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2007年09月09日

8月下旬あたりから、かなりの好天が続いてきており、ナパ・ヴァレーにおいては連日30度を越す暑さ。
ヴァレーの中で一番暑いとされているカリストガにおいては、33〜4℃という日もありました。
今週は、最高気温がそこまで上がらないものの、ナパで25℃〜30℃の日が続くと予報が出ています。

「あれこれ」の冒頭でお知らせしてありますように、8月中旬から10月いっぱいにかけて、更新を「不定期」にさせて
いただいております。この期間、実は、日本のとある県から葡萄栽培の研修生2名が来られており、その方々のための通訳という
お仕事を請け負い、ほぼ毎日ワインカントリーに通っている状態です。

県職員さんの研修ですので、ここで詳しくそれをレポートするのは憚れます。
が、一人のワイン愛好家としての目で見て感じたことを、ここで少しずつ書き留めておこうと思います。

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収穫時期が近づいてくると、ヴィンヤードにおける「サンプリング」作業の回数が頻繁になってきます。
各ヴィンヤードのブロックごとに、100粒ほどサンプル・ベリーを摘み取っていき、ラボに持ち帰り、その糖度(Brix)、
pH、TA
を測定。サンプルとなる100粒も、房の上、中程、下、表側、裏側・・と、バラエティを持たせてピックし、
より平均化したデータを取るようにします。
早い段階でのサンプリングでは、粒だけでなく、平均的なサイズの房を丸ごと採取して重さを量り、ブロック全体の
収穫量を推定します。

このサンプリング作業は、収穫時期を決める上で、とても大切なルーティーン仕事です。
自分達が造るワインのスタイルに最も適した糖度・TA(=Titratable Acid = Total Acidity)数値が、いつ頃、理想値になるか、
つまり、何日頃に収穫を行うかの予測をたてるわけです。

自社畑を持ち、自分達専用のワイン造り施設を持っているワイナリーは、それこそ「今だ!」と思う時を好きに決められる
のですが、フルーツを複数ヴィンヤードから購入し、ワイン造り施設を間借りしている造り手の場合、間借り先の
スペース・必要器具の空き状況、ヴィンヤード側の人手の空き状況、フルーツ運搬トラックの空き状況など、
すべての環境を整えなければならないため、収穫時期の決定には、非常に神経質にならざるを得ません。

・・と、造り手側に立つと、大小様々な困難・問題が出てくるわけですが、経営者でも何でもない、ただの飲兵衛で
あるところの私としては、通訳をしながら、あちこちのフルーツをツマミ食いして、「ベロ(舌)メーター」を発動させて
おりました。
8月21日から9月7日までの3週間に、ナパ・ヴァレー内プリチャード・ヒル、オークヴィル、カリストガ、
アトラス・ピーク、ナパ、ソノマ郡のナイツ・ヴァレー、シエラ・フットヒル地区、パソ・ロブレス地区、モンテレー郡、
メンドシーノ郡と、あちこちに車を飛ばし(場所によっては泊りがけで)、サンプリング作業に明け暮れましたが、
それぞれのヴィンヤードで、それぞれのフルーツの味わいがあり、地区によって成長度の違いが明確で、
ツマミ食いの身には、大変興味深い作業でした。

高値で売買されるフルーツを生産するヴィンヤードほど、おそらく当然なのでしょうが、手入れも列ごとの表示も
しっかりしていて、ルートストック(台木)と、クローンの名前(或いは番号)が列の先頭につけられています。
クローンも、そのフルーツのクオリティを左右する重要な要素ですが、ちょっと歩くと土壌の質が変わるという
カリフォルニアのワインカントリーでは、ルートストックの選択もキーポイントになってきます。
どのルートストックが、よりVigorous(勢いのある、よく育つ)か、そうでないか、それが土壌の違いとどう反映しあうのか、
或いは太陽光線の当たり具合とルートストックの違いが、どう反映しあうのか・・・。

何も予備知識を持たず、標識もあえて見ないでツマミ食いを続けて、第一印象を書き留めたあと、あらためて台木、
クローン名・番号を目にすると、なるほどな〜と思わされるものがあります。
これにプラス、ヴァイン(ぶどうの木)そのものの樹齢が、フルーツの味わいに影響してきます。

そして更に、毎年毎年、気候が同じであることはありえませんので、その年の冬の降雨量、発芽後の気温の移り変わり、
その他もろももの気候条件で、フルーツはまたまったく別の表情を見せます。
昨年、XX畑・ブロックXXのカベルネがベストだったけど、その同じフルーツが今年もベストであることは誰にも
保証できないわけです。

そして更に、ありとあらゆるウイルス、害虫の攻撃。フルーツの値段に関係なく、100%健全、健康なヴィンヤードで
あるというのは、実に実に難しく大変なことだと実感しました。
写真入り本を見ながら、これがこの虫、この葉がこのウイルスにやられている例・・・と見ていくと、ヴィンヤード・
マネージメントも、やれやれ本当に大変な仕事だと思うのであります。

こうして、たくさんのヴィンヤードを訪れて、ツマミ食いをすればするほど、ぶどう造り、ワイン造りって本当に際限の
ないものなのだなあという思いが強くなります。
こういった状況の中、毎年、一定のクオリティを保たせて、何本ものワインを市場に出すワイナリーは、やはり凄い!です。

自分でワインを造ってみて、造り手への尊敬の念、ワインそのものへの愛着度が高くなってはいましたが、
なかなか表には出てこないヴィンヤードでの作業、それに携わる方々への畏敬の念を、今年は更に強く抱くようになりました。

9月10日 月曜日、研修先ワイナリーでの最初のハーヴェストが行われます。

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