられて、彼が話し出すと、みんな真剣に聞くのです。
思わず耳を傾けたくなる話し方であり、彼のキャラクターに、人をそうさせる何かがあるのだろうね」とのこと。納得。

さあ、ディナーを始めましょう。

食前酒、ディナー・セッティングを待つ間: Kingston Family Vineyards, "Cariblanco" ソーヴィニョン・ブラン
                                                        
Casablanca Valley, Chile, 2006
                                                        
柑橘系の風味が心地よく、草っぽさがまったくなくて飲みやすい。18ドルはお得。

ファースト・コース: Kona Kampachi Tartare 
                           カンパチとかハマチとか、日本語名がそのまま使われて一般化してしまっている食材は、増える一方
            です。というのも、英語ではこれらが全て「イエローテイル」になってしまいがちで、素材にこだわる
            シェフ、店ではソレに飽き足らないということです。
            たっぷりのアボカドがカンパチの上に乗っかり、その間に「
Mirepoix」(ミアポワ)=人参、セロリ、
            玉ねぎ、ハーブのみじん切りを混ぜたもの。
            そして、下に敷かれたソースが、セロリのクーリー。これが素晴らしい。

ワイン:        Luli, シャルドネSanta Lucia Highlands, 2007
                          
このワインだけ、バイロン・コスゲ氏とはまったく関係ないです。
            ピゾーニ一家の次男でワインメーカー、
Jeff Pisoni さんと、ブローカーのオーナーでマスター・ソムリエでもある
            
Sara Floydさんお二人のベンチャーで立ち上げたブランドです。
            SLHのフルーツを主体に、ほんの少しメンドシーノ地区のフルーツも加え、「MLなし」で仕上げたシャルドネ。
            SLHらしいボディのあるフルーツ風味が、カンパチの脂っぽさを吸収し、
            MLを避けることによって残った充分な酸が、セロリのクーリーを引き立たせていて、
            素敵なマッチングとなりました。
            あとがあるから控えなければと思いつつ、くいくい、このシャルドネを飲んでおりました。

セカンド・コース:  Creamy Mushroom Soup
                           スープとサラダのヴァリエーションが豊かなレストランが好きです。
            ウッド・タヴァーンの、このマッシュルーム・スープ。久しぶりに一口後、「あああああ、美味しい〜」と
            声に出しました。
            白トリュフ・オイルが、さっと効果的に使われていて、芳醇なキノコの香り・風味が、頭と胸の中
            いっぱいに染み渡ります。とても深遠。
            
ワイン:       
Alazan, ピノ・ノワールKingston Family Vineyards, Casablanca Valley, Chile, 2007
                          
バイロンさんのチリ・プロジェクト。
            チリのカサブランカ・ヴァレー地区も、カリフォルニアのソノマ・コースト地区も、ちょっと前までは誰も
            ピノ・ノワールに適した場所だとは思ってもみなかった地域です。そして、両地区に共通している
            のは、
「cooler coastal area」があるということ。
            バイロンさん曰く、カリフォルニアのピノ・ノワールより、チリのピノ・ノワールは、飲み頃になるのに時間がかかるとのこと。
            確かに、酸はしっかりしているけれど、香りも薄く、味わいも個性に乏しく、これはもう少し花開くのを待ってあげた方が
            良いのかなと感じました。
            マッシュルーム・スープがあまりに素晴らしかったので、いづれにせよワインは脇役で充分でした。

メイン・コース:    Roasted Rack of Lamb
            同行した主人が、感に堪えないで、「こんな美味しいラム食べたの初めてだなあ」と言いました。
            ここまで「美味しい」という表現を主人がしたのを聞いたのも、私にとっては初めてです。
            それほど、良くできたラック・オブ・ラムであったということです。
            スイート・ポテトのピュレーも程よく甘く、白菜とザクロのスローも意表をついていてナイス。
            美しくミディアム・レアに焼かれたラムは、骨の周りのお肉も残さず頂きました。本当に美味しかった。

ワイン:        B.Kosuge ピノ・ノワールManchester Ridge Vindyeard, Mendocino, 2006
                         
 B.Kosuge ピノ・ノワールHirsch Vineyard, Sonoma Coast, 2006
                
         
何度となく当サイトで「注目しているヴィンヤード」「好きなヴィンヤード」と申し上げている
            「マンチェスター・リッジ」。
            そして、ソノマ・コーストのピノ・ノワールと言えば「ここ」と、既に名声の高い「ハーシュ」。
            この2つの畑のピノ・ノワールを飲み比べることができるなんて、幸せです。
            しかも、合わせられたのが上記の「完璧」ラムなのですから、これを至福の時と呼ばずして何と言うでしょう。
            
            ハーシュは、タンニンもしっかり、フルボディで、あと数年寝かせておいても大丈夫なくらいマッチョでした。
            マンチェスター・リッジは、同じくタンニンしっかりめではあるものの、どこか「柔らかさ」「優しさ」「柔和さ」があり、
            もたれかかっていきたくなるようなワインでした。

チーズ・コース:    Buche Cremier, Bravo Silver Mountain, Cave Aged Gruyere,
          Rogue River Blue

ワイン:         B. Kosuge  シラーDay Stack Vineyard, Beneett Valley 2006

                           個人的に、最近、チーズには赤ワイン以外を合わせることが多いので、この組み合わせを見た時に
            「どうなのかな」と不安に思いました。
            ひとつひとつ、ゆっくり味わいながらワインと合わせましたが、やっぱり「今」の私には、シラーが
            勝ちすぎてしまって、少々しんどかったです。
            ワインそのものは、スパイス風味の効いた骨のあるシラーで好きだっただけに、そして、チーズ・ショップ主催で
            あるだけあって、チーズはどれも大変美味しかっただけに、この2つを合わせて欲しくなかったというのが本音。

ディナーの最後の方に、シェフが出てきてテーブルを挨拶して回っていましたが、とても若い(若く見えるだけ?)ヒップホップ系の男性で、
あんな若くして、あんなラムを作るのかあ・・と大いに感心したのでした。

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